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つま先からかかと

懐にはいるのが上手な人がいる。予期せず、入り込む瞬間に立ち会うと、人懐っこい人って可愛らしいなと思う。でも、私は特別にそうなりたいとは思わない。懐かれる側にまわりたくなる。

他人との距離感をよくはかり、厚さはさまざまあるけれど、壁を作る人。その壁にドアをつくり、ドアノブもつけ、踏み込むことができる人がいる。私は踏み込むのが苦手なようだ。

一緒に並んで歩いていたはずなのに、いつのまにか相手が一歩先を歩いている。真後ろから、自分の存在をアピールしたいのに、まるで透明人間かのようで振り返ってくれない。欲を言えば、知りたくて知って欲しくて、好かれたくて。でも、もう一度並びたくて追いつこうとすると、毎回相手のかかとを踏んでしまう。踏み込むってそういうことじゃない。

昨日はそんな日で、下を向くと私のつま先は申し訳なさそうに飛び出ていたから、深い海のような色で染めてあげた。そうやって毎日自分の機嫌をとっている。

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