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『私はスカーレット』とアメリカ史考察

林真理子が作家を目指すきっかけとなった『風と共に去りぬ』。
それを林さん自身がスカーレットを語り手にして大胆に私小説風に書き直した小説が、面白くてハマっています。
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時は南北戦争時代。ジョージア州の裕福な大農園で育ったスカーレットは、美貌と激しい気性で知られ、近所の若い男はみんな彼女に夢中。「他の女に嫌われても構わない。みんな私に嫉妬してるのよ。だって私、誰よりもきれいだもの。男に口説かれるって最高!」という独白が小説中に何度も入りますが、ここまで来ると"嫌味な人"を通り越して清々しく、彼女が好きになってきました。
レットバトラーもまた、他者から好かれることを全く気にしていないのに、強烈な魅力と存在感を放っています。お金持ちの集まるチャリティ・パーティで、
「南部には軍艦も、製鉄所も大砲工場もない。あるのは綿花と奴隷と傲慢さだけ。イギリスやフランスが南部に援軍を送ってくれるですって?彼らが奴隷制を支持するはずありませんよ。この戦争は、我々南部が負けますね」
と鼻で笑ってしまい、南部の人々から激しく非難されます。それを聞いたスカーレットは
「バトラーが言うことは本当だわ。だって私達、生活必需品さえ足りてないじゃない?みんな、南部は必ず勝つ!と理想だけ語るけど、なぜ誰も現実を見ないの?」と疑問を感じます。我がままでやりたい放題のお嬢様のスカーレットも、空気を読んで、言いたいことを言えない時もある-その壁を、バトラーはあっさり越えて堂々としているので、彼女はバトラーに惹かれていくのです。

歴史的な学びとしては、今回初めてスカーレットの実家がアイルランド移民だと知りました。そう言えばO'Haraの名前がアイルランド的なので早く気付くべきでした。
※ゲール由来の家名には O’ や Mcで始まるものが多い。これらは○○の孫、子孫を示す接頭語である。(Wikipedia[アイルランド人]より)

南部の裕福な綿花の大農場主達は、頻繁にパーティーを繰り返し、かなり贅沢な暮らしをしています。
「アイルランドに住んでいた時に貧しくて苦労したので、その反動では?」
とスカーレット自身が憶測しますが、これは結構正しいのではないかと思います。

また「つい最近までテキサスはメキシコの領土だったのよね。男ってそんなに戦争が好きなの?バカみたい!」のスカーレットの台詞も。アメリカ・メキシコ戦争(1846-48)と南北戦争(1861-65)まで間がないことに、改めて驚きます。

「こう思うのは不謹慎だけど、戦争のお蔭で良いこともあった。田舎のタラから、大都会のアトランタにやってきて、自分の知らない新しい世界に出会えた。あのままタラで一生を過ごしていたかもと思うとゾッとする。」
…そんな、新しい世界との出会いを恐れず、変化を受け入れるスカーレットのたくましさも、また好感が持てると思いました。
現在2巻まで読んだので、3巻以降も期待しています。

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