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僕たちのトラウマ。

 最近、なんかおかしい。
まあ別にいつも通りのクラスであり、東三中の二年二組なのだ。
先生も相変わらず機嫌がいいし、春から少したった陽気は元気が良すぎるほどだ。窓から望む景色も素晴らしい、といっても体育館の屋根が見えるばかりなのだが。

何がおかしいと思うかというと、みんなが暗いのだ。

いつも馬鹿みたいに騒いでいる健太も、
いつもゲームのことばかり話す祐希も。
男ばかりやたら暗い。
なんだか、変だと思う。

「なあ健太。お前なんか変だよな?」

そう聞くと、健太は眼を逸らす。
「別に普通だよ。」
と、震えたような声で言う。
普通じゃない。
僕は自分の席に座ったまま、壁にもたれてみんなを観察する。
女子は普通。いつも通りうるさい。
男子は、やっぱり半分くらい。
特に、いっつも僕と楽しくやってる連中ばかり暗くなっている気がする。
はて、これがいわゆる大人になる、ってやつか?
いやいや、まだ早いだろ。
こっからが楽しいのに、なんでそんなにおとなしくなっちゃうんだ。

そしてこれは、先生にはわからない程度の感覚らしい。
僕くらいしか気づいてないのかもしれない。
あまり関わりのない女子たちも、
とあるエリアの男子だけがちょっと暗くなっていることには気づいていない。ふむ。

やっぱりなんかおかしい。

まあ、しかし言いたくないことを根掘り葉掘り聞いても仕方がない。
あいつらが僕を友達だと認めているなら
そのうち向こうから言ってくれるだろう。

と、そんなふうに自分を落ち着けた昼休み。
特にすることもなく、一年の時に同じクラスだったやつと話をしようと
一階下に向かうため階段を降りていると
健太の声が聞こえてきた。

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