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ひとり出版社をつくる⑲「ネット書店の流通_番外編」

2020年11月20日の本日、アマゾンをはじめとしたネット書店において、当社初の新刊書籍『いつか幸せではなく、今幸せでええやん!』(尾﨑里美著)のシステム上の発売日を迎えました。

ところが結論として、発売日早々にアマゾンの在庫が不足し、この記事を書いている19時45分現在、税込み価格1650円の商品価格が2000円を上回ってしまっています。

尾﨑さんの新刊を楽しみにされている皆様、大変申し訳ございません。

当社の書籍は、ご注文いただいた書店様に配本するいわゆる「注文出荷制」で流通させています。書店様の店頭に並べていただくためには、書店様から注文というアクションを起こしてもらわなければなりません。だからご注文いただいた書店様はとっても大切な存在なんです。

同時に、注文出荷制ゆえに、展開いただける書店様に限りがあるのも正直なところです(当社が商品情報をもっと魅力的にお伝えできればよいのですが、注文書一枚のFAX送信で商品の魅力を伝えきるのは難しいというのを今回痛感もしました)。

そこで大切になってくるのがネット書店様での販売です。だから今回、新刊の発売を迎えるにあたり、数か月前から在庫を切らさないためにはどうすればよいのか、すくない知識の中で考え、各方面にもその旨をアナウンスし、またアドバイスも求めてきたつもりです。

ところが今回、発売日当日に在庫不足をまねいてしまいました。その理由をきょうもいろいろ電話して調べた結果、ようやくほぼすべて理解することができました。自身の備忘録も含めてnoteに記しておきます。

(以下は、どこが良い悪いという話ではないです。アマゾン様を例にあげていますが、アマゾンは自社のルールで発注処理をおこなっているだけです。版元ドットコムのシステムはうちのようなひとり出版社にとってはありがたすぎるシステムです)

①当社の取次会社はJRC
当社は取次会社JRC様と契約しました。これがひとつ目の前提条件です。JRC様とアマゾンは直接取引の契約がなされています。

②当社は版元ドットコムの会員になりました
次に、当社は版元ドットコム様の会員になっています。これがふたつ目の前提条件です。

③版元ドットコムから新刊の書誌情報データが配信される
版元ドットコム様に入会して何がすごいと思ったかというと、いろいろあるのですが、そのひとつは版元ドットコムの管理サイトに新刊の書誌情報を登録すれば、出版情報登録センター(JPRO)にその書誌情報が自動登録されることです。

出版情報登録センター(JPRO)に書誌情報が登録されると、その書誌情報が取次・書店・ネット書店・図書館に自動転送されます。これがめちゃくちゃありがたいです。版元ドットコムの管理サイトに新刊情報を登録しさえすれば、書籍流通で必要となる各方面に情報が自動的に流れていってくれるのですから。

情報の流れはつぎのとおり。

★情報の往路:版元ドットコム → JPRO → 取次・書店・ネット書店・図書館

④版元ドットコム→JPRO→アマゾン
さて、上記のように版元ドットコムに新刊情報を登録すれば、おおむね翌日にはアマゾン様での予約受付がスタートします。当社の新刊もこの流れでアマゾンに書誌情報が配信され、アマゾンでの予約受付が開始になりました。ここまでは通常の流れです。

⑤アマゾン→大手取次→取次→JRC
ところが結果として、上記の流通経路で当社は発売日当日に在庫不足を招きました。なぜか――。

版元ドットコムを起点とした情報の流れの場合、アマゾンからの発注情報は大手取次会社に入ることになります。その大手取次会社からさらに取次会社を経由してJRCに情報が流れます。

★情報の復路:アマゾン → 大手取次 →取次 → JRC

版元ドットコムを起点とした情報の往路はとてもありがたかったのですが、アマゾンを折り返して情報の復路になると、情報の中継地が増えているのが分かります。(これをようやくきょう、教えてもらえました)

そして当社の新刊がアマゾン発売日当日に在庫不足に陥ったのも、この情報の復路に課題があったからだとわかりました。

結論をいうと、情報の復路の過程のどこかでアマゾンの発注情報が目詰まりしていたようなのです。アマゾンは予約数に応じて発注してくれていたようなのですが、その発注情報が途中で何らかの理由で止まっていたということです(この疑問はいまだ謎のままです)

⑥解決策は、JRC管理のアマゾンベンダーセントラルに書誌情報を登録すること
上記の情報の復路のままの場合、今後もアマゾンからの発注情報が途中で目詰まりしかねません。これは大変なことになった……と思ったのですが、(その後のやり取りのプロセスは省きますが)解決策が分かりました。

解決策=JRC管理のアマゾンベンダーセントラルに書誌情報を登録しなおすことです。

アマゾンベンダーセントラルとはなんぞや? というのはややこしいので割愛します。さらに諸々の説明も省きますが、ようするに、JRCさん管理のアマゾンベンダーセントラルの管理画面に契約版元としてアクセスし、書誌情報を(版元ドットコムに登録した翌日頃、具体的にはアマゾンに登録された直後くらいのタイミングで)登録することで、

★情報の復路:アマゾン → JRC

という、JRCとアマゾンの直接取引の情報の流れに上書きできるということです。

これは、当社のような版元だけの知識ではまずたどり着けない解決策です。

だって、すでに版元ドットコム起点でアマゾンに書誌情報が登録されて予約受付がはじまっているのに、もう一度、別の方法でアマゾンに書誌情報を登録しなければならない必要性なんて理解できないばかりか、むしろ、そんなことをすれば二重登録になって大変な状態になると思いますから(アマゾン内で同じ商品が二つ存在してしまうのではというこわさ)。

でも、結果として、アマゾンベンダーセントラルに書誌情報を登録しなおすことでJRCとアマゾンの直接取引ルートが開通し、以降、在庫補充の情報の流れがスムーズになる(というのです)。

というのです……としているのは、まだその結果が出るのはこれからだからです。

この原稿を書いているのは2020年11月20日。明日から3連休です。

3連休のあいだ、たくさんのご注文をこれからもいただけるはずであるにもかかわらず、在庫切れ状態が続かざるを得ないという、版元としてはこれ以上ない苦しい状態が続きます。

なにより申し訳ないのは、尾﨑里美さんの10年ぶりの新刊書籍を心待ちにしてくださっている読者の方々です。

できる対策を早急に、粘り強くおこなってまいりますので、在庫が補充されるまで、どうぞお待ちいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

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