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#1 熱い気持ち

年の瀬が近づいたある日曜日の夕暮れ
安間と淀屋橋の居酒屋で酒を飲みました。

共に会社を始めたふたりですが
スタッフも50人規模になり
こうして二人きりで飲むのも久しぶりでした。

昨年の業績のこと、新事業のこと
これからのIT業界のこと。
今のルート・シーを巡る状況を
一通り報告し合い、落ち着いたころ
ふと、こんな質問をしてみました。

「ねぇ、学生時代に会社始めた頃の
 熱い気持ちって覚えてる?」

安間は「急になんやねん?」
というような目で僕を見た後
運ばれてきた岩ガキに狙いを定め
殻ごと口に運びました。
ズルズル・・・。
真っ白でプルプルとした
その大きな身を口に流し込み
「うまい」とつぶやいた後
こう言いました。

「俺たち学生の時
 『自分は何ができるんやろ?』
 っていう単純な自問自答があって
 社会に挑戦したいってのがあったやん?
 で、無茶やけど、何か一緒にやろう。
 って言ってたやん?辻は覚えてる?」

僕をみて、うなずくのを確認すると
静かに2つ目の岩ガキを手にとり
そして、ズルズル・・・と
同じように口に流し込み、こう続けました。

「じゃあ、やるしかないやん。って
 腹くくった感じの気持ち、覚えてるで。」

「熱いの?それって?」

「ん?」

「その気持ち、ほんまに熱いもんなん?」

淡々とした安間の口ぶりに
日本酒で少し酔っていた僕は
なんとなく寂しい気持ちになったのです。

すると、安間は真っすぐに
僕を見て言いました。

「十分、熱いやん。腹くくってんねんで!」

<腹くくってんねんで>

確かにそうでした。
安間の強い口調に、安心したと同時に
大きな宿題を抱え込んだ気分になりました。

あの時に腹をくくった安間と僕。

ではこれまでに一体、何ができたのだろう。

原点に戻って、もう一度考えないと
いけないことがあるのではないのか。

僕たちの個性とは。
僕たちができていないこととは。
僕たちは社会や人に何を提供できるのか。
何をすれば、人は喜んでくれるのか。
どうすれば、人は幸せと感じるのか。
僕たちが挑戦しなければいけないこととは。

ルート・シーはまだまだ未熟な会社で
更に高みを目指したいと思っています。

その上で、まずは、長いようで短かった
今までをきちんと振り返り
その時々に感じ、考え、悩み、決断したことを
少しずつですが、綴ってみようと思います。

書くことは考えること。
結果、その向こうに答えがあれば幸いです。

スペクタクルな展開やドラマティックなお話は
まったくありませんが、お時間よろしければ
お付き合いください。

会社のメールマガジンで掲載していた
起業記をリメイクし、公開しています。

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