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【院試解説】令和元年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 1A (2)


こんにちは やまたくです。

今日は院試解説として

令和元年度 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 1A(2)

を解いていこうと思います。
今回は高校化学で出てくる問題もあるので是非高校生にも解いてもらいたいです。
著作権上の都合から、問題は大学ホームページのリンクからダウンロードしてください。

① フリーデル・クラフツ アシル化反応 (Friedel-Crafts Acylation)

有名問題ですね!!
答えは以下のようになります。

スクリーンショット 2020-05-08 午後9.01.53



② トリニトロ化  (化合物L)

フェノールのトリニトロ化ですね。これに関しては高校化学レベルの問題です。
フェノールがオルト-パラ配向性であることに注意すると以下のようになります。
(トリニトロ化しやすい理由に関しては③で説明します。)

スクリーンショット 2020-05-08 午後9.10.44

② バーチ (Birch) 還元 (化合物M)

電子供与性基がある場合のバーチ還元に関する問題です。

一般に
電子求引性基はイプソ位やパラ位でのBirch還元を促進する
電子供与性基はオルト位やメタ位でのBirch還元を促進する
ということを覚えておきましょう。

そうすると今回の問題で得られる化合物は下記のようになります。

スクリーンショット 2020-05-08 午後9.17.33


③ モノニトロ化への制御

そもそも、フェノールのトリニトロ化反応では以下の2つの要因によって反応が爆発的に進行します。

1.ヒドロキシ基がオルト-パラ配向性活性化基であること
2.  反応系中に過剰量のニトロニウムイオンが存在すること

ここで、希硝酸を用いるとニトロニウムイオンの濃度が下がるため、フェノール過剰条件であれば反応を制御することができます。

また、ニトロ基は電子吸引性が強く芳香環の反応性を下げる効果がある官能基 (メタ配向性不活性化基) であることが知られているので、モノニトロ化合物はフェノールに比べて大幅に反応性が低下するため、トリニトロ化合物や、ジニトロ化合物は得られなくなります。

したがって解答例としては下記のようになると思います。
「反応系中のニトロニウムイオン濃度が低下し、フェノールとの反応確率が低下することに加え、モノニトロ化合物はニトロ基の電子求引性 (メタ配向性不活性化)によりフェノールに比べて大きく反応性が低下するから。」


終わりに

今回は高校生でも解ける問題があったので面白かったですね。大学院試験は基本的な内容を抑えておけば解けるようにできていることが多いので残り時間は少なくなってきましたが頑張りましょう。

質問やコメントがあれば残していってもらえれば嬉しいです。

(この記事は100%合っていることを保証する解答ではないので間違いがあるかもしれません。もし間違い等があればコメントで教えて頂ければ幸いです)


ご愛読いただきありがとうございます