練習

「戦術の本質」読書メモ

確か学生の頃に買った記憶のある木元寛明著「戦術の本質」の読書メモ。最近忙しかったので、書くことがなく、電車で読んでいる本の読書メモがわりに更新する。

この本はサッカーに直接触れた本ではなく、軍事だとか防衛に関わる問題を扱っていて、サッカーを論じる上で触れられている部分にも関わると思うので、メモを通じて、自分の知識の足しにしたい。今回は第1章「戦いには不変の原則がある」について。今回だけかも。

1−1戦いの原則

戦いには守るべき基本と原則があると言いドラッカーさんは「基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず必ず破綻する」と断じている。ドラッカーはマネジメントの父。組織をマネジメントするという点で、サッカーにも生きる考えもあるだろう。原則は9つあり、一つ一つ順を追って説明される。

1−2目標

目的と目標を確立して徹底して追求する事。目的は抽象的で、目標は具体的で、目的に沿ったもの。まず、戦力は常に有限である。よって、「試合に勝つ」という目的を達成するため、具体的な目標を立て、期待される結果とその効果を明確に示さなければならない。さもないと、目標の達成に結びつかない行動を許容する結果となる。いわゆる気持ち守備では、ボールの奪いどころの目標が曖昧で、各個人の判断によって守備が行われる。しなくても良い走りを繰り返し、体力の消耗にも繋がってしまう。

1−3攻勢

主導権を奪い、維持し、そして拡大する事。攻撃的な態度をとり続けるということではない。相手を自分に追随させるということである。サッカーに置き換えると、決してボールを保持することが主導権を握ることだとは言えない。仮に指揮官同士の意思の衝突だとすれば、相手指揮官に対応を迫る状態を作り出すということができるかが鍵になる。対応とは、選手の交代、陣形の変更や攻め筋の変更など。優秀であればあるほど、その対応に対しても準備が出来ている。ただし、主導権を握る=勝利とは言い切れず、主導権を握ることで、ある程度自由に行動でき、状況を支配できるに過ぎない。

1−4集中

戦闘力の効力を決定的な時間と場所に集中せよ!ということ。戦力は限られている。サッカーではオーバーロードとか数的優位とか言って、あるエリアに人数を集中させて、そのエリアでは相手より人数で優位に立つ方法がある。中央のエリアを支配し、そこからボールを配球するために中盤の人数を増やすやり方がある。当然あるエリアに人数を集中させると他のエリアは手薄になる。そのリスクを負ってでも、得るリターンのことを踏まえて、戦術は組み立てられる。

1−5兵力の節用

兵力の節用は常に集中と対局に位置付けられる。戦闘力は限られている。サイドバックを攻撃参加させて、サイドを制圧し、攻撃に厚みを持たせたい。それは同時に、サイドバックの裏のスペースを相手に明け渡すリスクを許容することである。ボールを失った時のネガトラで各選手がどのように振る舞うのか、整理しておく必要がある。また、そもそもカウンターを受けるスペースの近くに強力な選手を配置するやり方もあるが、これは節用ではない。お金を使うということである。もちろんサッカーでは有効な手段ではあるが。

1−6機動

持っている戦闘力を固定するのではなく、柔軟に運用して、相手を不利な立場に置くことである。どのような機動が効果的かというと、持っている戦闘力をある場所に集中させる、あるいは分散させたりすることで、相手に脅威を与え又は問題を与えて対応に迫るものである。サッカーに置き換えると、インサイドハーフが、上がったSBとCBの間に移動した時にそのインサイドハーフを誰が見るんだ問題を発生させて、相手に対応を迫る。相手がこの問題に対する準備が弱ければ弱いほど、相手に対して先手を取ることができる。

1−7指揮の統一

ここでは、ナポレオンの言葉「一人の愚将も二人の良将に勝る」を引用し、指揮の一元化を重視している。ただ、サッリ監督がチェルシー就任時にジョルジーニョを連れてきたように、人数の問題ではなく、どれだけ脳内で同じ絵が描けているか、ということである。名選手が11人揃えば必ず勝てる、というのがサッカーではない。

1−8警戒

ここは少し難しい。よくわからなかった。まず、ここでいう警戒とは、的に予想外の利益を決して与えてはいけないということである。また、この原則の本質は、「行動の自由を確保すること」と述べられている。まず、この原則を実行するには、己を知ることから始まる。決して、把握できていない弱点はあってはならない。また、弱点は決して相手に使わせて(知られて)はいけない。サッカーでいうと、チームの構造上どうしても埋めることのできない隙が存在する。そこを一度でも突かれてしまうと、相手はそこから勝機を見出す。構造上隠すことはできても、その隙をなくすためには、チームの構造をガラリと変化させなければならない。そんな時間は試合中に果たしてあるのだろうか。

1−9奇襲

奇襲は警戒の対極にある原則である。敵が準備していない時間、場所あるいは方法で攻撃を仕掛けることである。アジアカップ決勝戦のカタール戦、監督のプランはわからないが、日本の選手たちは、カタールのプランに対して準備ができていなかった。奇襲とは少しニュアンスが異なるが、準備できていなかった日本に対して2点を先行できたカタールは良かったし、前半のうちに、というのも大きかった。サッカーは、45分で区切りを一旦つけるハーフタイムのあるスポーツ。この時の日本の修正はもう少し早かった気がするが、奇襲はスピードと、その作戦の保全(知られないこと)が重要である。

1−10簡明

シンプルイズベスト!らしい。洗練されていて、迷いのない行動こそベストである。監督目線でいうと、選手を路頭に迷わせてはいけない。その戦術の効果を信じ込ませなければならない。どれだけ優れた戦術論を持っていても、選手がそれを信じて行動できなければ、チームは乱れる。プロのサッカーでは年間を通したリーグ戦が一般的ではあるが、負けが続くと選手の不安は増大する。成功体験を重ねること、また1−2で述べたように、目標を明確にし手の届く明確で小さな目標を意識させ、小さな成功体験を積ませることも大切である。

これらの10の原則のリストは単なるチェックリストではない。移り変わる様々な状況の変化に応じて原則を適応させることが必要であり、全てのリストにチェックがつかなければならないというわけではないが、これらの原則から大きく逸脱した場合は、失敗のリスクは高くなる。こうなればそうなる!ということを頭の片隅に入れて、状況に応じて行動することを意識したい。あと、この10の原則によると、戦術とは、限られた資源をどのように管理して、運用するのか!を伝えてるのだと思う。
強引にサッカーと結び付けた感のある今回だが、それも良しとしよう。



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