見出し画像

小説 創世記 11章b

11章b

塔が完成に近づいてきた。
ここまで2年かかった。
莫大な金がかかった。
危ない橋も何度か渡った。
しかし、その分だけ勢力は拡大していった。

悪いことはカイが先頭に立ってした。
部下にやらせる前に自分が危ない橋を渡って見せた。
カイは賢く、運が良かった。

「なぁ、エノ」
隣に立って塔を眺めているエノに言った。
「はい。カイさん」
エノはカイの方を向く。この数年でエノとの関係性もずいぶん変わってしまった。
「いや、ええねんけど。
 おれはこの塔が立ったらもうええかおもてんねん。ソラも、、、」
「死ぬんですか」
エノの言葉にドキッとした。エノは見抜いていたのだ。
カイは驚いて黙ってしまった。
「おい、カイ。やめとけ。ソラも喜ばんぞ」
そう言い残してエノは去っていった。
カイは塔を見ていた。

その次の日のことだった。

「やばい!エノが警察に捕まった!!」
事務所に飛び込んできた組員が叫んだ。

そこから散り散りになるのは早かった。
混乱が混乱を生み、簡単に連携が取れなくなっていった。
どの部門もバレたらマズイことを抱えていたのだ。
それぞれのトップは逃げるのに必死だった。

当然カイも逃げなければならなかった。
金庫の金を持って南の方へ逃げた。

バビロンは解散した。

なるべく遠くへ遠くへと走り、
汽車にも乗って南へと下っていった。
金はあるが、近場で宿に泊まると足がつくと思い野宿をした。

何も持たずに生きる術は身についていた。
体は忘れていなかった。

そして数日間移動を続けた後、何もない田舎町で滞在することにした。

ノアの牧場での平和な日々の中で、
そこを旅立つと言う選択が一雄の中で大きくなっていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?