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蹂躪の舞台で。

檜山光太郎には重たい心配事があった。
彼の通う高校は自由な校風が売りだった。まだ人々の教育が善意を土台にしていた頃はそれでもうまく機能を果たしていた。
だがいつの頃からか、人々の心は自分さえ良ければ、という至極利己的な主張に発信の視点を変えた。勉強したい生徒はできるし、運動がしたい生徒はそれに力を注げる。そして遊びたい生徒はそれができる。
今考えてみれば荒れるべくして荒れる校風であった。
この時勢にあって学生たちの風紀は乱れて、自由という言葉への曲解を誰も是正できなくなっていた。もちろん、中には自由という言葉に責任を持ってこの高校に入学してくるものもいる。光太郎もそのうちの一人だ。だが勉強などできる環境ではない。学校としては、もうずいぶん昔に破綻している。

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