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“人”と“業務”をつなぐプラットフォーム

こんにちは、BYARDの武内です。

テクノロジーの世界経済史』を読んでいます。
AIが社会にどのような影響を与えるかという議題を考えるにあたって、産業革命をはじめとしたテクノロジーによって人類が労働環境や生活などがどのように変わってきたか、テクノロジーの導入をどのように労働者が阻止してきたかという世界経済史が詳細にまとまっている良書です。

具体的なテーマを扱ったビジネス書も大事なのですが、『サピエンス全史』などのように人類の歴史を紐解き、その時何が起こったのか、なぜそれが起こったのかを1冊の本を読むだけでザッと押さえられるのは読書の醍醐味だと思っています。

直接的に業務に活かせるわけではありませんが、人類の歴史という視座を得ることで、着眼点や思考の深みに必ずプラスの影響があると私は信じています。

さて、今回のnoteはBYARDで新しく掲げたProduct Missionである「“人”と“業務”をつなぐプラットフォーム」について書いていきます。


1.“業務”を載せるプラットフォーム

「○○版Uber」や「××版Airbnb」などの表現は、一発でどういうサービスであるかを理解してもらうためにスタートアップのピッチなどではよく使われます。BYARDはUIだけを見ると「Miroっぽい」とか「ワークフローツール?」と言われてしまうことが多いので、Product Visionとして「業務版GitHubをつくる」を掲げました。

Product側のメンバーに「目指すのはGitHubのようなものだよ」と説明すれば一発で伝わりますし、スタートアップ界隈の投資家であればやりたいことはある程度理解してくれるとはずだとは思っています。一方で、厳密な意味でGitHubと同じ機能を揃えるわけではありませんし、業務とコードでは扱い方や機能実装の仕方は変わってきて当然なので、もう一段抽象化したレイヤーでどういうものを作るのかを言語化する必要がありました。

BYARDはローンチ当初からずっと「一言でどういうツールか表現するのが難しい」という課題を抱えてきました。Miro+Trello、ServiceNowっぽい、間接部門のプロジェクト管理ツール、など色々な表現を試みてきましたが、どれも一発で伝わるものではないですし、私たちもあまりしっくりきていませんでした。

「BYARDを使うと属人化の解消ができる」というのは導入いただいたお客様の声から見えてきた効果ですが、属人化という状態もだいぶフワッとしています。ダイエットなどと同じで、属人化は解消された方がbetterではありますが、ではどうやって解消するのか、というhowの部分が重要です。それを考えるに当たっては、現時点における課題をもう少し因数分解する必要があります。

属人化が起こっている原因はどこにあるのか、ということが正しく言語化できなければ、解消に向けての正しいアプローチは不可能です。そもそも「属人化」というのは組織や業務の状態を表す言葉であって、具体的な課題を何も特定していません。

そこで「属人化」をもう少し因数分解していく中で、出てきた定義が「“人”と“業務”が紐付いている(密結合している)」でした。「○○さんにしかできない仕事」があるから、いないと困る、休めない、という状態を引き起こしてしまう、と私たちは考えました。

企業規模が小さいうちはあらゆる業務が属人化していて当然ですが、事業をスケールさせるために人を雇い組織を拡大していく上では、属人化は大きなボトルネックになります。

だからこそ、属人化の解消とは「“人”と“業務”が切り離された状態」という風に定義することができます。個人に業務を密結合させない、それが目指す方向性としては良さそうだと感じました。

では、切り離した“業務”をどうするのか。AIに代表される自動化アプローチでは、それをテクノロジーに載せる(代替させる)ということになるのでしょうが、現時点では対応できる業務の範囲が狭すぎて机上の空論に過ぎない、と私は考えています。

そこで必要になってくるのが「“業務”を載せるプラットフォーム」なのです。これがBYARDの存在意義であり、私たちが「業務版GitHub」と表現していることの根幹です。

管理側の視点として「属人化が悪」というのは簡単ですが、「属人化を解消しろ!」みたいな曖昧な指示をされても誰も対応できません。BYARDがやりたいのは“業務”と“人”を切り離した上で、その“業務”を載せるプラットフォームになることです。

「属人化を解消しろ!」ではなく、「その業務、ちゃんとBYARDに載せておいて」と言われた方がはるかに実効性があります。「BYARD(バイアード)する」が動詞になる未来。そこを目指して私たちがつくるべきものは、世の中にある“業務”を載せられるプラットフォームなのです。

2.“人”を中心に考える

テクノロジーの世界経済史』には頻繁に「労働置換技術」と「労働補完技術」という言葉が出てきます。

本書の主張の一つは単純明快である。技術の進歩に人々がどう対応するかは、所得が増えるか減るかに左右される、ということだ。この問題を考えるとき、経済学者は人間の労働を助ける技術人間の労働に置き換わる技術とを区別する。本書では前者を補完技術(または労働補完技術)、後者を置換技術(または労働置換技術) と呼ぶことにする。

テクノロジーの世界経済史』より

労働者が機械を破壊したラッダイト運動などに代表されるように、私たちはテクノロジーの発展によって仕事を奪われるかもしれないという恐怖を常に抱いてきました。SF小説やSF映画が描く機械が人間を排除した世界は、それらを極端に具現化したものでしょう。

AIの発展によって、この議論は再び盛り上がりつつあります。生成AIは応用範囲も広そうですし、単純作業を置き換えたり、GUIに変わるインターフェースとしてのAIの台頭には非常に期待ができます。

だからといって、「AIに仕事が奪われる!!」と騒ぐのは早計な気もしています。AIによって仕事のやり方や求められるスキルが変わっていくことは間違いないでしょうが、簡単に奪われるほど現代の仕事は単純なものばかりではないはずです。

考えるべきことがあるとすればテクノロジーの発展スピードが上がっていることによって、私たちのスキルが陳腐化するまでの期間が短くなっていることでしょう。今の日本の礎を築いてきたご年配の政治家や経営者の方には、キーボードが打てない、スマホが使えないという人もたくさんいますが、それらを周囲のスタッフがフォローすることによって業務は回っています。

テクノロジーの発展周期が短くなることで、これまでは人生の中で1回大きな変化があるかどうかだったのが、2回、3回と大きな変化を経験し、対応しなければならなくなる可能性はあります。

AIの発展によって私たちの日常や仕事は、短期間で大きく変化する可能性を秘めており、それを忌避することはできません。最新の情報をキャッチアップし、変化に対応できる姿勢を持っておく必要はあると思います。それができない(変化できない)人間が淘汰されることは自然の摂理なので、私たちは変化に対応できる側にい続けることが重要になってくるはずです。

前置きが長くなりましたが、私は現代のテクノロジーの大半を「労働置換技術」ではなく「労働補完技術」であると捉えています。

人間が本来はそこまで得意ではなかった「正確に淡々と決められたことをこなしていく」という分野についてはテクノロジーでうまく置き換えつつ、私たちは「考える」、「仮説を立てる」、「曖昧な中でも前に進んでいく」などの人間にしかできないことを仕事として注力していくようになるのではないでしょうか。人間は単なるリソースではなく、自ら考えて動くことができる存在なのです。

このような観点のもと、BYARDは“人”にとって優しい(扱いやすい)プロダクトであることを是としてきました。人間に機械のような正確さや完璧さを求めるのではなく、人間の曖昧さを許容し、その上で“業務”を円滑に回すことができる状態を作るにはどうすればいいかを、創業以来ずっと考えてきました。

5年後、10年後にAIがどうなっているのか、私たちの仕事がどのように変質しているのか、を正確に予測することは困難ですが、仕事がなくなり余暇を楽しむみたいな状況はあまり想像できません。単純労働からはいくばくか解放されていると思いますが、それによって上がった生産性や社会のスピードによって、結局は仕事に追われていることには変わりがないのではないか、という風に考えたりもします。

経営観点では費用対効果や生産性を考えるのは当然であり、それらが数値に換算される以上はより効率的な方が選択されることから逃れることはできません。一方で、世の中の全てを数値化して計測できるのか、その数値は本当に実態を表しているのか、という観点は持っておかないと、数字に振り回されて本質を見失ってしまうことにもなりかねません。

BPM(Business Process Management)という分野は突き詰めていくほどに、人間を機械のように扱い、数値化することを指向することになりがちですが、それは理論上の話であって実際の現場はそんなに単純なものではありません。数値化や機械化は、曖昧な情報を排除することで成り立っていますが、場合によっては排除された情報の方が重要なこともあるはずです。

テクノロジーは早く正確で、人間は柔軟。この定義はテイラーが「科学的管理法」を提唱した当時と何も変わっていないはずですが、テクノロジーが高度なことができるようになっていくしたがって、「人間に近づいたのではないか」、「人間を代替できるのではないか」という誤認をこれまで何度も引き起こしてきました。

テクノロジーと人は本質が別である以上、テクノロジーの発展の先に「人間そのものを置き換える」可能性はかなり低いのではないかと私は考えています。

現時点ではまだまだ妄想に過ぎないことも多分に含まれていますが、“人”と“業務”、そしてテクノロジーの未来を考え、BYARDはあくまでも“人”を中心にしたプラットフォームを目指しています。

本当の意味での業務の効率性や生産性に直結するのは、人をテクノロジーで置き換えることではなく、人と人によるコミュニケーションや情報共有の不備の解消にあるはずなので、BYARDというプロダクトがそこを解決できる未来に向けて、これからも開発を続けていきます。

BYARDのご紹介

BYARDはツールを提供するだけでなく、初期の業務設計コンサルティングをしっかり伴走させていただきますので、自社の業務プロセスが確実に可視化され、業務改善をするための土台を早期に整えることができます。
BYARDはマニュアルやフロー図を作るのではなく、「業務を可視化し、業務設計ができる状態を維持する」という価値を提供するツールです。この辺りに課題を抱える皆様、ぜひお気軽にご連絡ください。

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