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中小企業を顧客に

管理仕事で稼ぐために必要な要素は、重要な順に、「技術・チーム・顧客」。顧客とすべき法人・個人の条件は、「充分な資金・技術への評価・プロパスタッフの存在」。もう少し具体的なレイヤでは、「型の無条件受け入れ、労務・営業事務は対象外」。

続いて、顧客をスタートアップと中小企業に分けて、まず前者について言及した。彼らとの継続的な付き合いにおける特徴は、エクイティによる報酬提供である。これについては、「数値計画とスケジュール・事業の成功確度・生株でもらう・期間経過によるべスティングを付ける」と項を切って羅列した。

ここまでが以下の記事。

今回は、テーマ顧客のつづき。スタートアップとの比較における中小企業に議論を移す。中小企業の定義は曖昧だが、ここでは概ね売上10-30億、従業員30-100名程度とする。

基本的に、スタートアップの特徴とは逆の関係にある。変化に抵抗があって、テクノロジへの理解が浅く、規模も相応に大きく、導入に時間がかかる。他方、一度導入した整備への改修機会が少なく、きちんと選定すれば資金に余裕がある。管理系へ潤沢に投資を回してもらえる。

そして前段のデメリットは、すべての中小企業が持つ問題ではなく、傾向に過ぎない。たとえばオーナーが合理的なマインドを持っていれば、むしろ強烈なトップダウンにより変化が早く、テクノロジの導入も一瞬で済む。

ひとつ難しいのが人材の採用だ。大企業やスタートアップと異なって、彼らは常に人手不足にある。新たに採用しようにも、人材マーケットから優秀な人間を確保するのは現実的ではなく、既存の人員になんとか対応してもらうしかない。人に期待はできない。

ベンダとしてここで大切なのは、彼らに、「いかに考えさせないか」。提供する「型」を固定するのはもちろんのこと、業務リストは手続書と呼べるレベルにまで具体的に作り込む。

「考えさせない」という我々の姿勢は一見、非人間的かつ残酷的なアプローチのように思わえるがしかし、世の中には、「自分で考えたくない。言われたことだけを黙々とこなしたい」という方々が、驚くほどたくさんいる。僕の感覚では、中小企業の管理部においては、むしろ、そちらのほうが多い。もちろん、そういう人々であっても、非効率で意味不明な大量の業務処理には、ストレスを溜める。導入時にヒヤリングしてみると、不満が噴出する。

ただし、業務を自ら改修することはできない。みんな、困っている。
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導入プロセスの解説は、それだけで6時間のワークショップを構成する。MFにておこなっていた、いわゆる”第3回”が該当する。ここでは簡単に要点を記載するに留める。

ベンダサイドが、すべての業務をイチから設計する。使える部分は使おうと試みてもよいが、結局作り直したほうが効率的だ。細かい話をすれば、進行期の元データ・帳簿類はすべて期初から作り直す。僕が手を動かす際には、昨年度分からやり直すことが多い。下手に過去と”直近月”の繋ぎ込みに挑まないことだ。フレッシュスタートが望ましい。

オンラインで完了する仕事は、ベンダがアサインした"オンライン業務処理人員"へ振り分ける。現地プロパではない。残った「どうしても生じる手作業、他部門とのコミュニケーション。具体的には打ち込み・スキャン・営業事務・勤怠管理」についてのみ、現地プロパの方々に任せる。営業事務・勤怠管理もここに含まれる。

"オンライン業務処理人員"について、これまで『方法論』や本noteエッセイにて言及していなかった(ような気がする)。隠していたわけではないが、なんとなく、あまり公にはしない。僕の仕事をネットの向こうから支えてくれる方々。僕の記述した手続書通りに、オンラインで、業務を捌く。意図に沿った仕事がいつのまにか返ってくる。僕はどの案件でも同じ型を用いる。仕事を頼み続けるほど、彼女たちの練度が上がる。多くの仕事を捌けるようになる。収入が増える。もちろん、僕も助かる。

中小企業のトップは、自社内の管理仕事の革新を求めながら、プロパ採用でそれを担う技術者を確保するのが難しいことを把握している。そうして外部専門家を頼る。ここで外部専門家は、口を出すだけ・整備するだけでは不足がある。中に人がいないから、整備だけでなく、成果を継続的に納品しなければ、意味がない。「手離れ」なんてことばがあるけれど、それは甘い。成果に最後まで責任を負わない者の発言だろう。人は辞めるし、整備改修はおこなわれないし、いつのまにか業務は滞留し、いつかはもとに戻ってしまう。

僕は現役当時、渋谷区に事務所を構える30歳前後の会計士で、スタートアップ界隈の人間との付き合いが多かったから、その専門とみなされることがあったのだけれど、フロー報酬の過半は、いわゆる中小企業に由来した(もちろんエクイティ報酬の100%はスタートアップだが)。関与当初は構造を理解せず、先方企業の既存リソースに運用を頼り、導入に断続的につまづいて、無理なのではないかと諦めそうになった時期もあった。あるときから、限界までこちら側で対処するようにして、以後、美しく業務が流れるようになった。オンライン業務処理のみなさまのおかげだね。

今日はここまで。

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