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「ゲンロン」と「ゲンロン友の会」と「ゲンロン総会」と...

 2024年3月30日、ゲンロン友の会総会の「ゲンロンシラスコミュニティマーケット」にブース出展し、急拵えで作った同人誌を出品してきた。普通だったら買い手などつかないであろう、ディープでコアなモンゴル文字文献に関わる50ページの冊子が30部近くも売れた。
 そもそも、このコミュニティマーケットがなければ、自分で積極的に発表しようとは考えていなかったモンゴルの転生活仏に関する文章を、同人誌の形であれ残る「物」として作ることはなかったと思う。
「ゲンロン」を含む言葉を並べただけのようなタイトルを付けたが、それぞれに意味がある。ゲンロン総会を終えた今、改めて雑駁ながら書いてみたい。

「ゲンロン」とは

 ゲンロンはコアの部分では、「株式会社ゲンロン」という哲学者東浩紀氏が創業した出版社のことを指している。ただ、「出版社」にとどまらないマルチプラットフォーム展開をしているところがユニークな特徴の一つである。

 具体的に言えば、今や大手に限らず多くの出版社が手掛けているWebによる記事の配信は以前から行っており、先日、リニューアルも行われて非常に見やすくなった。

 また、ゲンロンカフェというイベントスペースを運営し、トーク・イベントのWeb配信も行っている。

 Web配信を、ゲンロンカフェのトーク・イベント配信から更に発展させたものが、シラスという動画配信プラットフォームである。このシラスにはわたしもチャンネル開設をしており、動画配信をしている。
 ゲンロンのイベントのライブ配信に限定せずに、外部に対して開いたのがシラスであると言える。ただし、Youtubeのように無条件に開いていないのが特徴で、チャンネル開設に関しては審査があり、そこでOKがでないとチャンネル開設に至らない。

 Webゲンロンとシラスに共通しているのが、ゲンロン関係の告知などを除いて、基本的に広告を排していることである。広告収入により、読者や視聴者に対して「無料」でサービスを提供するのではない、つまり広告収入に頼らないビジネスモデルを確立しているところが大きな特徴となっている。
 シラスも、配信者に必ず還元される形をとっており、仮に番組1本でも売れた分に対して一定割合で配信者にも配分される。この点がYoutubeなどと大きく違っている点である。
 これは読者や視聴者にとってもメリットがある。必要がない、どころか、見たいコンテンツを見るのに当たって、邪魔でしかない広告が排除できることだ。
 特にスマホで記事を見る時に、ポップアップや埋込広告でほぼ全画面が満たされて、みたい記事が1行も見えない、見ようと思ったら更に別の広告の視聴を強制されるなどということばかりだが、ゲンロンやシラスに関しては、広告による邪魔が入らない。
 通常の無課金ネットユーザーは、コンテンツ提供側にとっては顧客ではない。顧客はあくまで広告主であるという関係は、ユーザーにとってメリットもあるが、デメリットのほうが大きいのではないか、と思える。
 一般的な週刊誌や月刊誌などの雑誌メディアでも広告収入に占める割合は大きいが、ゲンロンのコアである出版事業に関しても、ユーザーである読者が負担する売上で運営を回すビジネスモデルを作っている。「ゲンロン」にも広告はあるが、誌面に対する比率は極めて低い。

「ゲンロン友の会」とは

 ゲンロンは法人格が株式会社であり、つまり営利事業を営んでいる。
 収益をどのように上げていくかは、法人それぞれいろんなビジネスモデルがあるが、ゲンロンの売上を支えているのは「友の会」の会費である。

 出版社はファブレスメーカーのようなものだと言える。物理的な書籍自体は印刷会社や製本会社が担っており、その商品開発を行うのが出版社だからだ。
 コンテンツは作家が編集者や出版社と協業で行うが、取材や原稿作成に始まり製本して商品として完成するまでは、すべて先行投資としてのお金が発生する。実際に商品が売れて、書店から取次へ、そして取次から出版社へ支払いされてようやく売上が上がることになる。
 ゲンロン友の会のビジネスモデルは、読者が友の会の会員として会費を支払うことで、ゲンロンに対して先に売上が計上される。そこがミソだ。
 会費を先払いした読者に対しては、雑誌「ゲンロン」の代金は会費で相殺されることになっており、その他、会期中に1冊の書籍の他、ゲンロンカフェやシラスでの優待サービスなどがあり、会員にならずに雑誌などを購入した時の金額以上のサービスが提供される事になっている。
 つまりゲンロン側は売上金のほうが時系列的に早く発生するメリットがあり、顧客側は時系列的に遅く提供されるサービスには金額的なメリットがある、といういわばWin-Winのビジネスモデルであると言える。
 ただ、どんなビジネスモデルでもメリットだけのものなどはない。ゲンロン友の会のビジネスモデルは、友の会の会員数が売上額を支えており、会員が納得するサービスを提供しなければならないという形で、サービスの質が担保されなければならないということになる。雑誌、書籍の質に加えて、トーク・イベントや配信の質も常に高いレベルが要求されることになり、当然ながら、売上が先に発生していることに胡座をかいていたら、良い循環は生まれない。
 このビジネスモデルで順風満帆だったとは言えないが、ゲンロングループ全体で見ても売上額が大きく伸び、社員、スタッフの数も増えていて、すなわちビジネスとして成長しているということは確実に言える。
 シラスという動画プラットフォームの開発も友の会の会費に負う部分が大きかったことは、東浩紀氏も様々なところで語っている。
 更に言えば、わたしがシラスでチャンネルを運営できているのも、ゲンロン友の会のビジネスモデルがあったからであろう。

「ゲンロン友の会総会」あるいは「ゲンロン総会」

 ゲンロンの事業を支えている友の会の会員に対する付加的なサービスとして年に1回行われているのが「ゲンロン友の会総会」または略して「ゲンロン総会」と呼ばれるイベントである。
 かつては複数のトーク・イベントなどがブッキングされたものだったが、昨年の総会からは「ゲンロンシラスコミュニティマーケット」と名付けられた、いわばコミケ的なイベントも行われるようになった。
 昨年同様、今年も五反田TOCビルで行われたのだが、ビルの建替えが決まっており、2回目の今回が既設TOCビルで行われる最後のイベントとなった。
 昨年の総会は、参加決定からイベント当日までの時間があまりにも短く、出展ブースにおいては、簡単なコピー誌しか商品がなく、Macを使ったモンゴル文字入力の実演を行った。今回は、かろうじて同人誌を作ることができた。

 上のXのポスト通り、何の捻りもない表紙であるが、モンゴル文字の勢いを出そうと思ってこの作りにした。
 内容に関しても急いで作った感は否めないが、今後も引き続き何らかの形で継続していこうと思っている。特に、既に開催日時と会場が決定している来年(すなわち次期)ゲンロン友の会総会を目標に完成度を高めたいと思っている。

「ゲンロン友の会」と共に

 わたしは以前このnoteに記事を書いたとおり、電気系エンジニアが本業である。モンゴルに関わることは本業としてできるようなものではない。基本的に趣味レベルに過ぎない。
 しかし、モンゴル文字での入力環境を自分のMacにインストールして、実際にモンゴル文字の文書を作成しても、特に形にして発表できる場はなかった。個人レベルで本を作ること自体は可能であったが、そうするまでのモチベーションは持てなかった。日々の生活に追われていれば、そのようなことは往々にしてあることだ。
 しかし、昨年の総会でブース出展し、11月にシラスにチャンネルを開設したことで、今まで趣味レベルでやってきたことを発表する場ができたと思っている。これも全て、ゲンロンがなければできなかったことである。
 だからこそ、自分自身の取り組みを世に出せる場としてシラスやゲンロン友の会があるということから、友の会にはプレミアム会員として登録している。友の会の会員になることはゲンロンの事業に「出資」するようなものであると考えている。特にプレミアム会員やアンリミテッド会員においてはその意味合いが大きい。
 出資者に対する配当の意味合いで、プレミアム会員やアンリミテッド会員向けのサービスもある。
 わたしは自分自身のゲンロンに対するコミットとしてプレミアム会員になっており、出資額以上のメリットを享受していると思っている。
 改めて、ゲンロン創業者の東浩紀氏、代表の上田洋子氏、シラス共同代表の桂大介氏、ゲンロンスタッフの皆さん、チャンネル視聴者の皆さん、関係する皆さんに感謝の意を表する次第である。

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