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苦手な色に秘めた思い

 誰にでも、好きな色があれば、当然苦手な色もありますよね。私にとって、「黒」は最も苦手とする色です。

 物心ついた時から好きなことといえば絵を描く事でした。中学で美術部に在籍していた頃から今日まで、大小様々の大きさのボードやカンバスに向かって色と向き合って過ごす間に、いつのまにか我が飼い猫を愛でるが如く色への愛着を抱いている自分に気づかされます。

 それなのに、どうしても自然と距離を置いてしまいたくなる黒の存在に、やれどうしたものか。黒よスマン。悪気は決してないのだが。と小さく心で詫びる我、といった具合です。

 黒い色の服を身につけている人や、黒い車を見かけるたびに「世界はこんなに色で溢れかえっているのに、なぜ黒を選んだのだろう」という、全く余計なお世話な疑問が頭をよぎります。しかし今回苦手な色について書こうと決めた時「なぜ私は黒が苦手なんだろう」と考えたことがなかったことに初めて気がつきました。

 そうだ、どうして私はこんなに黒を避けちゃうのだろう。嫌いなわけではないぞ。ひょっとして私は黒が怖いのか?いや、そんなことはない。うーむ。

 黒には、「威厳」や「落ち着き」といった、強さや荘厳で静かな印象を周りに与えると言われています。大きな舞台で発表する時に緊張を和らげてくれたり、周りの人に心を探られない、といった一面があります。

 反面、黒には「恐怖」「自信のなさ」と言ったメッセージも含まれるとも言われます。ホラー映画のように恐怖や喪失感を表現するポスターには迷わず黒が多用されている、という点は我々共通の認識と言えるかもしれません。そこでふと、大学で色彩学と児童心理の関係について学んだ時のことを思い出し、もう一度読み直してみました。

 私は幼少時に父を病気で亡くしました。当時はどういうわけか、相次いで親類が亡くなるという出来事があり、数年にわたり死や儀式に向き合った時期でもありました。当時の子供の自分の心には、死とは恐ろしく、永遠の真っ暗闇に感じ、深く暗い夢に何度もうなされる事が続きました。

 突然に襲われたその不可解で抜け道のない迷い道に放り出された時の衝撃を、もしかすると幼い心の奥深くに閉じ込めたまま今日まで来たのかもしれないな。と、考えた時ようやく、私はその「なぜ」を理解し受け入れられたのでしょう。黒い絵の具を解いた瓶の中に、透明な水が勢いよく加えられて、みるみる螺旋を描いて色が薄まっていくイメージが心にぱーっと広がりました。

 思わず避けてしまいたくなるほど苦手とする色を心に抱えている人は、実は少なくありません。その影響で心身に不調を覚えることもあります。向き合った時に初めて、自分でも気がつかずに抱えていた悩みや恐れ・不安に気づいてあげられることもあるんですね。自分が自分らしく生きていくために、色はいつも私たちを優しく、時には元気よくサポートしてくれているのだと思います。

 今、黒について想いを馳せて見ました。なんだか久しぶりに黒に対する優しい感情を思い出した気分です。黒さん、素っ気なくしてごめん。また今日からどうぞよろしく。

☆あなたがあなたらしく 笑顔で過ごせますように☆

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今日の日めくりカレンダーの言葉
あしたは 明日の風が吹く
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