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経営コンサルタントから見た良い住宅会社の選び方

Yahooニュースで住宅会社の施工不備がニュースになりました

579棟を検査して578棟で施工不備が見つかったということです。
全てが同じ施工不備だったのかどうかはわかりませんが、もしそうだとすると意図的だったといわれても仕方がないのではないでしょうか。


長らく住宅会社をご支援させていただいてきた身からすると、これは特定の会社の問題ではなく、業界全体が抱える課題であると感じています。

住宅産業は「クレーム産業」と呼ばれるほどクレームが多いことは、業界に関わる人はご存じのはずです。
「家は3回建てないと成功しない」なんていう業界の格言もあります。

多くの日本人にとって、家は一生で最も高い買い物。
自分や家族の一生に大きな影響を与えるものなので、失敗したくないはずなのに、実際はまったく逆というから恐ろしいです。

駆け出しのころ、先輩コンサルタントに「恐ろしくて家建てられなくなるだろう」と声をかけられた事があり、実際に同じことを感じました。

なぜ、このような事が起きるのか。
大きく情報の非対称性と、業界の風土という2つ課題があります。

【情報の非対称性】

1つ目として情報の非対称性が極めて高い事が挙げられます。

家づくりは多くの人にとって一生に一度あるかないか。
それだけに何を基準に判断したら良いかが分かりません。

家づくりをする際に重視したい基準としては
「土地の立地」「会社の信頼性」「予算」「建物やインテリアのデザイン性」「断熱性などの性能」「担当者の人柄」のようなものが上位に挙げられます。

営業現場を見ていると、男性は性能。
女性はデザイン性を気にする傾向が強いようです。

一生に一回の買い物なので、当然消費者にとっては初めての体験。
なので何を基に決めたら良いのかわかりません。

判断の基準は住宅会社が提供する情報か、ネット上や知人などからのクチコミになります。

中国では日本でいう食べログや楽天トラベルのような、住宅会社に対するクチコミサイトが充実しているという事ですが、日本ではそこまで広がってはいないそうです。

住宅会社の営業は、自分たちの会社が強みとする項目が一番重要であると伝える事を勝負にしています。
(種は分かっている私でも、某工務店の接客を受けると性能が良い家にしないと家族が危ないと感じます。このあたり大したものです。


こうした限られた情報の中で住宅会社を選んでいるのが実態だと思います。


情報の非対称性が大きい影響は契約後も続きます。
注文住宅の場合、契約をしてから具体的な打ち合わせに入ります。

その際に間取り、家具の配置、電気配線の位置、壁やカーペットの色まで自分達で決めなければなりません。

実際に建てた事がある方は、「こんなに決める事が多くて忙しいと思わなかった」というコメントを伺った事あります。

判断基準がない中で、多くの事を決めなくてはなりません。

また、当然ですが家は実際に建てて中に入ってみないと分からない事が多くあります。

なので、建てて住んでから「やっぱり違う」が頻発する構造になっています。


【住宅会社側の課題】

ここまで、消費者側の課題について述べましたが、ここからは住宅産業自体が抱える課題について述べていきます。

消費者側の課題から生じる不満は、認識のズレによるものです。
冒頭に記した施工不備は業界の慣行に起因するものがあります。

住宅産業の傾向として、売上高、特に棟数を重視する傾向があります。
住宅会社にとって売上高が計上されるのは、契約をしたタイミングではなく、お施主様へ引き渡しが終わったタイミングです。

なので、年度末になると住宅会社は売上高・棟数を上げるために、1棟でも多くの住宅を引き渡そうと必死になります。
そのために、工事のスケジュールを早められないか、現場にプレッシャーがかかる事になります。

冒頭の記事のコメント欄に、「大手にしておけば大丈夫」というコメントありますが、これは規模の中小はあまり関係ありません。

大手ハウスメーカーとは言え、下請けに地場の会社を使っている事は往々にしてあります。
むしろ、期末追い込みのプレッシャーは大手の方が厳しいかもしれません。

ある工務店さんをサポートしていた時、某大手ハウスメーカーから「期末の目標になんとしても間に合わせたいから、施工を引き受けてくれないか」という打診をもらった事があります。

こうしたプレッシャーが施工現場にかかり、施工不備の温床になります。


加えて、設計図が完成していない段階で家の工事が始まってしまう事が問題に拍車をかけています。

情報の非対称性の部分で書いたように、家は契約してから、どのような家にするのかを、住宅会社とお施主様の間で打ち合わせをします。
ただ、初めての事なのに基準がないので、なかなか時間の中で決める事ができないこともあります。
一方、工期に間に合わせたり、家を建てる大工さんを確保するためにスケジュールは組まなければなりません。

そのため、決まっていない事が多いのに、家を建て始めなければならないという事態に陥ります。
決まっていない部分は家を建てる間に辻褄を合わせなければいけません。
これは「無理ゲー」です。
これも施工不備の原因になります。

どんな家にするのかの打ち合わせは、住宅会社側からは
営業・設計・インテリアコーディネーター・工事の4人が関わる事になります。
この4人の中で情報を共有しなければならないので大変です。
加えて工事が始まると、現場の大工さんも加わります。

これがお施主さん側と住宅会社側の言った言わない問題につながります。


これだけ爆弾が埋め込まれていれば、施工不備が多くなるのも当然です。

施工が正しく行われているか、第三者機関にチェックしてもらうという方法もありますが、「単なるコスト」と割り切って受けていない会社も多く存在します。

住宅会社側も当然不備が起こりそうなことはわかります。
なので従来、家を引き渡した後住宅会社は家の点検に回る事になっているのですが「行くのが怖くて呼ばれるまで点検に行かない」という会社も多く存在します。

契約をする時に「家は建ててからが本当のお付き合いです」と言われたのに、引き渡しが終わってから音沙汰がないなんて話は往々にあります。

売上・棟数ばかりを追う会社にとっては、引き渡して売上が立ったら次の受注を追った方が効率が良いのです。

【市場環境の罠】

加えて、住宅市場は徐々に縮小しています。
日本人の数、特に家を建てる生産年齢人口が減っているので当たり前です。

この中で住宅会社は、1棟でも多く売るために、いかに早く・いかに安くを競うようになります。

今回のニュースの施工不備は、「早く」「安く」を実現するために意図的にやったのではないかと思います。

【家づくりで大切にする事】

こうした業界の背景があるので、私は家づくりをする際は

① 話を聞いた上で提案をしてくれるか
② お施主様と引渡し後も良い関係を築けている会社か
③ 大工さんを大切にしているか
④ 良いものにはしっかりお金を払う

という観点で会社を見ていただく事をお勧めしています

①話を聞いた上で提案をしてくれるか
前述のとおり、多くの人にとって家づくりは初めての経験で分からない事ばかりのはずです。
自分がそもそも何を伝えたら良いかもわからないでしょう

自分の話を聞いてくれた上で「では、こうしたらどうでしょう」という提案をしてもらえると、何を考えなければならないかが明確になります。

一方的に押し付けられる怖いですが、私としてはただ自分の言う事を
「はい。はい。」と言われているだけの方が怖いです。
素人なので、それが本当に実現できるか分からないので、プロの意見が欲しいのに何もないわけですから。

② お施主様と引渡し後も良い関係を築けている会社か
お引き渡し後もお施主様と良い関係が築けている会社は、
良い家を提供して、その後のメンテナンスなども含めて高い満足を頂けている会社です。

過去のお客様のお家の見学会などをやっている会社もあります。
こうした事ができている会社が本当にお客様に評価されている会社でしょう。

過去のお客様の満足度が高い会社は、紹介で家を建てられるお客様が多いことも特徴です。
紹介で家を建てるお客様の比率を聞いて見ても良いでしょう。

③ 大工さんを大切にしているか
家を実際に建てるのは、大工さんをはじめとする職人さん達です。
施工の品質を重視する会社は大工さんを邪険にする事はしません。

大工さんが大切にされていて、自分が家を建てる時もこの会社に頼みたいと思える会社がは間違いなく良い会社でしょう。

④ 良いものにはしっかりお金を払う
最後に家を買う側として、「安い方を選ぶ」という選択には慎重になっていただきたいと思います

不備があっても安ければ良いというのであれば別ですが、そうでなければ
①~③の要素を踏まえた上で何が良いかを見極めていただく事をお勧めします。

また、お金で選ぶ際は、どこからどこまでが入った見積りなのかを見た上で比較をする事をお勧めします。

よくあるパターンに、一番安いと思って選んだ提案に、他社が提案に盛り込んでいたものが入ってなかった(実はそれを入れて欲しかった)とというものがあります。
提示された見積りを見て、高いか安いかだけを見ていただくとこんな落とし穴にもはまります。


家を選ぶのは怖いと思った方もいるかもしれませんが、
家とそれがもたらすその後の暮らしを真剣に考えて家づくりをしている会社は規模の大小問わず存在しています。

一生に一度の経験で分かりにくいとは思いますが、是非そうした会社と出会っていただけると再幸いです。








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