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ラスクとアップルパイの話。

「ねえねえ、ラスクってどうやってつくるの!」
トロケのラスクが大好きな、とあるひとが尋ねてきた。

ええと、パンをスライスして、軽く干して、
乾いたら溶かしたバターと砂糖を合わせたのを塗って、オーブンでやくんです。

「やってみるわ!」

次に会ったとき。
堰を切ったように話し出す。
「ねえねえ!ラスク作ってみたのよ!
砂糖の代わりにはちみつでね!
おいしいわ、ありがとう!」

そして「これ、食べてみて!」と、タッパーにいれた手作りのそれを差し出した。

厚切りのフランスパンにはちみつバター、
周りがカリッとして、中心部は気持ちしっとりしてる。
ああ、ほーほー、そうかぁ。
「どう?」

「おいしいです!厚切りのも良いですね!」

ラスクを厚切り、なんて発想はなかったし
乾燥しきらずにすこししっとり、なんていう仕上がりの発想もなかったけど...
これはこういうものとして、ちゃんとおいしかった。

なにより、その人が大好きなラスクを思って作ったこと、作りたい!っていう強い気持ちで作ったってことが何よりの仕上げ材だと思った。

きっとそのひとはうちのラスクを買わないけど、それで良いのだ。
いつでも好きなときに、自分の好きなラスクをたくさんつくることができる。
それっていいよなぁ、ってふんわかした気持ちになった。

わたしも好きな味を自分で作れたらいいなぁって思って焼き菓子やパンを始めたんだよなぁ。
時々買いに行ってたパウンドケーキの類はすっかり買わなくなった、
だって、自分の好きな味は自分で作れるようになってきたし。
まあ、きっと何かでグッとくるモノに出会ったら...またそれを口にして、それを目指して試作を繰りかえす、そういうこともあるんだろう。

そして今朝、また質問がやってきた。
「ねえねえ!アップルパイってどうやってつくるの!」
どうやらりんごがたくさん手に入ったらしい。

「りんごを煮てみたんだけどね、他の人に食べさせてみたら反応がイマイチだったのよね」

アップルパイ🍎🥧

さっくりしてても、しっとりしてても良いんだけど。大事なのは水分をどうするかだ。

もちろん、りんごを煮る段階でしっかり水分を飛ばした蜜煮にすればいいんだけど
その煮上げる状態をその人の家まで行って見ることはできないし。

パイ生地の上に、フランジパーヌをのせて、そこにりんごをのせて焼くのがいいんだけど
家庭でフランジパーヌを作るのは面倒だし。
(カスタードクリームとアーモンドクリームを合わせたよなもの)

うーん、アーモンドクリーム。
でも、家にアーモンドパウダーはないだろうな。
買うとそこそこの値段するし。
そもそもアップルパイを作るにあたって「りんごを煮る」というのが一手間なだけに、それ以上の手間はできるだけ少ない方がいい。

だろうな。

うーん、ケーキのスポンジ、カステラ、ビスケット。
代替物はあるけど、でもやっぱり、それはそれなりの味でしかないよなぁ。

やっぱりアーモンドクリームとりんごのハーモニーは味わってほしいような気もする、
それがすごくおいしい!ってなったら、準備する手間を惜しまなくなるかもしれないし。

いろいろ考えた結果、アーモンドクリームをすこしもっていった。

(ちょうど、私もパイをつくるところだったからタイミングよかった!)

これをパイ生地の上にのせて、そのうえにりんごをのせて
パイ生地で蓋をして、ドリュールを塗って焼くんです。

「ふんふん、ああ、そうなの!やっぱり、卵を塗って焼くのね〜!」

「ありがとう!焼いてみるわ♫」

ほんとは、このときはこうして、とか
フィリングはこうすると崩れにくい、とか
細々した点はまだあるんだけど。

でもなあ。
最初からあれこれこまごま言ったらわかんなくなるよな〜

教えるのってなかなか力加減の調整がいるもんなんだな、と思った。

明日かあさってか、来週か、
うまく行ったとこも、うまくいかなかったとこもあるんだろうけど、どう仕上がるのか。
会うのが楽しみ!


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