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日本サッカーの国内から突出した若手指導者が出て来ないのはなぜ?

日本帰国後、恒例のように地方へと出向かせてもらっています。お陰様でお付き合いいただき、毎年訪問してクリニックや講習会のお仕事をいただいております。

毎回地方へ行くと各地域の現状を見たり聞いたりするわけですが、今回は「これが日本サッカーの現場の現実か」と思わされるエピソードに出くわした。

おそらくこれは日本サッカーの進化を妨げる要因だと思ったのでここでシェアさせてもらいたいと思います。しかし、これはあくまで一個人の感想でもあることもご理解ください。

年配指導者が引退(しない)できない現場

このエピソードは、とある指導者から聞いたもので、その方は息子さんが小学生でサッカーをしています。

息子さんが通うサッカーチームに親として見学に行きました。そのチームは地区ではそこそこ強いらしく、指導者はかなり年配の方の様子。

しかしながら、その年配指導者の方の指導のクオリティはかなり低い様で、その方の息子さんが戦術的にイケテナイ指導をしていたそうです。それに加え、この暑い中で小学生低学年にボールを使わないインターバル走を実施させるというナンセンスなトレーニングをしているそうです。

もしかすると、サッカー少年の親御さんたちは似たような光景を皆さんの息子さんたちを通して経験されているのではないかと想像します。

このような指導は現代のサッカー指導理論からは、あり得ない方法論ですが、未だにそれが行われているのです。

この残念なお話から日本サッカー会の重大な問題を読み解くことができます。

一つは、小学生の指導に年配の指導者が当たっているという現実です。そしてもう一つは、それによって若い世代の指導者が育っていないということです。

私の視点では、小学生の指導現場は若い指導者が現場に立つチャンスとして経験するのが良いと思っています。育成年代は選手にとっても育成ですが、指導者を育成する場所でもあります。

新しい世代の指導者にどんどんチャンスを与え、年配指導者は現場を離れてマネジメント側に立った方が日本サッカーの未来は明るいと私は考えます。

そうしなければ、指導者の世代交代は起こらず、いつまでも古い理論を元に指導を行う人が現場に残ってしまい、現場のサッカーのアップデートはされないでしょう。

ヨーロッパでは、テクノロジーをスマートに使いこなし成果をあげている監督が出てきているのにです・・・これが、世界からより一層離されている現実です。

ここで一つ、指導者輸出大国のスペインの例を紹介します。スペインではユースの選手が小学生年代の監督を兼任することもあります。例えば、16時からトレーニングをして、その後に18:30からのU12のトレーニングを行うというタイムスケジュールを過ごしています。

そうすることで、高校生で指導者としてU12を率いて、その選手が大学生になればU15を率いるくらいの経験は持つことができる可能性もあります。

その後、23歳から30歳までの間にU15やU18のカテゴリで経験を積みプロレベルにジャンプアップできる人材がたくさん出てきます。

どうでしょうか?

私も偶然ながら、高校卒業後18歳でアルバイトコーチで指導者の道に入り、若くしてU13のチームを任せてもらえました。もちろん、当時の指導理論はめちゃくちゃではありましたが、指導者としての自覚、経験値を積ませてもらえたのは非常に大きいと感じています(当時のクラブの責任者は思い切ったことをしたものです)。

私は10年間バルセロナのサッカー現場にいますが、スペインから優秀な指導者が出てくるのはこの様な仕組みが働いているのが大きいと感じます。

実際、私の周りには25歳以下でも本当に優秀だと感じさせる指導者はたくさんいます。そして、30歳の時点で一定以上のカテゴリにいる人間は、10年以上の経験を積み、さらに篩にかけられた実力がある指導者であるのです。

この年代で成果をあげていなければ、オファーは来なくなり淘汰される現場でもあります。

この部分に関しては本当に声を大にして伝えたいことではあります。日本はもっと10代の指導者が経験を積める場所を整備すること、そして年配の方には後輩に場を譲りあとは後方で支える潔さを持って欲しいと思います。

譲る潔さ=自分は指導者として身の引き際だと察する

これに関しては、選手がチームや指導者を選べるようになることが必要です。要するに、指導者やチームも評価される環境が出来ること。そうなることで現場において評価されなくなった時の引き際を結果で察することができます。

リーグ戦の浸透や、移籍できる環境が整っていない地方ではこのような課題は露骨に現れています。

これは日本の中から「若手指導者が出てこない」要因の一つであり、現実です。指導者育成に携わる身としてはこの問題は放っておけない話題でもあるので、何らかのアクションを起こして解決したいと考えています。

10代からの指導者増えてくる日本になれば、日本のサッカーのレベルももっと高まってくるはずです。

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