Makiko

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Makiko

noteでは異文化、英語、食べ物に関するエッセイを書いています。 JOESマガジンにてインタビュー記事「イマドキの海外生活」連載中。https://joes-magazine.com/category/43 アメリカからお届けしています。

最近の記事

梅干しとレモネードの狭間で

「あの、ね、ね、ね、あの、あの、ライオン」 ここまで一生懸命搾り出そうとしていた言葉がライオンだったことに私は笑みを噛み殺しつつ、時計が視界に入らないよう姿勢を傾けて、ゆったり三男に頷く。 「あ、あ、あ、ガオーって、するのとき、じつはこわくないんだよ、ぜんぜん」 こんな喋り方なのに、何ということか、ライオンの雄叫びなど怖くないっていう強がりな発言をしたかったの?  ついつい目尻を細めるが、驚いたような表情にすぐに作り替えて、「そうなのー?すごーい!」と言えるのが、十年戦士の母

    • クライマックスを迎える、春

      加速の季節 春だ。そろそろ、でもなく、待ち遠しい、でもなく、アメリカ・オハイオでは今まさに春真っ盛り。 それは、学校では5月末にEnd of the year(学年末)を迎えるためのテストシーズンであり、冬の間影を潜めていたサッカーや野球、フットボールなどの屋外スポーツが盛り上がる時期であり、夏=バカンスに向けて仕事を片付けていく、言うなればクライマックスとも呼べる季節だ。 長かった冬にできなかったことをしようと人々がこぞって動き始め、花を愛でる暇もないほど。新緑がみる

      • All these dramas

        Girls=Dramas 「ドラマ」という言葉は日本のママたちの口からもよく出るかもしれないが、アメリカのママの口からもよく出てくる。 日本での使われ方とは違って、下記のような使い方だ。大抵、娘を持つママたちが使う。 ”Yeah, the drama, again" "Honey, you don't have to be that dramatic" "In your class too? Oh gosh, all these dramas" 何事も大げさに受け止めたり

        • アメリカの図書室ボランティアと、本の中と外

          アメリカの図書室ボランティア 「Can I renew this book?」 そう申し出てくるのはたいてい声が小さく、こちらと目を合わせることもできない、本のタイトルを隠しているような子。 できる、と言うと、そんなに安心しなくてもいいのにというくらいホッとした表情になって、嬉しそうに本を差し出してくる。 「Here you go」 そう言って読みかけの分厚い本を手渡す時、私はその子に、つい忘れそうになっていた感覚を呼び戻してもらう。 スポーツより、ゲームより、食事より、一

        梅干しとレモネードの狭間で

          土とか木の根っことか

          ただの人間から母に変わり、十年が経った。 学生の頃から壁に掛けていたモネとゴッホは、七年ほどその座を幼稚園の制作物に譲っていたが、最近、また壁に戻ってきた。 砂場セット置き場になっていたワインセラーも、復活した。 クローゼットの奥で朽ちているのではないかと思われたマノロブラニクも、リハビリは要するものの、なんとか履いて歩くことならできそうだ。 ガラス製の飾り花瓶、アイロン必須の白いワンピース。 昔に戻れたかのように錯覚しそう。 でも、もちろん、過去に戻ってきたわけではない。

          土とか木の根っことか

          ポトフ

          ポトフとポトス 玉ねぎ、セロリ、にんじん、キャベツ、にんにく、じゃがいも、ローリエの葉。残りもののベーコン数枚。ポトフと白米だけの献立にしてしまいたいから、鶏肉も入れよう。 オリーブオイルを敷いたル・クルーゼからベーコンとにんにくのいい香りが立ってきたら、野菜を切ったそばから放り入れていく。下処理のいる野菜もないし、切り方は雑でいい。順番だって構わない。 しばらく炒める過程も、良い。玉ねぎが透き通っていく様子やセロリの緑が鮮やかに光っていくところ。ローリエの葉から香りが立

          四階、特別資料室

          通っていた大学の図書館では二階が入り口になっていて、その階は一般書コーナー。 三階は専門書。地下一階と二階には研究書庫が並んでいた。 マンモス校と呼ばれるその人口密度の高い大学の中で、日に一度は地下の研究書庫へ本の背表紙を眺めに下りて、心を落ち着かせていた。 大学卒業間際をヨーロッパのチェコで過ごしていた私は、周りのヨーロッパ学生たちの「芸術万歳、いられる限り学生で、労働は最低限」の風潮にすっかり感化された状態で大学五年生を迎えていた。 学生だから無理かなと思いながら、大好

          四階、特別資料室

          必死さの味 グラノーラ

          グラノーラが好きだ。バリバリしていて、甘くて、ちょっと苦くて、栄養がありそうなところ。カロリーも高そうだから、食べたあとは運動したいような気持ちになるところ。 好きすぎて、販売許可を得て、自作したものをネットショップやマルシェで売っていたこともある。 その頃自分が運営していたネットショップは「無添加」「グルテンフリー」が文句だったので、その条件はクリアしていたのだが、作っていると、お客様にはちょっと言いにくいようなことも出てくる。 たとえば、美味しいグラノーラには信じられな

          必死さの味 グラノーラ

          JOESマガジンの宣伝と、こぼれる点を拾いたい話

          「イマドキの海外生活」 この秋から、JOES(海外子女教育振興財団 Japan Overseas Educational Services)WEBマガジン上でライターとして、インタビューの連載をさせていただくことになりました。 JOESではこれまで40年以上に渡り『海外子女教育』という冊子を刊行していましたが、8月で紙媒体は廃刊となり、9月からWeb版にリニューアルしました。https://joes-magazine.com こちらのWebマガジン上で「イマドキの海外生活

          JOESマガジンの宣伝と、こぼれる点を拾いたい話

          ママのEx

          久しぶりに元カレに会った。 大学生の時に割と長く付き合っていた相手だ。 大学生という、未熟だけれど高校生よりは自由と責任のある、モラトリアムが許されたそんな時期を一緒に過ごしていた。 このことをこのnoteに書きたいと思ったのは、彼も私もアメリカの帰国子女であるというのが共通項だったからだ。 別れてからそれぞれに忙しく、思い出す機会も少なかったが、現在の私は自分が駐在員の子としてアメリカで育ったことを意識することが多い環境にあるので、ちょっとその彼に久しぶりに会って、帰国

          ママのEx

          アメリカの色んな家庭と、エイミーのこと

          ママが二人 よく顔を合わせているうちに、色々と話せる仲になってきたママがいる。 兄弟どちらも同じクラスなので、双方のクラスの各種イベントごとに出入りしていると、高い頻度で会うことになるのだ。 そのママと話すときには少し気を遣う。 その家庭はパパがいなくて、ママが二人という構成。 それだから気を遣うというわけじゃなくて、 どうしても昔、自分のしてしまったことで忘れることのできない過去を思い出すからだ。 チェコで会ったエイミー 大学四年から五年にかけて、周りが就職していく

          アメリカの色んな家庭と、エイミーのこと

          アメリカでベースボールママ

          野球少年の母をしている。 まだアメリカでしかこの役割を担ったことがないので日本との比較はできないが、野球を支える中で色々と面白いと発見するカルチャーに出会うことがあるので、書いてみたい。 パパ送迎 アメリカの場合、外出するには自分で運転できるようになる年齢までは親が練習や試合に送迎することになる。 だから、だいたい夕方5時から8時、週4回か5回の送迎が発生する。 ここで一つ目の発見は、送迎の8割はパパがしているということ。 ここは地域柄か、共働きで、お父さんが在宅というパ

          アメリカでベースボールママ

          テイラー・スウィフトと履歴書に載らない戦い

          テイラー・スウィフトのライブを観に行ってきた。 その土曜日は長男の補習校の運動会に出、次男を野球の試合に連れていった後で汗と砂埃まみれという、テイラーの世界観からほど遠い状態からの出発だったが、ともかく開演に間に合うべくオハイオからデトロイトへ3時間車を走らせた。 コントラストも甚だしい野球道具と男子飯に覆われて今にも消えそうなテイラー・スウィフトに呼応する乙女な灯をそっと暖めて。 アメリカでワーママなAちゃん Aちゃんが助手席に乗り込むと、普段は男子しか乗せていない埃っ

          テイラー・スウィフトと履歴書に載らない戦い

          笑顔で学校に行けるまで[海外育児]

          日本から渡米三週間ごろのある朝。 「恐竜のパジャマまだ届かない?」 こちらに来てから毎晩寝るときにそれを聞いて泣く次男が起きてすぐにまた聞いてきた。 アメリカの会社は朝が早い。七時には会社に着くように夫がガレージを開ける音で目が覚めたらしい。 「船便に乗せちゃったからまだまだ届かないの。ごめんね」 何十回目かになるその台詞を聞くと、それを待っていたかのように大声で泣き始める次男。 「なんでー。うぇーん。」 三歳のなぜなぜ期での渡米なので、こんなときにも「なんで」を連発する。

          笑顔で学校に行けるまで[海外育児]

          キッチンタオル偏愛

          なんの学びも悟りもないけど、キッチンタオルの話。 アメリカのキッチンタオル 物欲はあまりない方だが、見るとどうしても買わずにはいられないものがある。惹きつけられる文句の書かれたキッチンタオルだ。 これを逃したら二度と出会えないと感じさせる、店の隅にぶら下げられた数枚のキッチンタオル。 目立たないのに、誘ってくる。誰かの手に渡る前に手に入れておかなければ。そう思わせる。 文句とその時の心情が重なり合い、出会うべくして出会ったとその都度感じて集めてきた。 このように書かれた

          キッチンタオル偏愛

          令和の駐妻に、昭和妻開眼

          かっこいい令和ママ 綺麗に整えられた爪でトレジョのチョコがけオレンジをつまみながら、 「いつまで?」 「育休に合わせてるから、今度の4月には戻るんだよね」 「そっかー、私は産休もセットになったからあと一年だよ」 「実家戻るの?」 「ううん、自宅あるから」 と、子どもを遊ばせながら会話する令和の駐在妻。 三男のママ友はほとんどが自分より歳下だ。 若いママたちのナチュラルな会話に昭和生まれの私は驚いた。 長男と三男との間には、六歳半の歳の差がある。長男世代のママ友の中でこんな

          令和の駐妻に、昭和妻開眼