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2021年1月24日 イスラエルのCOVID19ワクチン接種事情

はじめに

COVID19 がその名を世界に轟かせ始めてから1年が経とうとしています。人類が感染症との闘いの歴史の中でたどり着いたその防御法の一つはワクチンですが、様々な製薬会社、研究機関が必死で開発した結果、COVID19という新種のウィルス発見から1年程度でワクチンの実用化が成功しました。これは人類の歴史の中でも稀に見る快挙だと思います。
そしてそのワクチンを、また目をみはるほどの速さで自国民に接種している国があります。それがイスラエルです。2021年1月現在で、人口の30%近くがワクチン接種済み。これは接種を開始した国の中でもダントツに高い割合で、2位以下の、UAE19%やバハレーン約10%などを寄せ付けません。
この素早いワクチン接種を可能にしたイスラエルの特徴について、私なりに考えてみました。

国民皆保険制度×IDナンバー×デジタル化

すでに日本のメディアでもいくつか取り上げているところがあるので詳しいことは省きますが、イスラエルは国民の皆保険制度がとてもよく機能している国で、さらにそのデータのデジタル化を20年以上前から実施していました。
私は、イスラエルの素早いワクチン接種を可能にしたのは、国民皆保険制度、IDナンバーおよびデジタル化、この3つが整っていたからだと思っています。
(このIDナンバー制度とデジタル化の恩恵は大きく、イスラエルで市民権を得た時は、9桁のIDナンバーをもらってナンバリングされた自分にちょっと違和感を覚えたものですが、今では番号制度大賛成。推進派と言っても良いくらいですが、それはまた別の機会に。)

柔軟性

そしてもう一つ、私がとても驚いたことがあります。それがイスラエル人の「柔軟性」です。イスラエル人はもともと柔軟性が高い人が多いというか、まあ、悪い言い方をすると結構何でも適当な部分があります。悪い例を上げると、ロックダウンに対する「柔軟性」です。
「日常生活品の買い出し」「高齢者の世話」「出勤を必要とする仕事があるから」…などなど、正直どんな言い訳でもロックダウン破りに対して成り立つ部分があり、イスラエル人はこれを「柔軟に」活用します。これじゃあ感染者数が減らないのはもっともだという気がしないでもありません。
けれど時にはこの柔軟性が、現在の様な「非常事態」に良いように活用されることもあるのです。その一つがこのコロナのワクチン接種です。
今回のワクチン接種は、2020年の12月から始まり、はじめは医療関連従事者及び60歳以上の高齢者を対象としていました。(現在は40歳以上が対象になっています。)それでも高齢の親の付き添いで接種会場に行った対象年齢以下の人たちも同じ機会に接種する例や、接種希望者が少ない会場などでは、予約なしで年齢が60歳に満たなくても会場に行けばその場で接種してくれるという話がちらほら聞かれるようになりました。
実はこのワクチン、ニュースなどの情報によると、非常に低温で保管しなければならず、町の特設会場などではマイナス何十度にもなるような設備もないため、一定の期間が過ぎれば未開封でも未使用でもすべて廃棄処分となってしまうそうなのです。
そんなわけで、特にワクチンが余ってしまいそうな会場では手続き上の区分けに対してはあまり厳密にならず、柔軟に対処し、できるだけ多くの人にワクチンを接種することを優先しました。これは接種率の上昇に貢献するだけでなく、ワクチンの無駄な廃棄を防いだということなのだそうです。
「〇歳以上が対象者」という優先順位はあるけれど、四角四面にその決まりにとらわれることはなく、最終的な目標はできるだけ多くの人にワクチンを接種するという本質を見失わない。良い柔軟性の事例だと思いました。

寛容性

さらに、おせっかいが大好き、人を助けることが大好きなイスラエル人は、「人助け」と思われることに関してはもう、縦横無尽、自由自在に柔軟に動きます。
ここイスラエルでは、メッセージアプリはイスラエル発祥の”ワッツアップ”を使っている人がほとんどなのですが、大抵の人が自然発生的にできた地域住民のワッツアップグループに入っています。
地域によりますけれど、両隣5-6軒ずつだったり、通り一本だったり、地区一角だったり、マンション一帯だったり。そういう、ちょっと挨拶を交わしたり、駐車場やごみ捨ての様な日常のこまごましたことで関係性ができるような人々ですね。そんな人々の中で、おせっかい好き、人好き、お世話好きな人の発案で、強制力も何もなくゆる~くメッセージグループが出来上がるのです。日本の「隣組」から強制力をなくして、現代化するという感じでしょうか?それとも現代の「回覧板」でしょうか?(イスラエルで回覧板を見たことはありませんが…。)
そのグループの中に医療従事者やワクチン会場関係者がいれば、その人たちが接種希望者が少なくてワクチンが余りそうな会場についての情報を流します。
また、「今、親の付き添いで行ってきたんだけど私も打ってもらった」とか「ワクチン接種が開始された特別学級の関係者ですがワクチンに余分があって…」などという感じで、有用と思われる情報はシェアしまくるのです。
イスラエル人は日本人と比べて、何事にもあけっぴろげで、一般的に人との精神的距離が近く、同時に物質的な距離も近いので感染症も拡大しやすいのではありますが、日本だったら「関係者の友達だからって、対象外なのに特別配慮してもらえるの?」と眉をひそめられ、内密に行われるようなことでも、堂々と普通に行われています。
これを良いと感じるか悪いと感じるかは文化の違いなのでしょうが、個人的にはこういう寛容性は、私にとっては居心地が良い場合が多いのです。

おわりに

こんな感じで、「ニュースにならない」イスラエルの様子をちょっと書いてみたのですが、皆さんいかがでしたか?
それぞれの国がそれぞれに合った方法で、この未曽有の緊急事態、COVID19感染症拡大への対処が懸命に行われています。どうか、世界の皆さんができるだけ安心できる環境で、無事にこの困難を乗り越えることができますように!
それではまた!

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