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小説箴言 2章

2章
僕(悟)の心は叫び続ける。
それは昨日読み漁ったあの巻物の中の知恵だ。

僕はそれに耳を傾けることにした。
受け入れることにした。
まるで心の中に他の誰かがいるみたいだ。

目の前では、警察が不良たちの首に手を置き、不良たちは不満そうにパトカーに乗せられていく。
不安でいっぱいだった僕の心は次第に落ち着いていった。
「正しさとはなんだろう。この恐れはなんだろう」
僕は考え始めた。
この世界のことを、善悪のことを。

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警察に運ばれていく中で、俺(龍)はこれまでのことを考える。
心の中は不安でぐちゃぐちゃだ。
普段強がって見せても、いざこうなると弱い。

たくさん嘘をついた。
わからないことをわかるかのように、見栄をたくさんはった。
不良の世界っていうのはそういうもんだ。
それが楽しいと思っていた。

誰も信用できない、真面目に丁寧にやることから逃げてきたやつの集まりだ。
自分のことは自分で守らなければいけない。
神様もこんなやつのことは見放すだろう。

その後俺は起訴され、少年院に入ることになった。
じいちゃんの涙を見て、俺も涙を流した。
振り返ると真っ暗な道があった。

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そのまま街を歩いた。
クリスマスが近いからか、ハロウィンがあったからか、
道路に商売人がたくさん出ていた。
ケーキなどを売っている。

なにか不意に虚しさが襲ってきた。
今ここにいることになんの意味があるのか。
風が吹いて寂しい気持ちになった。

すると、巻物にこんな一節があったことを思い出した。
「働く者はその労することにより、なんの益を得るか。
 わたしは神が人の子らに与えて、ほねおらせられる仕事を見た。
 神のなされることは皆その時にかなって美しい」

そうか美しいのか。
夕日が眩しかった。
家に帰ろうと思った。



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