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ウイルスと情報戦争(1) ~武漢ウイルス研究所P4実験室の謎~

祖国の民主化を目指す海外の反体制派中国人たちと繋がりがある私としては、彼らの言葉を日本の人々に伝えたいと常日頃から思っている。このことは、日本の危機管理の観点からも重要だろう。

新型コロナウイルスの猛威が加速するにつれて、中国共産党によるプロパガンダと隠蔽の酷さも増しているのだ。そして反体制派の活動家たちほど、中国共産党の体質を知り抜いている人々はいない。

武漢で発生した新型肺炎の正体はなんなのか? 海外の反体制派中国人たちの間では、この新型コロナウイルスは人民解放軍と繋がりのある武漢ウイルス研究所で製造されたものだろうという見方が支配的となっている。

このことについて、まずは中国民主化海外連盟で主席を務める魏京生の評論を紹介しよう。この魏京生は18年間に渡り獄中生活を過ごしたのち米国に逃れ、中国民主化海外連盟の主席となり、海外の反体制派中国人たちの精神的支柱の一人である。その魏京生は、今回の新型コロナウイルスは中国共産党が武漢ウイルス研究所で製造した生物兵器ではないのかということで、中国共産党を強烈に批判している。


一方、こちらは1989年天安門広場における民主化運動のリーダーの一人であった張林の評論だ。この張林は国家政権転覆扇動罪で獄中にあった2005年、劉暁波の独立中文ペンクラブから獄中作家賞を贈られた人物で、現在はニューヨークで活動を行っている。その張林は、今回の新型コロナウイルスは中国共産党が武漢ウイルス研究所で製造した生物兵器だと明確に断定し、天が中国共産党を滅亡させると説いている。


ちなみに、この見方には反体制派の間でも異論はあって、さすがに生物兵器ということはあり得ないという見解を示す論客もいるが、しかしそういう論客でも武漢にある中国共産党のウイルス研究所への疑惑では上記の活動家たちと一致している。

なぜ彼ら海外の反体制派たちは今回の新型コロナウイルスの発生源が武漢ウイルス研究所だと判断したのか? その衝撃的な第一報は、1月18日、路徳の調査によってもたらされた。

路徳はユーチューブで配信している「路徳訪談」という評論番組が反体制派の間で好評な論客なのだが、その路徳が人民解放軍の南京軍区にある軍事医科学研究所が提出した資料をもとに、米国の国立衛生研究院のゲノムデータバンクにある資料を調べたところによると、今回武漢で発生した新型コロナウイルスは2018年に人民解放軍が舟山蝙蝠の体内で発見して分離した新型コロナウイルスに由来し、人為的に舟山蝙蝠ウイルスを改編したものだというのだ。以下は、このことを伝える路徳のツイートである。


この路徳の調査結果は、当然ながら打倒共産党を目指す海外反体制派たちの間で大きな反響を呼んだ。かつて清朝末期には日本に流亡してきた孫文などの反体制派たちが雑誌を発行していたように、現在米国には打倒共産党を目指す反体制派たちがネット上で幾つもメディアを立ち上げているが、1月23日、有力な反体制派メディアの「看中国」は記事のなかで路徳の調査結果を取り上げ、解りやすく解説している。


これによると、武漢で発生した新型コロナウイルスは特にEタンパクと呼ばれる成分が注目されるらしく、今回武漢で発生した新型コロナウイルスと舟山蝙蝠ウイルスはこのEタンパクの組成が100%相似するというのだ。100%相似というのは、本来起こりえるはずがないと強調している。

“冠状病毒有四种重要蛋白质,海外专家今天对比小包膜蛋白(envelope Protein,简称E蛋白),发现武汉新病毒vs舟山蝙蝠病毒具有100%相似度!作为一种变异度高,跨物种传播的病毒,出现这种100%相似近乎不可能的情况下居然出现了!”

また、1月23日には、英国の「デイリーメール」に極めて重要な記事が掲載された。今回の新型コロナウイルスは武漢にあるウイルス研究所の生化学安全ラボ(通称、P4実験室)が発生源ではないかという内容で、記事によると既に2017年の時点において西側諸国の科学者たちは中国共産党によるこの研究所の杜撰な運営体制を問題視し、将来においてこの研究所からウイルスが外に出てしまう恐れを警告していたというのである。ちなみに、この武漢のウイルス研究所は当初新型肺炎の発生源とされた海鮮市場から20マイルほどの距離にある。

以下は、この「デイリーメール」の記事を投稿した唐柏橋のツイートだ。唐柏橋は89年の天安門広場における民主化運動のリーダーの一人で、92年まで獄中生活を余儀なくされたのち米国へ渡り、現在は民主救国陣戦の主席を務めている。その唐柏橋はこの記事を受けて、今回の新型コロナウイルスは中国共産党が研究所の実験室で製造したものであろうということで、「必須問責罪悪!」と中国共産党を強烈に批判している。


この武漢ウイルス研究所の生化学安全ラボが通称P4実験室と呼ばれるのは、設備のレベルに由来する。Pは「Protect」の略で、レベル4が最高位となる。中国でP4の設備を持つラボはこの武漢ウイルス研究所だけで、つまり武漢ウイルス研究所は中国におけるウイルス研究の最高機関なのだ。

1月25日、海外反体制派の最大拠点のメディアともいえる「大紀元」は今回の新型肺炎はこのP4実験室が来源ではないかとする論説を掲載した。


そして、更に疑惑は高まる。以下は1月26日に科学誌の「サイエンス」に掲載された論説で、中国の研究者たちが病院にある41の症例にアクセスして分析した結果を「ランセット」に寄稿したものをもとにしているが、これによると海鮮市場がウイルスの発生源であるという中国当局の公表内容は疑わしく、おそらく海鮮市場は発生源ではないというのだ。


これで益々ウイルスの発生源として海鮮市場から20マイルのところに位置する中国共産党のウイルス研究所に疑念が向けられるわけだが、別の角度からも新たな疑惑が浮上する。中国共産党は諸外国にスパイを派遣して知財などを盗んできたとトランプ政権が強く批判してきたように、中国の知財窃盗は極めて広範囲に及び、それは生化学分野においても例外ではない。1月25日、ロンドンに拠点を置く金融サイトの「ゼロヘッジ」が報じたところによると、かつて中国共産党のスパイがカナダの生化学研究所の実験室からウイルスを盗んでおり、それが今回武漢で発生した新型コロナウイルスの一因となっているのではないかというのだ。

以下は、このゼロヘッジの記事を受けて「看中国」が更なる考証を行ったもので、ゼロヘッジ以外にも広範囲に情報を収集して整理しており、この件では邱香果という名のウイルス研究者が特にあやしいとしている。


更に、「rhi」中国語版や「自由アジア」などが報じたところによると、かつて中国共産党は武漢ウイルス研究所P4実験室の設立に先立ってフランスの生化学研究所にウイルスのことで協力を申し出ていたそうなのだが、このことがフランスの専門家の間で大きな論争を巻き起こしたそうなのだ。

以下が、その記事である。フランスのアントワーヌ・イザンバールという記者による『フランスと中国 ~危険な関係~』と題する著作から当時のことが紹介され、中国共産党から協力要請を受けたフランスではこの件で大論争となり、しまいにはフランスの情報当局が中国はフランスから得た技術をいずれ生物兵器に応用する恐れがあるとフランス政府に警告したという。



「看中国」はこの情報を受けて、更に包括的な考証を行った記事を掲載した。


冒頭で紹介した中国民主化海外連盟主席の魏京生による評論は、これらカナダへのスパイとフランスへの協力要請の件にも触れたうえで、今回武漢で発生した新型コロナウイルスは中国共産党が製造した生物兵器ではないのかと強い疑念を抱き、習近平政権を強烈に批判したものだ。

こうして益々疑惑が深まるなか、路徳は自身がユーチューブで配信する「路徳訪談」で更に詳細に扱い、今回の新型コロナウイルスは人民解放軍が舟山蝙蝠ウイルスから分離して開発したものであると告発し、そしてこれを受けて台湾のテレビ局も報道番組で「路徳訪談」の画面を引用するようになる。


もちろん路徳の指摘は、反体制派メディアでも盛んに取り上げられる。たとえば、以下は「美麗新聞」による記事で、冒頭から「路徳暴露」と路徳の情報をフィーチャーしている。


また西側諸国のメディアでも、路徳とは別の角度から同じ問題を扱う記事が幾つか掲載されるようになる。以下は、それぞれ安全保障専門の「ディフェンスワン」、一般紙の「エドモントン・ジャーナル」と「ワシントン・タイムズ」で、中国(共産党)の生物兵器開発計画について一部の専門家は警告を発していたじゃないか、中国(共産党)のウイルス管理の杜撰さについても警告をしてきたではないか、それなのに・・・という論調となっている。




冒頭で魏京生と共に挙げた張林が今回のウイルスを人民解放軍が製造した生物兵器と断定したのは、主にこれら西側の専門家たちの指摘を受けてのものだ。

一方、海外の反体制派の間には、生物兵器ということに意義を唱える論客もいる。その代表例として、グローバルな中国支援とアジア民主化論壇という組織で理事長を務める費良勇が公民力量に寄稿した評論を紹介しよう。

費良勇は、たとえ武漢のウイルス研究所P4実験室が今回のウイルスの発生源だとしても、それが生物兵器として開発されたということはありえないと論じている。

ここで費良勇は、彼がそう考えるいくつかの論拠を挙げているが、最も重要なのは以下に引用する部分だろう。

中国科学院武汉国家生物安全实验室(P4实验室,安全级别最高的实验室)位于武汉市江夏区武汉病毒研究所郑店园区,距离中国官方宣称的武汉肺炎源头华南海鲜批发市场30多公里。中国根本没有必要在这儿研制危险性极大的生化武器。中国幅员辽阔,有的是海岸、沙漠、荒原,谁会傻到在长江中游的九州通衢建立生化武器基地,这可能首先祸害本国的中心地带呀!

要するに、中国の領土は広大で、海岸や砂漠や高原などがあるのに、どうしてわざわざ中国の中心に位置する武漢で生物兵器のような危ないものを製造するか? そんなことはあり得ない、このように説く費良勇の指摘は確かに一理ある。仮に中国が対米戦争などに備えて生物兵器を製造するとしても、その製造場所は人家の少ない砂漠など(たとえば新彊ウイグル)になるはずだ。武漢のような中国の中心に位置する交通の要衝でそんな危ないものを製造するはずがないという彼の指摘は、一聴に値する(ちなみに、費良勇はそもそも中国に生物兵器は必要ないと明確に断言している)。

但し、だからといって、この理屈だけで中国共産党の生物兵器製造計画をめぐる疑惑が完全に解消されるわけではない(たとえば日本だって、危険を無視して活断層の真上に原発を建設してきたのではないか)。

そしてまた、この費良勇にしても、今回のウイルスの発生源が武漢のウイルス研究所ではないのかという疑念については否定していない。

何といっても、路徳がゲノムの詳細な分析をもとに告発した内容を無下にすることはできないだろう。同時に、おそらくウイルスの発生源は海鮮市場ではないとした中国の学者たちの調査報告も傾聴すべき重要な指摘だ。これらの要素を勘案すれば、今回の新型コロナウイルスは中国共産党により武漢ウイルス研究所P4実験室で製造されたものではないかという疑惑は捨てきれず、反体制派の間では盛んに論評がなされるようになる。

しかし、P4実験室をめぐる疑惑はこれだけではない。今回の新型コロナウイルスは偶々管理がずさんなため外に出てしまったのではなく、新型コロナウイルスは意図的にばらまかれたのではないかという疑惑も浮上しているのだ。その発端となったのが、以下のツイートで報告された内容だ。


これは武漢当局が「武漢身辺事」というユーザー名でウェイボー(微博)のアカウントを取って武漢で起きたことを報告してきたもので、いわばソーシャルメディアでの武漢の官媒にあたるのだが、投稿の日付は昨年の9月19日、当時の投稿をスクリーンショットでツイッターから拡散したものである。

この武漢の官媒によると、9月18日、武漢で開催されたイベントに際して出席者の一人が著しく体調を悪くし、呼吸が苦しく命が危ないということで病院に急行したところ、新型コロナウイルスによるものだと診断されたというのだが、実はこれは人民解放軍と当局者たちが当時武漢で開催した演習なのである。

つまり昨年9月18日、武漢では新型コロナウイルスの発生を想定した訓練が人民解放軍によって実施されていたのだ! 以下は、この新型コロナウイルス発生の「演習」について、「看中国」が詳細に解説した記事だ。


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