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2023/03/26 RRR観た!

やっと見た。何を見たかって、インド映画「RRR」を。見た。体験した。
ちょっとすごすぎる体験だったので、何から話せばいいのか分からない。

日本で公開される時にはもう話題を呼んでいた。観た人みな「とにかく凄いから観ろ」としか言わないので、早く観たいと思っていたら映画好きの友人が「マサラ上映に行かないか」と言う。

マサラ上映?

マサラ……?

マサラタウンは関係なく、聞けばタンバリンやマラカスなどの鳴り物や紙吹雪の使用がオッケーな“インド版応援上映”らしい。もちろん声援も可。
めちゃくちゃ楽しそう! コロナ禍が少しずつ収束に向かう中で、映画館やライブハウスのような場所で大声を出したいフラストレーションがギリギリまで抑えつけられていたのもあり、二つ返事で行くことにした。元々アイドルのライブに行くのが好きなので、ライブビューイングのように映画館でデカい音を立てて暴れること、そして同じく暴れている人間を見るのが好きなのだ。
ただ心配なのは私の膀胱だけだ。RRRは3時間ある。





以下、映画「RRR」についてのネタバレを含みます。




家にタンバリンもマラカスも無かったので手ぶらで劇場に向かうと、劇場の入り口でタンバリンを手渡された。

これで私もマサラの一員に……と思っていたら、隣に座っていた女性は配られたタンバリンだけでなく両腕に鈴、指輪にも鈴を付けておりものすごい気合の入り方だった。膝の上には紙吹雪でぱんぱんになった袋が置いてあった。マサラへの道のりは遠い。タンバリン一つで敵うものじゃないのだ。


上映開始。

RRRとは何なのか、その答えは「STORY」「FIRE」「WATER」という、この映画を構成する3つの「R」である。
開始10分ほどで、ウワッ攻めてんな〜!! と思った。舞台は1920年、大英帝国支配下にあるインド。RRRのはじめのR、「物語」は小さな部族の少女が大英帝国に攫われるシーンから始まる。英国軍はインド人の命の価値を銃弾1発にも満たないと言い、何の躊躇も無くインド人を殺す。現在の価値観からすれば完全にアウトな姿を、めちゃくちゃリアルに描いている。インドと英国だったから良かったものの、これが韓国と日本だったら最悪の場合戦争もありえるなと思った。

攫われた少女の兄、ビームは少女を救うためにデリーへ向かう。少女のいる英国軍総督の屋敷に忍び込むのだ。
イギリス軍では、来るビーム捕獲のための作戦が動いていた。イギリス軍警察のラーマはビーム捕獲に熱意を燃やす。
そんな2人は引き寄せられ、兄弟も同然の親友となる。しかしビームの悲願はラーマと共に果たせず、ラーマはビームを捕まえなければならない。引き裂かれる運命にある2人は、どんな選択を選ぶのか——という物語。

RRRを構成する3つのRのひとつは「物語」だった。では、残り2つの「炎」「水」は何かと問われればこの男たちこそが残りのRなのである。ジャングルに育ち川と共に行きたビームの「水」と、炎のような男のラーマの「炎」。メインビジュアルでも読み取ることができるが、この「炎」「水」を中心として、この2人は対になるようにキャラクターが作られている。ジャングルで生まれ育ち銃の使い方も女性の口説き方も知らないビームと、英語を話し銃の使い方も女性とのコミュニケーションの方法も知っているラーマ。彼らがいる境遇、もちろん立場も全く真逆だ。けれど彼らは親友として時間を過ごした。過ごしてしまった。

この映画の凄いところは緩急のつき方が緩急急急急緩急急急急!!みたいな感じてずっと急展開が続くところだ。彼らのキャラクターは対になっているが、この急展開に次ぐ急展開の二転三転の末、彼らの道が一つに重なっていく様は見ていて胸が熱くなる。

ビームとラーマ、どちらもめちゃくちゃ強い男なのだが彼らは敵対する運命。強い奴と強い奴、一緒に戦ったらめちゃくちゃ強いはずなのにどうしてこんな風になってしまうの……🥲 と思いながら前半を見ていた。どうしてこんな風になってしまうの、の矛先は全て列強の軍国主義が最悪すぎる! に帰結する。イギリスの人たち、これ観たらどんな気分になるんだろう。

クライマックス、敵対していた彼らは再び手を取って大勝負に出る。この映画はずっと映像が美しくカメラワークも素晴らしいのだけど、とにかく戦闘シーンが激しく美しく見応えがあってとても良い。イギリス政府の思考にすっかり慣れたラーマが、最後には髪を振り乱し炎を纏った矢で戦う様は「回帰」の文脈をビシバシ感じることができて本当に良かった。彼はずっと祖国インドのため、そして故郷で結んだ約束のために研鑽を積んでいたのだが、まるで神のようないでたちで帰ってきたラーマを見た故郷の人々はどう思ったのだろう。これが彼のあるべき姿なんだろうな、と思った。

映画の感想はとりあえずこんな感じで、ここからは「マサラ上映」についてのお話。

アカデミー賞音楽賞も受賞した今作品、インド映画なのでそりゃそうなんだけどとにかくめちゃくちゃ歌が多い! 私はミュージカル映画が好きなので、歌の多い映画を観るとワクワクする。ワクワクしながら歌唱パートを聴いていると、隣の女性が一緒に歌っていることに気づいた。

ええ!?
そういうのもアリなんすか!?
アリらしい。だってマサラだから。いやそれにしたって歌詞は日本語でも英語でもない、ヒンディー語なのだ。それを完璧に歌っている。多分座っているだけで踊ろうと思えば完璧に踊れるはずだ、この人。
まあ私も……劇場版少女☆歌劇レヴュースタァライトの応援上映があったら歌ってしまうかも、しれないな、いや歌うか? ……歌う人は歌うか。これは作品の問題かも。「ムーンウォーカー」だったら歌うな。今更ムーンウォーカーの応援上映があったら配給会社の頭が狂ったとしか思えないけど……。

それだけではない。女性客、あまりにも応援上映に慣れすぎ。ラーマやビームが登場した時や活躍した時には「ラーマ〜!!」「ビーム〜!!」「かっこいい〜!!」「えらいね〜!!」「おめでと〜!!」と即座に声が入る。慣れすぎ! 私は初見なので叫ぶことはできなかったが、ラーマの瞳がドアップになった瞬間に隣の女性が「睫毛!!!!」と叫んだのがちょっと面白すぎた。確かにラーマのまつげはふっさふさのバッサバサだった。
でも、確かに応援上映は女性向けコンテンツに多いイメージがある。私が最後に行った応援上映は確かおっさんずラブの劇場版で、春田が知らない男とベッドで寝ているのを牧に目撃されたシーンで「何やってんだ!!!!」と叫んだ記憶がある。それ以外は記憶がない。
まあ何叫んだっていいよな、だってマサラなんだから。

そして何よりすごいのが紙吹雪だ。紙吹雪、めちゃくちゃ舞う。みんなどこから用意してんだと思ったら配っていたらしい。隣の人はある程度自前で用意していたみたいだけど。
「え!?今!?」というタイミングで紙吹雪が舞う。めちゃくちゃ人(しかも味方側)が死んでるのに紙吹雪が舞う。割とショックな場面でも舞う。ウソ今紙吹雪ポイントですか!? ってところで舞うから、マサラはすごいぜ……と思いながら舞う紙吹雪を眺めていた。

終演後、シアターの照明が点いた瞬間に笑ってしまった。

え!? 祭り!?
紙吹雪めっちゃ舞ってんな〜と思っていたものの、まさか床が見えなくなるまで舞っていたとは。びっくりした。こういうアートか?
そのあとは観客みんなで紙吹雪を掃除した。面白かった。いやそりゃスタッフさんにだけ掃除を任せるわけにはいかないよな。せっかくなので隣の女性に「だいたいどのくらい見られてるんですか?」と話しかけてみると、「12回、13回目を超えたあたりから数えなくなりました」と言っており、そりゃ歌も覚えるわけだと納得した。彼女は語感で覚えてますと言っていて、幼い頃にマイケルジャクソンのスリラーに登場する「week end」を「ミッケ」と語感のみで歌っていたのを思い出した。似たような感じなのかな。
13回ってすごいな。私は鬼滅の刃無限列車編を10回見たけど、10回で限界だった。10回目で、もうこれ以上は楽しいエンタメとして享受できなくなる……! と己の限界を悟ったのだ。そのボーダーラインが遥か遠くにあるのだろう。

とにかく全てが異様な体験だった。映画そのものも凄く良かったし、マサラ上映という新しい映画体験も良かった。日本人、まだこんなアツい心があったんだ。
また行きたいな……。次は私も紙吹雪を散らせたいな。まだナートゥは踊れそうにないけど。

以上です。もっと書きたいことがあるけどとりあえずは寝たい。インド映画、めちゃくちゃ怒涛すぎて脳が疲れてしまう。

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