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BREIMEN - FICTION/NONFICTIONレポ(前編)

はじめに

BREIMENは、2022年7月20日にリリースした3rdアルバム『FICTION』を引っ提げて、9月に東京・大阪・名古屋でそのリリースワンマンツアーとして『NONFICTION』を行った。
また、ワンマンツアーに先駆けてドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY?』が東京で公開された。
この記事ではアルバムのリリースからツアーまで振り返ってみようと思う。まずは、その前編。

アルバム『FICTION』

『FICTION』は、高木祥太の当時の内面を綴った内省的な楽曲からなる作品なのだという。楽曲制作の動機となる実話があるという意味ではノン・フィクションとも言えるのだが、感情の描写は作り手自身が当事者であることを踏まえると、客観的な事実とは程遠く「作り話」になってしまう、それが"フィクション"というタイトルにした由来とのこと。

そうして出来上がった作品『FICTION』は約35分という長さでありながら、一枚を通して聴くと一本の長編映画を観たような感覚に陥る。収録されている楽曲の幅広さ、一曲一曲の懐の深さが、実際の時間以上の体験を与えてくれるからだろう。そして高木独特の歌詞の表現もそう感じさせる理由のひとつだ。メロディに乗せる音の響きを大切にしながら、そこに絶妙な言葉を当てていく作詞技術は、かなり高いレベルだと思う(個人的には、桑田佳祐レベルだと思っている)。

また、今回のアルバムは、サポートミュージシャンを入れず、クリックを使わず、実際の楽器の音のみで制作されたという、いわばBREIMEN100%・オーガニックアルバムともいえる。オーガニックとはいえ、やっていることは実験的であり複雑であり、これをライブでどう再現するのか、どう再構築していくのか非常に楽しみだった。フィクション(FICTION)が、ライブという紛れもない事実体験(NONFICTION)になる様を、現地で見届けたいと強く思った。

映画『DOCUMENTARY?』

旧体制無礼メンの結成からBREIMENの現在に至るまで、メンバーがそれぞれ思い入れのある場所で語っていくドキュメンタリー映画。ドキュメンタリーといっても、メンバーの主観的な語りで構成されていることや、タイトルに"?"が付いていることからも、これを純粋なノンフィクションと捉えるのは一種の危うさをもっていて、モキュメンタリーと考えておくのがよいのだろう。

BREIMENはまだまだ現役、過去語りをするには早いのではないかとも思ったのだが、これまで聞くことの出来なかった話がふんだんに盛り込まれており、まるで自分が"BREIMEN"とともに苦楽をともにしてきたような親近感を感じられる内容だった。この"親近感"こそ、今回の映画を作った動機になっていたのだと思う。(実際に、監督の2025氏も終演後トークで同様のことを言っていた。)

また最近は、「メンバーそれぞれが、名だたるアーティストのサポートとしても活躍する実力派」として紹介されることが多く、それはそれでプロモーションの一環として彼らも受け入れていると思うが、旧体制からの流れがあるからこそ今の音が奏でられているということを、いまのファンの我々の心の片隅に置いておいてほしいのかな、とも思った。

時に、芸術作品はアーティストの個性と切り離して評価すべきという考え方もあるが(筆者もわりとそのタイプで、アーティストの個人的なスキャンダルには一切興味はない)、同時代を共に歩んでいるからこその楽しみ方として、少しだけ感情移入して作品やライブを味わうのも一興(というか特権)だなと感じた。

振り返ってみて、ツアー前にこの映画を観たことはとても良かったと思っている。(後編に続く)