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岡大流伝説④-将来の指導者-

~昭和五十六年夏 部内紅白戦終了後~
ツレ:しかし、強くなったなあ。
オレ:そうだな。まるで「蛇に睨まれた蛙」だったからな。教育学部の先輩としてあれはどうなんかなあ、とは思ったけれど。
ツレ:そういうなって、前はもっとひょろっとしてて全然相手にならなかったんだ。でも、今日は全然違ったよ。間合いが詰められなくて、詰めようとした瞬間、上段追い突きをくらってしまった。
オレ:全部それじゃん。むしろ、「ロックオンされた戦闘機」だな。アレは正面から行っても、ムリだよ。横から崩さなきゃ。オマエの運動神経なら十分崩せたはず。
ツレ:それなんだ。以前とは「圧」みたいなのが全然違うんだ。それにアイツの型みたいなのができてきてて、そこにハマると自分からヤラレに行っている感じになるんだ。
オレ:うーん。わからなくはないな。最近はオレでも攻めあぐねるからな。上段追い突きしかないとわかっているのに、不用意に間合いを詰めに行ってまともにそれをくらうんだろ…。うん?それって、オレには「圧」が足りないってこと?
ツレ:ありていに言えば、そういうことになるかな。
オレ:言ってくれるなあ。でもまあ、岡大流とはそういうもんだ。「個性」が原点だからな。
ツレ:じゃあ、アイツの個性は「上段追い突き」ってことだな。ヘンだな。
オレ:でも、そういうことだろう。 もちろん、「空手的には」がつくけど。でも、「上段追突き」って、フルコンタクトにはないから、フルコンタクト相手にも「圧」が発揮できるかもしれん。それはそれですげえな。
ツレ:じゃあ、オレらよりもアイツの方が「空手の神髄」みたいなのに近づいているのか?
オレ:それは言えてるかも。いいんじゃない。オレらはもう終わりだし。
ツレ:だな。あとは、後輩に託すとするか。まさに後世おそるべしだ。
オレ:オマエの場合、単なる練習不足じゃない?

この後、アイツと呼ばれる選手は31期主将となり、その後、監督になる。短くない期間、岡大空手道部を中心となって支えた〇〇前監督をモデルにしている。自分自身は、彼が主将として、監督として、どうだったのかを全く知らない。実際に知っているのは、3年生の夏までである。だから、彼を称えるとしても、このダイアログのように、彼が3年のころどうだったかを、「オレ」というフィルターを通して記録するほかなかったのだ。
ちなみに、「ツレ」は自分以外の30期全員を1人にしたキャラクター。今回は、△△君が中心。「オレ」は、自分自身を美化したキャラ。いずれも事実を基にしてはいるが、ダイアログ自体は全くのフィクション。現在の自分が想像し、創造したもの。

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