見出し画像

【おすすめ児童書】ゲド戦記〜影との戦い

わたしの
高校時代の漢文の先生は
ちょっと変わったひとだった。

授業の最初のほうは
少し漢文の話をしているんだけど、
すぐ
脱線していき
なかなか漢文に戻ってこない。

そんなに話し上手なタイプではなくて
おもしろおかしく話すわけではない。
研究者タイプの
穏やかな語り口の先生が
漢文を掘り下げるうちに
どこかへ
脱線していく感じ。

当然
教科書の漢文は
やり残したままで
テストを迎えることになる。

生徒たちからは
授業しないくせにテストはする
と言われ、
大学受験を控えた生徒たちは
漢文の授業を
内職タイムとするようになった。


わたしは
この先生の漢文の授業が大好きだった。

教科書の漢文の話はちっともしてなかったけど、
漢文の世界が好きになった。

大学は文学のほうに進もうかな…
と思ったのも
この先生の影響だ。


そんな先生が
ある時の脱線話で
「この本は、とてもいい本だ」
と紹介していたのが
『ゲド戦記〜影との戦い』だ。

当時のわたしは
勧められてすぐ読んだのだが、
正直
良さがよく分からなかった。

なんで先生は
児童書を
高校生におすすめするの?

悪と戦う
よくある児童文学じゃないの?
なにがそんなに先生の心をとらえたの?

高校生のわたしには
あまりピンとこなかった。


が、
次第に歳を重ね
生きてきた時間が増え
経験も増える中で、
じわじわと
この本の良さが分かるようになった。

タイトル通り
主人公「ゲド」が「影」と戦う話なのだが、
あぁこれは
自分を探し
自分を受け入れていく
そんな人生の道のりを描いた話なのだと思った。

高校時代の
自分を探しながらすっかり迷子になっていたわたしは
眼の前のことしか見えなくて
わからなかったが、
なんと
心にしみじみと沁み入る話なんだろう…。

読み返すたびに、
ちっとも話聞かない
青春真っ只中の高校生たちに
この本をおすすめした
あの漢文の先生の
思いが伝わってくる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?