だから僕らは今日も車で空を飛ぶ。無料になった車サッカー「ロケットリーグ」の宣伝(のようなもの)

対人オンラインゲームと言えば、今やゲーム業界のメインストリームだ。FPSからカードゲーム、私のイマジナリー両親を殺したバトルロイヤルまで、かのTake-TwoのCEO自らが「シングルプレイヤーのゲームはまだ死んでいない」と、そう声を上げねばならないほどに、ゲームはオンラインで楽しむ時代。

そしてそういう対人ゲームには往々にして、”環境(メタ)”を変えるための、要素の追加や内容の調整を含んだ定期的なアップデートがある。その度にコミュニティが湧き上がり、環境の良し悪し、将来への期待や不安を共に語り合うのは、ゲームにおいて一番楽しい時間の一つと言っても過言ではない。

だが、私が何よりも心を踊らされるのは、まるで思いつかないような新たな戦法が、プレイヤーによって見つけ出された時だ。去年頃までプレイしていたFPS、「レインボーシックスシージ」は、特にその要素が多いゲームだった。

初期に見つかったテクニックですぐに思い出せるのは、”ヒートチャージを貼り付ける音を聞いてバンディットのデバイスで破壊する”とか、”窓の下を二箇所壊して必要な時に即飛び出し”などの初歩的な技の数々。それこそ開発とプレイヤーが延々といたちごっこを続けた数多のスポーンキルロケーションなど、知識が浅い上に薄れている私でも、まだまだたくさんの戦術を思い返すことができる。敵の手玉にまんまと取られては、「そんな戦術があったのか!」と目を丸くして驚いた記憶を、今でもよく覚えている。

だからこそシージは、動画を見ていても楽しい。Macie Jayが、Serenity17が、あるいはプロプレイヤー達が次々と見つけ出す戦術は、どれも「自分もやってみよう」「自分でも見つけてみよう」というプレイ意欲をかきたててくれた。シージが極めてハードコアなゲーム性を持ちながら、ここまで大きなプレイヤー層を取り込んだのは、決して偶然などではなく、ゲームがプレイヤーに与えた懐の深さがこそあっての、むしろ必然ですらあったと思う。

そしてその”懐の深いゲーム”の最たるもの、その一つとして、私は「ロケットリーグ」を讃えたい。

このゲームにいわゆる”性能差”はほとんどない。車の差異は多少の当たり判定(ヒットボックス)と、その大きさに伴う操作性(ステアリング)に限られ、その優劣は完全にプレイヤー自身の感覚に託される。

加えて、このゲームにおけるマップは基本的に一つだけ。加速や飛行のために使う「ブースト」を補給するパッドと、壁、天井、そして二つのゴール。そのシンメトリーなグラウンドと、極めてフラットなバランスの中で、ゲームに存在するありとあらゆる仕様を駆使することで、プレイヤー達は発売してから何年もの間、いくつもの新たなテクニックを生み出し、このゲームを進化させ続けたのだ。

無論、そんな”テクニック”の多くは、生半可な鍛錬でできるものではない。そもそもこのゲーム、始めの頃はボールに当たっていくことそのものにさえ苦戦する。私とて「そこそこ上手くなったなあ」などと自惚れている今でも、コーナーの反射に泣かされ、初歩的なエアリアルをミスり、華麗にボールをフリップで避けては「助かった!(What a save! = なんてセーブだ!)」と嘲笑される日々である。やかましいわ 黙っとけや(エミネム)

そして新たなテクニックを習得する頃にはプレイヤーとしてのレベルも上がり、無論戦う相手のレベルも上がっていく。技ばかり覚えてもミスは一向に減らなかったり、同じランク帯のプレイヤーにすら差を感じたりして、心が折れる。すごく折れる。たぶんもう少ししたらまた折れて、この文章を消していると思う。

でも時に、ほんの稀に、実力では到底届かない上級者やプロプレイヤー達、その彼らが繰り出す妙技に、届くことがある。「どうせ試合じゃできやしない」なんてふてくされながら時間を費やしたカスタムトレーニングが、実を結ぶ時がある。

ま~~~~~~~~~~~~気持ちいいんすわコレが。

弾けるゴールエフェクト、飛び交うチャット、踊る心、すっ飛んでいく車たち。あれを興奮と呼ばずしてなんと呼ぼうか。誇張抜きで一週間は寝つきがよくなる。しかもそれを「リプレイ」機能で保存して、相手も含めた他プレイヤー側の視点で見ることもできるのだからもうたまらない。

それにシュートが難しければ難しいほど、相手も阻むのは難しくなる。何もただの魅せプレイなどではなく、ハイなリスクにはハイなリターンが返ってくるのだ。比率8:2くらいだけど。

だから僕らは、今日も車で空を飛ぶ。あるいは高いランクを目指すため、あるいは変態シュートのため、あるいは車のカスタムを見せびらかすために。

発売から5年の歳月が経った今でも、プレイヤー人口は減ることなく、むしろ少しずつながら増え続けている。何せこのゲーム非常にお値打ち価格どころか無料になった。ゲーム内の同時接続プレイヤー数が100万人を超える時すらある。何このゲーム…こわ…

もちろん競技シーンの活気もとても高い。もうこれに関しては、自分の目で確かめてほしい。2018年6月に行われた大会の、NRGDignitasという二大強豪チームの決勝戦。すべて見ると長いので、突入した最後の七戦目だけでもいい。ルールがわからなくても、何かとても熱いものを感じ取れるはずだ。

もっと「クソゲーやけどなんかおもろいで!w」みたいな感じで書くつもりだったのにやたら熱が入ってしまったけれど、実際そんくらい面白いんです。少しでも伝わったなら幸いです。あと鍵買わせて。(追記:アップデートで買えるようになった…というか鍵自体の概念が消滅しました。ゲームをプレイするとランダムでドロップするブループリントを課金通貨で現像するか、時間で切り替わるショップから購入するシステムになってます。課金通貨は日本からでも購入可能、やさしい~~)

2020.10.10 久々にこのゲームやったら楽しかったので、ちょびっと文章手直しして、ついでにタイトルも変えました。二年前の自分の文章見てるとそこそこお腹痛くなりますね