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私を見つけだしてくれた人

13年前。私は完全に依存をしていた当時の恋人と別れて憔悴しきっていた。そして会える筈も無いのに彼女と同じ空気を吸いたくて大阪に行ったりもした。

その頃mixiで繋がっていた大阪の女性がいた。実際は会ったこともなく顔も知らなかったからプロフィール上で女性となっていただけど、その頃のmixiってそんなものだった。

mixiでは詳しいことは書かず、毎日日記でただ苦しさを吐き出していた。そしてそれとなく大阪に行くとも書いた。そうしたら大阪に行こうとしていた前日だったか、そのマイミクさんからメッセージが来ていた。

“独りでいるのが苦しかったら会うで”

大阪に行った私は何をする予定も無かったから、なんとなく、ほんとになんとなく彼女と会うとこにした。

今だったら、なんだかんだいって知らない女性が会ってくれるというなら、それなりに期待(?)もするんだろうが、憔悴しきっていたその時は本当に何も考えず誘われるがままに彼女に逢いに行った。

待ち合わせ場所はアメリカ村の三角公園。私は約束の時間より少し早く着いて、階段に腰を下ろし煙草をふかし呆けていた。しばらくすると、目の前に少年の様な小柄で華奢な女性が立ち、座っている私を見下ろして言った。

“キラか?”

彼女は私のことをキラと呼んでいた。それは単にその頃の私のハンドルネームが記号だけのものできらきらしているように見えたから、と彼女は言っていた。

お互いの写真を交換するわけでなく、電話すらしなかったのに。休みだったあの日の三角公園は人でいっぱいだったのに、彼女は私が分かったらしい。

“キラは黒い服着てると思ててん笑”なんて言ってた。

それが彼女との出会い。2年くらいは連絡し合ってた。恋人でも友達でもなかった。でも、お互いがお互いをとても大切に想っていた。どちらかが辛い時には新幹線に乗って逢いに行った。新幹線に乗ってからメールして、”なぁ、今日暇?暇やったら飲みに行こうや”なんて、お互いやってた。東京大阪だったから、そんなには会えなかったけど、彼女はずっと私の傍にいてくれた。

彼女もメンタルに不調を抱えていた。閉所恐怖症でフリスクの箱にいつもデパスを沢山入れて、ラムネの様に食べていた。

でも彼女は誰よりも強かった。いや、ほんとは苦しかったのは知っている。一緒に酒を飲みながら笑ってODで確実に死ねる方法とか話していた。恒常的に彼氏に暴力ふるわれている話もしていた。でもそれでも彼女は病も境遇も全て受け入れて毅然としていた。私も彼女といる時はしっかりとしていようとしていた。そう、彼女といれば何も怖くなかった。

だから、今、私は思い出す。私は13年前に三角公園で見つけてもらった人間。未熟でどうしようも無かった私があの時だけは自分の足で立っていられた。

彼女の名前は”はぴ”と言った。

恋人でも友達でもない、これ以上ない大切な人。彼女はその後幸せな結婚をしてお子さんもいる。

私はもうはぴには会えないけれど、あの時彼女に見つけてもらったから今の私があるとこを知っている。

もう絶対そんなことは無いんだけれど、もし、はぴやはぴのお子さんに困ったことがあれば、何か出来るようしっかり生きようと思う。

あの記憶を取り出しては、俺はなんとかなる、って思ってる。

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