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小説 詩篇 11篇

11

そうだ、祈ろう。

実家での朝。
ずいぶんと早く目が覚めてしまった。

昨日は最悪の気分で布団に入った。
ずっとモヤモヤ、イライラしていた。
そのまんまの気分で起きた。
どんな夢かは覚えていないが、随分と脳を使ったようだった。

そうだ、外に行こう。
歩きながら祈ろう。

スマホの画面に聖書アプリからの通知。
『鳥のように山に逃れよ』
少し気持ちが軽くなった。

詩篇の11を読みながら家の近所を歩いた。
まだ朝日だ。薄暗い。

『わたしは主に依り頼む。
 なにゆえ、あなたがたはわたしに向かって言うのか』

歩きながらスマホで読む。
弟の顔が浮かぶ。

『見よ、悪しき者は暗闇で、
 弓を張り、矢をつがえ、心の直ぐな者を射抜こうとしている』

公園に入っていった。
昔、弟とよく遊んだ場所だ。
何が弟を苛立たせているんだろう。
傷ついているんだろうか。
僕の存在は弟にどんな影響を与えたんだろう。
僕は弟に何をしてやれるんだろう。

『主は聖なる宮におり、
 主の王座は天にある』
そうか、と空を見上げた。
知らないうちに明るくなっている。青い。

『その目は見通す。
 主は正しい者と悪しき者を調べる』

滑り台の上で、静かに祈った。
「神様、調べてください。僕らの心を。
 そして、教えてください。
 僕にできることを」

『主は悪者どもの上に火と硫黄とを降らせる』
最後のところにそうあって、ゾッとした。
火山、、、?
どうか、そうはならないように。

少し前のキャンプを思い出した。
でも僕も、あの時に神様が出会ってくれたんだよな。きっと。
それより前は、弟とは違うけど、もっと世界が暗かった気がする。
もっとウジウジ、考え込んでいた気がする。
あの時僕も、火と硫黄の中にいたのかもしれない。

そうか、そこを通って綺麗になるのか。

フッと楽になった。
家に帰ることにした。

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