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小説 創世記 13章

13章

飢饉を乗り越えた村はどんどん豊かになった。
家畜も増え、一雄もイブキもそれぞれ牧場を持つようになった。
その牧場はどんどん大きくなっていった。

村に子どもが増えていった。
家族も大きくなっていき、村を広げなければいけないということになった。

そこで一雄はイブキに言った。
「ここで一度、僕ら、分かれていこう。
 村を広げるのに、君の牧場をそこに移動させてくれないか?
 みんながそこをもとに生活を広げていけるように。
 ノアがあの時やったように。
 川の近くのあの土地はすごく良い土地だから、君の家畜たちにも良いだろう。
 離れるのは辛いけど、寂しいけど、どうか行ってくれないかい?」
イブキはにっこり笑って答えた。
「ちょうど昨日、そうしようと思ってたんだ」
二人は手をしっかり握り合った。

こうして一度、別々に行くこととなった。

村の若い家族を引き連れて、家畜たちも引き連れて、
イブキは旅立っていった。

彼らは数日かけて広い平地に移動した。
そこは広く、川の近くの青々と草が生えている豊かな土地だった。

その近くにはカイが住んだ村があった。
その村は蘇土村(そどむら)と言い、イブキはそこを吾村(ごむら)と名付けた。

一雄はイブキの行った方角をよく眺めた。
「心配しなくてもきっと大丈夫よ」とヒメはよく励ました。
「わかっているよ」と一雄は微笑んだ。

そのとき、声がした。
「目を上げよ」

はっとして目を上げたときに、
自分が少し下を向いていたことに気づいた。

「見渡してみよ」

目の前には広い世界が広がっていた。
そこからはいろんな村や海が見えた。

「わたしは、今おまえが見ている地をすべて
 おまえのものとする」

その言葉の実感はすぐには湧いてこなかった。
しかし神は続けて言った。
「立って、この地を歩き回りなさい」

そこで一雄は、旅に出ることにした。
とにかく歩き回ることにした。
結婚式の時のノアの祈りを思い出した。
『地のすべての人々は、あなたによって祝福される』
僕がいくことで、そこが祝福されれば、、、

その旅をする時の拠点として、
村の南のところにも一つ牧場を作った。
そしてそこに住むことにした。

この語られた記念として石を積み上げて碑をを建てた。

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