見出し画像

恥ずかしい?恥ずかしくない?

この季節になると、何故か目が痒くて鼻が辛い日が各日くらいで発生し、それが原因で無駄に早朝に目を覚ますこともある。

普段はシワとシミを恐れて擦らないようにしているが、寝ぼけている時はついついやってしまい、慌てて顔を洗いに洗面台に立った。
その時に鏡の中の自分と目が合う。

あ、毛がついてる。

小鼻の脇に、真っ黒で短くて少し太めの1センチくらいの毛がついていた。

人差し指の先で徐にちょんっととる。
少し放物線を描いていて、しっかりと芯のある真っ黒な髪で、先にゆくにつれスラっと細い。

なんだ、まつ毛か。
ゴミ箱に落とし、はた、と気づく。

いや、本当にまつ毛か?

記憶を巻き戻していく。
私は小鼻の脇から左手の人差し指でとったよな?
今朝は目と鼻に痒みを感じ、それが原因で目が覚めた。きっと無意識に私は目と鼻を擦っている。
その上で小鼻についたこの毛、安易にまつ毛と自分に都合よく解釈していいのだろうか。

鼻毛じゃない?

頭に流れたのはブリーフ&トランクスの青のりだった。
鼻毛が出てる歌詞もあった気がする。

すごいラブソング

鼻毛、それは鼻から生えた毛。鼻は鼻でも、鼻の穴から生えた毛。出てしまっていると耐え難い羞恥心と、自尊心を揺さぶり、幼少期にうっかり出ていようものなら下手をすれば未来永劫語り継がれてしまう毛。

逆にまつ毛なら、一気にモードは乙女に加速する。
「まつ毛、ついてるよ」と好意を寄せている殿方に頬に触れられるときめきメモリアルに繋がるロマンチックモード全開の良き毛。

女子のみならず、みんな長いまつ毛が大好物だ。
まつ毛にパーマをあてたり、エクステで長さを出して誇張する。男子だってわざと伏せ目になって色気を倍増させてポートレートに挑むだろう。

だが、長い鼻毛を誰が愛でようか?
鼻毛にパーマをあてたり、エクステで長さを出して誇張するなど愚の骨頂。鼻の下を伸ばして鼻毛を見せて写真を撮るなど黒歴史。

鼻毛だ、朝イチ顔に鼻毛つけてくる大人だ。
だが、鼻毛より脇毛の方が恥ずかしいから、セーフか?

いや、それは日本特有の文化だ、海外では脇毛は残して当たり前だし、セクシーとまでされている。
だが、こと鼻毛に関してはブラジリアンワックス等で処理するのが世界共通の文化。

今朝の私、世界一恥ずかしい寝起き顔ではないか?

いや、だがまだ一握の希望を手放す時ではない。
顔を擦ってしまった時に抜けたまつ毛が小鼻についたまでのことかもしれない。

私は「鼻毛だったらどうしよう」の不安に駆られて視野を狭くし過ぎている。
しっかり顔を洗い朝食の準備とコーヒーを淹れろ。
固執せずに切り替えるんだ、話はそこからだ

冷蔵庫には昨夜から、フランスパンに卵液を染み込ませたフレンチトーストを仕込んでいる。

このフランスパンはめっちゃ硬い。

買ってすぐの焼きたての時点でガリガリに固すぎた。中の白い部分ももっちりしすぎて粘りも強く、嘘みたいに噛みきれない。
へぇ、おもしれぇじゃん?
自慢の犬歯を剥き出し、肉食獣の如く噛み付く。
グッと腹に力を入れて引っ張ると、白い部分がすんごい伸び、バラバラと音を立てて鱗の如くた剥がれた外の皮が、突然に歯茎に刺さった。
驚いた私は「あんたなんか!!」と叫んでフランスパンに背を向けた。
そして放置していたのだ。

酷い仕打ちをしたと反省している。
でも、本気でフランスパンの白い部分に前歯持っていかれたと思って、動悸がしばらく止まらなかったんだもん。
でも、店主が書いてた、「町内1かたいパン」って書いてた。

そうか。

挑んで負けた、自分の羞恥心に耐えれなかったんだ、私は。
だが、何を持っての羞恥心だ?
全てたった1人の家の中で起きている事じゃないか、誰にバレる訳でもない。
冷静に可及的速やかに対処して、何でもない顔をすればいいだけのこと。

落ち着いてきたな、私。

そうやで、そうなんやで。
前歯が無くなることと比べたら、寝起きに鼻毛が顔についてるなんて「恥ずかしい」と騒ぎ立てるほどのことでもないではない。
黙って顔洗えばいいだけやん。

すっきりした気持ちで多めのバターをフライパンに落とし、卵液でヒタヒタにしたフランスパンを菜箸でつかむとグニっと箸に柔らかく食い込む。
卵液を夜通し吸いこみ、しとしとと重くなったパンを持ち上げてフライパンで焼いていく。

はちみつをたっぷりかけて、少し焦げ目がついたフレンチトーストを一口。

てか、フランスパンの粘りすごいな、歯の間でギチギチゆうてるんやけど?
え?はちみつに何かのってる?

それは、真っ黒で短くて少し太めの1センチくらいの毛で・・・まつ毛なの?鼻毛なの?

え?無限ループ?

と言う、ものすごく何でもない朝の一コマの話でした。



この記事が参加している募集

私のプレイリスト

今日の振り返り

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?