見出し画像

TARO賞を振り返って

約2ヶ月間に渡って開催していた「第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」が終わった。
昨年12月に、42歳にして生まれて初めて乗った飛行機だが、4月の搬出までに合計9回乗った。
フェリーなどの交通手段を含めると、熊本県と神奈川県を6往復した。
そのうち会期中に在館したのは7回。
関東での滞在日数の合計は、28日間。
4月の終わり頃、もう一往復し、長期滞在するので記録を更新予定(4月30日現在、合計11回のフライト、そして、滞在期間は34日間に更新された)

それまでの人生の中で、関東に足を運んだのは大学時代にたったの1回だけ。
私にとって、どこか遠くのテレビの中の世界のような、そんな存在だった「関東」という場所。
日本の中心なのに、遠くて遠くて、自分には縁のない場所なのだろうと決めつけていた場所。
さすがに、ここまで通い続けると「特別な場所」になるものだ。
ましてや、自分の人生をかけて作り続けてきた作品が受け入れてもらえた有難い場所。
どんなに大金を積んでも展示できない場所で約2ヶ月もの間展示できる貴重な機会を頂けたことは、この後の人生でも滅多にない経験だと思う。

約2ヶ月の会期中に本当にたくさんの方に「あなぐまち」を観ていただいた。
「あなぐまち」は「頭の 中の 具体的な 町」の頭文字を取って名付けた通り、私の頭の中に存在する町だ。
だから、この2ヶ月間はずっと誰かに私の頭の中を覗かれているようなそんな感覚だった。
美術館という場所柄もあるのか、とてもお行儀良く私の頭の中へ訪問してくださった方ばかり。
作品が壊されることもなかったし、小さな子どもたちも夢中になってのめり込んでいてくれたことがとても嬉しかった。

TARO賞は会期中に幾つかの企画があって「お気に入りを選ぼう」というものと「お手紙プロジェクト」というものがあった。
「お気に入りを選ぼう」は、来館者が入選した22組の作品を観た後に、自分のお気に入りの作品に投票するというもの。
投票数が1番の作家には「オーディエンス賞」という賞が与えられるのだ。
補足として、これはあくまでも「来館者が選んだ賞」なので、実際の受賞に何か影響があるわけではない。
有難いことに、私はこの「オーディエンス賞」もいただくことができた。
幼い頃からずっと「誰にも受け入れてもらえない感性だ」と思っていたのに、決してそんなことはなかったことに正直驚いているし、素直に嬉しい気持ち。
貴重な一票を投票してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

そして、もう一つの企画「お手紙プロジェクト」
こちらも、来館者が参加する企画で、その名の通り「作家にお手紙を書こう」というものだ。
作家宛に書かれたお手紙はロビーの辺りに少し展示されていたので「つん宛」のお手紙を見ると嬉しくて思わず写真撮影をしたりしていた。
会期が終わり、搬出を全て完了した後にそのお手紙を渡してくださるのだけど、本当にたくさんのお手紙が届いていた。
会期中にロビーで見ていた枚数はほんの一部だったことを知って、喜びと感謝の気持ちでいっぱいになった。
特に、子どもたちからのお手紙が多くて、それが何よりも嬉しかった。

普段、関わることができなかった関東を中心とした皆さんに「あなぐまち」を実際に観ていただけたことは、私の世界を確実に広げてもらえた。
行きつけのお店ができて、また会いたいと思える人たちに出会って、時間を共にできたことは私のこれからの人生をきっと支えてくれると思う。

0歳の頃から私を見ていた母を始め、小学一年生から中学の頃の友人、高校時代の友人、大学時代の友人、SNSでしか面識がなかった方、仕事の取引先の方、会期中に行った18きっぷ旅で出逢ってたったの18日しか経っていない友人、TARO賞をきっかけに知って何度も足を運んでくださった方、遠くは熊本県、宮城県、関西や長野県、一週間に1本しかフェリーが運航していない離島から駆けつけてくれた友人もいた。
本当にたくさんの人と再会したり、「はじめまして」ができたことは、私がそれまで生きてきた半生をギュッと凝縮したような、まるで人生の走馬灯を見ているような、そんな感覚だった。
たくさんの方から「おめでとう」の言葉をいただいたこと、たくさんのプレゼントやお土産やお祝いをいただいたこと、自分のことのように泣いて喜んでくれた人たちがいたこと、そして、それらを一緒に味わえたこと。

全ての出会いや出来事や時間が尊くて、有難いものだった。

「小さなあきちゃん」が生み出した小さな小さな世界が、いつの間にかたくさんの人を巻き込んで、大きな世界になりつつある。
私はそんな平和で大切な世界をこれからもずっとずっと守り続けるのだ。
TARO賞に関わってくださった関係者の皆さん、あなぐまちを観に足を運んでくださった皆さん、様々な形で応援してくださった皆さん、そして、あなぐまちを生み出してくれたあきちゃん、それを具体的に形にし続けたつん。
本当に本当にありがとうございました。
これからも、私らしく、楽しんで制作していきたいし、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

そんなTARO賞の振り返りnote。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?