翼駿馬

遣唐使と入唐僧/モンゴル仏教と転生活仏/モンゴル語とモンゴル文字/Appleユーザー/…

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遣唐使と入唐僧/モンゴル仏教と転生活仏/モンゴル語とモンゴル文字/Appleユーザー/音楽/映画/アニメ/小説

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動画配信サービス「シラス」でのチャンネル開設のお知らせ

 株式会社ゲンロンが運営している「シラス」という有料動画配信サービスで、2023年11月1日よりチャンネル開設し動画配信をはじめました。 ホルダンモリの「モンゴルの野を駆ける――アジアを巡る歴史と文字」 わたしが開設したチャンネルでは、個人的に長年学んできたモンゴル語や、モンゴルの歴史、文化、仏教など、モンゴルに関連する話題をメインとして番組作りをしています。  また、モンゴルに関連する事項として、ロシアや中国、チベットや満洲など周辺地域に関することも話題として取り上げます

    • 「ゲンロン」と「ゲンロン友の会」と「ゲンロン総会」と...

      2024年3月30日、ゲンロン友の会総会の「ゲンロンシラスコミュニティマーケット」にブース出展し、急拵えで作った同人誌を出品してきた。普通だったら買い手などつかないであろう、ディープでコアなモンゴル文字文献に関わる50ページの冊子が30部近くも売れた。  そもそも、このコミュニティマーケットがなければ、自分で積極的に発表しようとは考えていなかったモンゴルの転生活仏に関する文章を、同人誌の形であれ残る「物」として作ることはなかったと思う。 「ゲンロン」を含む言葉を並べただけの

      • 生活の拠点を移すということ

         仕事の都合で、今住んでいる持ち家はそのままにして、生活拠点を移すことになった。この家に住んでから十数年、モンゴルから帰国してから二十数年、二年間ほど北関東にいた時以外は、基本的に地元に住んでいた。  物が増えすぎてしまい、もう引っ越しはしたくないということと、周囲に家がすくないところなので、好きな音楽を大きな音で聴いていても近所迷惑にならない。また山間なので冬は雪が多くて大変だが、暑がり汗かき体質のわたしにとって、真夏でも夜はほとんどエアコンをつけずに寝られる環境がとても合

        • 與那覇潤さんをゲストに、シラスで配信します!

           2024年1月8日(月・祝)17:00から、與那覇潤さんをゲストにお迎えして、シラスで配信を行います。題して「歴史学は『訂正しない力』でしかあり得ないのか?」  シラスの動画配信は、以前、わたしがnoteに記事を書いたとおり、哲学者の東浩紀さんが創業された株式会社ゲンロンが母体となって、独自開発されたプラットフォームによる動画配信サービスです。基本的に全ての配信は有料で、シラスの会員登録をすると、冒頭部分のみ無料でもご覧いただけます。ライブ配信終了後は、アーカイブ化され、6

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        動画配信サービス「シラス」でのチャンネル開設のお知らせ

          「訂正可能性の哲学」東浩紀著

           手元に常においておき、繰り返し読みたくなる本と出会うことは、とても嬉しいことだ。自分の知的好奇心を常に刺激し、考えること、考え続けることを促してくれる。そして、また別の本への興味も掻き立ててくれる。  東浩紀さんの「訂正可能性の哲学」(ゲンロン)はわたし自身が考えてきたこと、疑問に思ってきたことに対して、新たな道筋を付けてくれる極めて優れた本である。 「家族」の再定義「家族」の問題は、子供の頃から個人的な問題であり続けた。具体的に言えば、父親との関係である。それはわたしの

          「訂正可能性の哲学」東浩紀著

          「危機のいま古典をよむ」與那覇潤著

           2024年の幕開けにこんなことが起こると誰が予想し得ただろうか? 当然ながら、誰も未来の予測などできない。しかし、あいも変わらずネット上には、全てを見通していたかのような言説が氾濫し、危機感を煽る者や、人々の不安に付け込む者などが後を絶たない。  人間は簡単に冷静さを失ってしまう生き物である。そのことは、自分自身に対する戒めとしても、改めて考えておきたい。  そんな状況で読むのにふさわしい本が昨年の11月20日、而立書房から出版された。與那覇潤さんの「危機のいま古典をよむ」

          「危機のいま古典をよむ」與那覇潤著

          メメタァっていう、あのメガネのボーカルのバンド

           11月5日(日)「風のリズム」新潟Golden Pigsと、11月17日(金)新代田feverのワンマンと、2本のライブを11月中に観てきた。以前からCDやサブスクでよく聴いていたバンドで、ようやく生で体験することができた。  メメタァを知ったきっかけに関して、詳細は覚えていないのだが、おそらくはAnabantfullsという別のバンドがきっかけだったはずだ。色々検索して調べた結果、おそらくはメメフェス2022にAnabantfullsが出演するという告知のツイートをみた辺

          メメタァっていう、あのメガネのボーカルのバンド

          「知性は死なない 平成の鬱をこえて」與那覇潤著

          「知性は死なない」 これほど力強いメッセージに満ちたタイトルもないだろう。  歴史学者であり大学准教授であった與那覇潤さんは、まさに「知」そのものを仕事にする人であった。その時にメンタルを病んであらゆる知的活動ができなくなってしまい、休職ののちに退職するまでに至った。そういう辛い経験を乗り越えて書かれたのがこの本である。「知性は死なない」ことをこの本の存在自体が証明している。  平成という時代に、政治、社会、学問などの分野において、日本は退潮というしかない状況にあったことに

          「知性は死なない 平成の鬱をこえて」與那覇潤著

          與那覇潤著「平成史 昨日の世界のすべて」

          平成の始まり 平成元年3月に大学を卒業し、同年4月就職したわたしにとって、平成という時代は勤労者として生きてきた期間とほぼ重なる。平成の始まりは、 サラリーマン生活の始まりでもあった。  そこにしか受からなかった滑り止めの私立大学に入学し、とりあえず留年せずに4年で卒業し、特に希望したわけでもない会社に就職した。と、書くと無気力に生きてきたと思われるかもしれないし、傍から見たらそういう人間に見えていたかもしれない。しかし、「何者にもなれない」自分自身の能力と、それでも「何者か

          與那覇潤著「平成史 昨日の世界のすべて」

          「月のカッコウの伝記」

          モンゴルで入手した古本  私の手元に、「月のカッコウの伝記」というタイトルの古びた本がある。入手してから20年以上経過しており、更に出版されてからは今年でちょうど60年となる。 ウランバートル市レーニン通り5 モンゴル科学アカデミー出版局 1962年10月 3,000部印刷 価格10トゥグルグ40ムング 以上の情報が読み取れる。  激しいインフレで使われなくなった「ムング」というトゥグルグより下位の通貨単位が、まだ普通に通用していた時代のものである。  ちなみに、現在

          「月のカッコウの伝記」

          伝統的モンゴル文字

           モンゴルは分断国家 意外に知られていないことなのだが、モンゴルは民族分断国家である。一つは独立国として存在している「モンゴル国」で1992年以前はモンゴル人民共和国だった。モンゴル人居住エリアとしては概ね北半分の地域である。  もう一つは、中華人民共和国の内モンゴル自治区でモンゴル国の南側にある。  そのため、モンゴル語では一般的に「北モンゴル Ар Монгол」「南モンゴルӨвөр Монгол」という言い方を使っている。「内モンゴル」という言い方は中華人民共和国側から

          伝統的モンゴル文字

          遣唐使は物語の宝庫

          遣唐使船復元プロジェクト 先日、遣唐使船復元プロジェクトに関する記事がネット上にアップされた。  技術の進歩や研究の成果として、遣唐使船に関しても様々なことが解明されてきている。上にリンクを貼った記事によると、2021年2月下旬に20分の1の復元模型が完成するそうである。  遣唐使船そのものに関して言及することはないが、このnoteの駄文で遣唐使船に乗り唐に渡った僧侶に関して取り上げてきており、また今後も取り上げる予定である。 遣唐使船の航路 上のリンクの記事に、遣唐使船

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          大師になれなかった三蔵法師

           称号や諡号に縁がなかった円載に対して、唐で三蔵法師の称号を授けられた日本人僧侶がいた。三蔵法師というと、日本では西遊記の三蔵法師のことかと思われてしまうが、三蔵法師は称号で人名ではない。西遊記の三蔵法師は玄奘という名である。西遊記がいろんなかたちで日本で有名になったために、三蔵法師がほぼ固有名詞になってしまっている。  三蔵法師とは、仏教の経蔵・律蔵・論蔵の三蔵に精通した僧侶に与えられる称号で、玄奘のように訳経僧に対する尊称にもなっていた。  歴史的に見て、日本では三蔵

          大師になれなかった三蔵法師

          陰の物語と陽の物語

           円仁は唐から日本に帰国したあと、人々の期待を上回る能力を発揮して活躍し、歴史に名を残した  それに対して円載は、唐に二十年あまり滞在し、現地では皇帝の帰依を受けたり、文人たちと交流したりと、それはそれで活躍しつつ、日本に帰国できなかったために日本では現在に至るまで、ほぼ無名のままである。  更にいうと、円載は「破戒僧」のレッテルを貼られつづけ、悪評ばかりが残っていた歴史がある。  歴史は事実に基づいて語られなければならない、という謂わば「科学的」な視点が必要であるが、

          陰の物語と陽の物語

          大師になれなかった僧侶

           一般に、大師といえば弘法大師。言わずとしれた空海が、没後かなり経ってから与えられた称号である。しかし、個人的には慈覚大師円仁のほうを推している。円仁の業績が認められた結果、円仁没後に大師号を与えようということになり、実質的には最初に、名目的には円仁の師匠である最澄が伝教大師の称号を与えられたあとに慈覚大師の称号を与えられた。  円仁の業績に関しては、もっと評価されていいと思われる。が、個人的には高校では日本史を選択しなかったので、円仁の名を知ったのはかなり後のことであるの

          大師になれなかった僧侶