三回目(禍話)


 トイレにまつわる話。

 大学生のSくんの体験。
 Sくんは留年やらでお金に困っていたところ、奨学金も止まったため、『うまい話でもないかな~』とバイトを探していたという。
 そんなときに警備員のバイトをみつけたのだが、これが大変実入りがいい。先輩も優しく、妙な雑居ビルを夜中に見回るだけで楽だったという。

 しかし、3日目になって急にクビを宣告されてしまった。
 真面目にやっていたし、生活が懸かっているのだ。納得できなかった。
 Sくんはそう人事担当に食って掛かった。
 すると、『特別に…』ということで担当さんは監視カメラの映像を見せてくれた。

 映像は、おとといの夜、警備員が使うトイレの入り口を映したものであった。
 そこにはSくんがトイレに入っていくところが映っていた。が、Sくんには、おとといトイレを使った覚えがない。
 その主旨を担当さんに伝えるが、「知っているよ」と言う。

 すると、担当さんは映像をSくんがトイレに入る直前まで巻き戻した。
 よくみるとSくんは電気もつけず、真っ暗なトイレに入っていった。直後、Sくんそっくりの人物が画面端から現れ、また電気もつけずにトイレに入っていった。

「ね、入っていったでしょ?」
 Sくんは「入っていきましたね…」としか答えられなかった。

 担当さんは淡々と話しはじめた。

「これね、よくない兆候なんだな」

「ここ、今はもう二ヶ所しか事務所構えてないでしょ?昔はもっとオフィスがあったんだけど、その一つで、まあ……いわゆる『人死に』があったんだよ」

「それから『いろいろ』あったんだけど、それとは別に警備員がこんな風に写ることが起き始めたんだよね」

「君が二人映ったでしょ?これね、ほっとくと良くないんだ。三人目が映ると、そいつ『消えちゃう』んだよね」

「よく分からないけど、君は、我々の感知できない部分で、このビルに『気に入られなかった』んじゃないかな」

 もうSくんは気味が悪くて、「辞めます」とその場で担当さんに伝えたという。


 後日、Sくんが書類や支給品などを返しに行ったとき、事情を知っている方に出合い頭「あ、君、このビルに『気に入られなかった』んだってね」といわれ、また背筋が凍ってしまった。
 ただ、興味から三回目に映る時は何が起きるのか聞いてみた。

「三回目はね、映ってる奴の後ろに女の人がぴったりくっついてるんだ。そいつ、季節に関係なくワンピースなんだよね」

「で、その映像が出たら最後、もう連絡が取れなくなるんだよなあ…」

 話を聞き終わると、口封じとして少し厚い封筒を受け取り、Sくんはそのバイトを去っていったという。
 K県のある雑居ビルでの話である。


【引用】
 今回は、禍話 感染注意スペシャル(2017/11/17放送)から一部を引用しました。
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/419702519

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