デキる人から学んだ話。

3ピースのスーツ姿、整髪料で整えた爽やかなツーブロック、照明に反射してキラめく腕時計と革靴、そして、芸人とは小道具としてしかお会いする機会のないビジネスバッグを片手に持った長身の男性…見事に「デキる」佇まいをした、しかも二十歳そこそこくらいの若いビジネスマンが馴染みの喫茶店に入店。店内には数人のお客さんとスタンドバイミーTシャツを着た自分(34)。どの常連よりもピンとした姿勢で歩き、店内中央の席を確保。足元にビジネスバッグを置くと、彼は、ハッキリとした口調と声量を使って、「よいしょ」と言って座りました。

よいしょ?

彼とは余りにも不釣り合いに放たれた「よ」と「い」と「しょ」。

面食らうスタンドバイミー(34)。

それも、通常のサイズ感が仮に中年男性でM、貴婦人でXSだとすると、その「よいしょ」は明らかにXLくらいの音量で、いや、もしかしたら不釣り合いだからそう感じただけで、実際にはLくらいだったかもしれないけれど、Lにしたって大きい「よいしょ」が彼から飛び出し、しばらく宙を漂い、「私が『よ』です」「私は『い』です」「私が『しょ』になります」といった具合に、個々の主張を持って店内上空とこちらの脳内を旋回。頭に「どっこい」をつけなきゃ不自然なくらい間違えた声量だったことは明らかな事実で、よいしょの後に「!」が二個か、譲っても一個半はついていて、だからこそこちらはビックリをし、処理が追いつかず、ひとまず張本人の具合はどんなもんだろうかと思ってみてみると、彼は、耳を真っ赤っかにしてラテを飲んでました。

あら。耳が真っ赤っかじゃないですか。

「この店はラテが美味しいですね」ではないんですよ。

しかし、次に掻き立てられた感情は、「かわいい」でした。これだけ整った子のヒューマンエラーは「可愛げ」に変化するんですね。それを感じたのかどうかは分かりませんが、二人で来ていたお姉さんが優しく笑っていました。

なんだよ。最強じゃないか。

可愛げか。なるほど。了解しました。

今度、残高不足で改札に引っかかったら、2XLの声量で「テへへ」と言お。まずはそこからだ。


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