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作品であり素材でもあり。

先日、加入する美術団体の方で「販売」という話があり。
工芸の世界で「販売」と言うと、展覧会ベースのものなのか、そこそこのものなのか、小物や完全にカジュアルなものなのか、はたまたお茶道具系なのか…等々となるのですが、絵画や書道まで含めた幅広い美術団体でそういう話が出ると、「いや我々はどの程度のものを?」と思い悩んでしまいます。
私は自分のお店の方では、いや本音を申しますと「着物で売れたらとっても嬉しい」などと思いながら、着物を掲載すらしていないという状態で、すっかり小物ばかり。

これは帯と共布。

とはいえ小物の材料は、着尺の両端だとか、経糸が同じで試し織をした緯糸が違う部分とか、出展用に仕立てた仮絵羽の余り布とかを使っていますので、作品と(ほぼ)同じ布と言えば同じ布。
でも「美術」と言われてしまうと、その余り布を着尺の幅のまま「掛け物です」「テーブルセンターです」あるいは「古帛紗です」くらいまでは許されるような気がするのですが、「手提げです」「がま口です」まで行くと許されないような気がして。

これは着尺と共布。ローカルとは言え受賞作。

でも、基本、他の工芸ジャンルの人でもそんなことができるケースって、あまりないんですよね。
(人の作った竹細工に漆を塗ることもできるし、鋳物に彫金したりもできますけども…)
私たち布の人間が作っているのは、作品でもありながら、素材でもあり。
作品です、と言って銘を付けて展覧会に出して、入選したり賞までいただいたりしたって、「これを洋装にリフォームしたかったの!」とか「パッチワークに使いたくて!」と思ってリメイクされることを否めない訳で。
それが嫌だと言うものではないのですが、それはそれで、布と言うものの特性なんだよなぁ…と思った次第です。

これは着尺と共経、緯糸は苧麻。


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