イノシシ
5月連休のこと。
家の周辺がひどく臭っていた。
魚が腐ったときのような、でもそれよりもずっとずっと強烈な臭い。
洗濯ものを干している二階のベランダから、
隣接している荒れた畑(数年前に持ち主さんが病死したらしい)を
のぞいたら、たまたま【臭いのもと】を発見した。
山ぎわに横たわっているイノシシらしきもの。ハエがたかっていた。
「山から滑落し、運悪く畑の境界線として置いてあるブロックに当たったんじゃないか」と、夫は言った。
その日から私のイノシシウォッチングが始まった。
と言っても、近づいて見る勇気はなく、
洗濯ものを干すときに、二階のベランダからチラリと見るだけ。
イノシシの身体らしきものは、すぐに骨と化した。
そして骨の位置は一日ですぐに変わるのだった。
頭蓋骨は最初わからなかったのに、ある日現れて、
二日くらいしたら消えた。
発見してひと月も経たないうちに、
その場所は落ち葉と土だけになった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?