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【アドベントっぽいカレンダー】企業経営と戦術的ピリオダイゼーションの親和性【3日目】

今日はフットボリスタラボ・アドベントカレンダーの3日目です。

2月22日からJ開幕の2月26日まで5日間に渡ってフットボリスタラボのメンバーが順番に記事を書いていきます。テーマは「他ジャンルとサッカーとの関わり」「2021の注目」「Jリーグ開幕」のいずれか。

一般公開、ラボ内限定公開(あるのか?)のどっちか、という感じなのでもしラボ内限定公開記事が発表されたとしたら、是非フットボリスタラボへ入会頂いて全貌を目撃して頂ければ!(ダイマ)

僕の番では「他ジャンルとサッカーとの関わり」をテーマとして、以前から個人的な興味領域としている「企業経営×戦術的ピリオダイゼーション」について簡単ではありますが、書いていこうと思います。

(こちらはfootballista誌でラボメンバーを紹介するページでお話させて頂いた時の記事)

事前情報として

まず、前段階として僕の現在の立ち位置を説明させてください。

上の記事でも書かれていますが僕の実家は製造業を営んでおり、規模としては中小企業、日本に何カ所か製造および営業拠点を構えて様々な企業にお取り引きを頂いております。
(何事も無ければ)将来的に会社を背負っていかなければならないと心づもりをしていますが、組織を大きく変革させるための実権を持つほどの影響力はまだなく、今後に向けて色々と勉強させてもらっている状態です。

本稿含めて「企業経営×戦術的ピリオダイゼーション」についてアウトプットしている諸々は自分がこれまで自社や他社に適用しようとした際にどの様な課題があって、どの様なメリットがあって、どの様なステップを踏む事でスムーズに展開出来るものだろうかと悶々としている(ツルンと皴の少ない)脳みそから滲み出てきたものとなります。

そんなわけで、「こんなことを意識しては!?」「ここの考え方はこうした方が」「不勉強なお前にレクチャーしてやる!」みたいなお話やリアクションを頂けると嬉しかったりするので、どうぞよろしくお願いします!!

企業経営と戦術的ピリオダイゼーションの親和性

僕が戦術的ピリオダイゼーションに関連した言葉で最初に触れる事になったのが「ゲームモデル」でした。
詳細についてはfootballista誌や脇真一郎氏の「プレー経験ゼロでもできる実践的ゲームモデルの作り方」や山口遼氏の「『戦術脳』を鍛える最先端トレーニングの教科書」、林舞輝氏の「『サッカー』とは何か」をご覧頂ければと思いますが、この言葉を知った時に真っ先に思い浮かべたのは「企業理念に近いものなんだろうな」という事でした。

その頃の僕は、ちょうど企業理念を体系的に策定し企業経営に活かされている事例として「コマツウェイ」「トヨタウェイ」というものが先進的な取り組みとして紹介を受ける機会があり、自社にも同じような事が出来ないものかと思案していた時期でもありました。一般企業ではなくサッカークラブという組織が「統一された意思決定基準に基づいた動態により組織のパフォーマンスを(持続的に)最大化させる」という考え方を取り入れている事は非常に興味深く、これはそのまま企業経営にも活用できるように思えたのです。

自分が見聞きした範囲では、大企業・中小企業といった規模を問わず企業理念を掲げている企業は多くありますが、それが行動規範、意思決定基準として体系的に整理され、運用されている企業というのはそれほど無いのではないかと思う事が少なくありませんでした。
自社においても例外ではありませんでしたが、これは企業が生き残ってきた過程でそれぞれの部署で暗黙知や習慣として根付いているものはあるものの、それらが明示的に言語化ないし体系化されてこなかった事から社員の育成や意思決定の速度、経営環境の変化に対しての反応に対してブレやズレが生じる可能性が高い状況でもあります。

それでもここまで企業が生き残ってこれたのは、業界や自社を取り巻く環境が密接に関係しあっている事、その関係性がレガシーとして受け継がれていた事が大きな要因としてあった様に思います。

しかし、このままで良いのでしょうか。

ここ数年の日本企業を取り巻く話題によく挙がる「後継者不足」によって事業承継がなされず廃業や事業譲渡を選択する企業が増えています。
中小企業庁や各自治体もその状況を鑑みて税制の変更や事業承継ガイドラインを策定するなどの支援を進める動きを見せていますし、一昨年からは埼玉県事業承継ネットワークが事業承継予定者を対象に講座を開くなど「事業承継および承継後」を意識した取り組みが行われています。

事業承継ガイドラインは自社の経営資源(有形・無形)の見える化に始まり、事業承継を行うための磨き上げ、そして事業承継へ・・・という流れで構成されており、良い形でバトンタッチを果たすためにどうしたら良いのかという部分で非常に参考になります。

行政がここまでの取り組みを見せているという事は現実に危機感を伴って存在する問題でもある、という事です。
これまで存続する事が出来た企業はレガシーの恩恵に与る事が出来ていたでしょうが、不確実性が高まっている現代においてはそのレガシーの恩恵は今後もずっと続くものなのか、そのレガシーを築く事が出来た源泉はどこにあるのか、レガシーの持続可能性は?と考えた時に「言語化・体系化」をすることの重要性が見えてきます。

戦術的ピリオダイゼーションというフレームワークの中においては、ゲームモデル・主原則・準原則・・・の策定に当たりますが、企業の価値を支えてきたものをつまびらかにし、整理していく事によってレガシーの寿命を延ばす、またはレガシー後の姿を地に足を付けた形で懸案できるのではないかと思いますし、戦術的ピリオダイゼーションという概念を参考にすることによって企業経営にいい影響を与える事が出来るのではないでしょうか。

じゃあ、事業承継ガイドラインだけでも良いんじゃ?

前項では企業経営と戦術的ピリオダイゼーションの親和性について触れてみましたが、ひとつの疑問が浮かんできます。

「事業承継ガイドラインがしっかりと存在しているのであれば戦術的ピリオダイゼーションをわざわざ持ち出さなくても良いのでは?」

確かに、これまでの話を見ている限りでは戦術的ピリオダイゼーションと事業承継ガイドラインに大きな違いがあるようには思えませんね。
かたやゲームモデルを起点として意思決定基準を整える、かたや事業の見える化、暗黙知を明示し磨き上げを行う、言葉こそ違えど成果物に大差がある様には見えません。

しかし、事業承継ガイドラインには戦術的ピリオダイゼーションとは違い「運用」に関した部分が入っていません。
事業承継ガイドラインは、あくまでより良い経営環境を作った上で事業承継を果たす事を目的としており、実際の現場での運用や社員教育を含めた人材サイクルなどについては特段触れられてはいないため、承継だけでなく自社の事業の「見える化」を果たした先についても考えようとしたときに、事業承継ガイドラインだけでは片手落ちになってしまうのです。

もっと言えば、事業承継ガイドラインにおける「事業の磨き上げ」のフェーズの段階から戦術的ピリオダイゼーションとの差異が見て取れます。
林舞輝氏の「『サッカー』とは何か」の言葉を借りて言うならば以下の7つの「トレーニングの法則」が参考になります。

【トレーニングの法則】
 ・特化の法則
 ・傾向の法則
 ・複雑系の進行とバリエーションの法則
 ・4局面の法則(※注)
 ・カオス&フラクタルの法則
 ・組織単位分けの法則
 ・戦術的疲労の法則

※企業経営においては4局面ではない区分けが必要
(林舞輝著「『サッカー』とは何か」第1章より)

理想論的ではありますが、これらの「トレーニングの法則」をベースにして事業の磨き上げを行い、磨き上げたものを基礎として「トレーニングの法則」を継続する事によって人材のバランスを維持、その上でピリオダイゼーション的な運用をする事によって安定した事業サイクルを構築していくというストーリーが見えてきませんか?

当然、企業経営においてモルフォサイクルをそのまま当てる事は出来ないのでそれに代わるサイクルを見出しながらの運用となりますが、企業経営に適切な運用バランスを見出す事が出来た時により良い体質と改善への道筋が見えてくるように思えます。

さいごに

今回は駆け足で「企業経営×戦術的ピリオダイゼーション」について書かせて頂きましたが、またアドベントっぽいカレンダー企画をやる事になったら、もう少し詳細に、そして今回はボヤっとさせたピリオダイゼーション的運用についてもお話しできる機会があれば良いなと思います。

そして、この記事を書いている前後で複雑系科学について触れている記事を紹介頂き、とても面白かったので皆様に共有して締めとさせて頂きます。
(とても長いですが)複雑系への理解を助け、それは戦術的ピリオダイゼーションへの理解についても良い影響を与えるものと信じております。


※余談中の余談

今回の記事の当初の構想では「混ぜ方キケン」と題して戦術的ピリオダイゼーションに飛びついて、安直に適用しようとしそうになった自分を戒めるための内容にしようと思っていて、そのBGMがこれでした。


(筋肉少女帯、良いよね…………)

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