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やさしい物理講座ⅴ64「『光のエネルギー減衰理論』」

 見える現象に惑わされると真実が見えなくなる。具体例として、差し詰め、天動説と地動説であろう。天体を観測すると地球の周りを太陽や他の惑星が回っているように見える。そして、惑星の逆行運動を分析したら太陽の周りを地球とその惑の速度差であり、見かけ上の逆行は、惑星の公転速度の違いによって引き起こされる。これは今では常識である。
 吾輩が再三主張する「ビックバン理論」や「インフレーション理論」については理論の錯誤が感じられるので、赤方偏移の観測したのちの考察時点の出発点に立ち返るべきであると考える。故に「宇宙の起源」についても懐疑的であると考える。
今回は、その理論に異議を述べる。

     皇紀2684年4月28日
     さいたま市桜区
     理論物理研究者 田村 司

赤方偏移の観測による結論

 ハッブル氏の観測結果は「遠い星(銀河)ほど赤方偏移している」というが報告された。
 この結果を当時の天文学者は、「遠い星(銀河)は、観測者(地球)からものすごい速度で遠ざかっている」と結論づけた。つまり、銀河の運動が、波長が伸びた観測結果となったと結論付けたのである。138億光年と言われるその遠ざかっている光の発生を時間と距離を遡るとある一点に行き着く。それがビックバンと言われている宇宙の発生点と言われる。しかし、観測者の観測地点によって銀河の赤方偏移にばらつきがあるべきであるが、距離によって赤方偏移をしているという矛盾のために作り上げられたのがインフレーション理論である。屋上屋の理論であると否めない。このような矛盾は吾輩の『光のエネルギー減衰理論』で解決できるのである。

光のエネルギー減衰理論

 光は摩訶不思議なものである。あるときは波の姿一面をして、また同時に粒子の姿の一面を見せる。これが光の二面性の姿をもった本当の姿である。宇宙の彼方から到着する光を観測するときは「波長」で観測する。しかし、今までの物理学者で光の粒子性で観測した者がいない。光を波長で観測できるのはプリズムである。それは観測し易いためであるが、光の本質は波長ではなく振動数で表される。粒子の振動数が高いほど高エネルギーを持っているのである。光の速度cをその振動数νで割ると壱振動数の波長の長さ λが計算できるのである。光速cと波長λを用いると振動数ν=c/λ
振動 数が ν の光(電磁波)はエネルギーが E = hν のかたまりとして放出・吸収されると考えて, 放射公式を導いた。ここに, h = 6.626176 × 10−34 J · s はプランク定数(Planck constant)と呼ば れる。
ビックバンの時点から宇宙は光の速度を超えて膨張しているなどと天動説的な理論がまかり通ている宇宙論は「光の本質」を捕えていない。138億年光年の先から来る光は宇宙空間の素粒子にエネルギーを取られて減衰した光が地球に届くと理解した方が、地動説的で理にかなっていると思われるのである。では宇宙空間における素粒子とは何かについてのイメージの為に今回の報道記事によると宇宙空間に「炭素イオン・酸素イオン・水素イオン」の状態で漂っていることが観測されたという記事を紹介する。その中を光(電磁波)が通過するときにどのようなその光に影響を与えるかを考察する。光(電磁波)は水やガラスの透過物質を通るとき振動数が変わる。このように光は物質と電磁場の影響を受けて屈折もする。
ところで、素粒子とは何か、これは質量のある物質ではなく、「場」の概念で考える。電磁波は素粒子ではなく「磁場」の概念で考えると分かりやすい。光は質量0である。質量0であるから重力の影響も受けない。ただただ宇宙空間の真空を電磁波のエネルギーを持った振動を繰り返しながら伝わるのである。  電子は負の電荷をもっているためその周りに電場をつくっていますが、これは仮想の光子を雲のようにまとっていると考えられる。高エネルギーの電子が磁場で曲げられると仮想の光子が振り落とされて現実の光子となって放出されます。これが放射光です。
138億光年を伝播する光(電磁波)は色々な過酷な「電場・磁場」に晒されながら地球に到達する光はエネルギーの減衰がないとは断言できない。そのエネルギーが減衰して振動数が減少して地球につくときはその光は波長が伸びた赤方偏移した光として観測されるのである。物理法則のエネルギー保存則に従えば減衰したエネルギーは「宇宙放射3K」の一部として観測されると考える。ビックバンの膨張後の138億年後の証拠が「宇宙放射3K」と言われるが、吾輩は「光のエネルギー減衰した部分が「宇宙放射3K」の一部を成す。138億光年より遠い先から来る光も「宇宙放射3K」を構成する要素であると考える。

減衰させる素粒子は何であるかは不明であり、一般に言われるダークマターにちなんでダーク素粒子とでも命名しておこう。一例であるが、宇宙空間に存在する『炭素イオン・酸素イオン・水素イオンなど』を通過にすることで地場・電場に晒された光が減衰する原因とも考えられる。減衰したエネルギーは宇宙放射の3Kのエネルギーの原因であるとも考えられる。
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以下参考のために、報道記事を掲載する。

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金星から「大量のガス」が宇宙へ漏洩、なぜ?–日欧の探査機が観測

UchuBiz によるストーリー

 欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星探査ミッション「BepiColombo(ベピコロンボ)」が、金星から漏れ出す炭素と酸素を観測した。

BepiColomboはESAの水星表面探査機「Mercury Planetary Orbiter(MPO)」と、JAXAの水星磁気圏探査機「みお(Mercury Magnetospheric Orbiter:MMO)」、推進モジュール「Mercury Transfer Module(MTM)」で構成、水星の磁気圏や表面、内部を観測することを目的としている。
2018年10月に打ち上げられ、地球と金星、水星に接近するスイングバイを実施している

BepiColomboのデータによれば、炭素や酸素を含む大量のガスが、金星の大気から漏れ出しているという。大気が宇宙へと逃げるのを防ぐ、固有の磁場を持つ地球とは異なり、金星は独自の安定した磁場を持っていない。

フランスのプラズマ物理研究所のLina Hadid研究者は「これらは重イオンであり、通常はゆっくりと移動する。我々は現在、どのようなメカニズムが働いているのかを理解しようと努めている」と述べた。

金星磁気シースの側面から漏れ出す物質の模式図。
赤線と矢印は、炭素イオン、酸素イオン、水素イオンが観測された、BepiColomboの観測の領域と方向(出典:Thibaut Roger/Europlanet 2024 RI/Hadid et)© UchuBiz

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金星磁気圏の未踏領域で酸素と炭素を逃がすBepiColomboスパイ

2024年4月12日
ESA/JAXAのBepiColomboミッションが金星を短期間訪問したことで、金星の大気の上層からガスがどのように取り除かれるかについて、驚くべき洞察が明らかになりました。

金星の磁気環境の未踏領域での検出は、炭素と酸素が金星の引力から逃れることができる速度まで加速されていることを示しています。本研究成果は、本日、学術誌「Nature Astronomy」に掲載されました。

CNRSのプラズマ物理学研究所(LPP)の研究員で、この研究の筆頭著者であるリナ・ハディッド氏は、「正に帯電した炭素イオンが金星の大気から放出されるのが観測されたのは今回が初めてです。これらは通常動きの遅い重いイオンであるため、私たちはまだそのメカニズムを理解しようとしています。静電気の『風』が地球から遠ざかっているのかもしれませんし、遠心力で加速しているのかもしれません

地球と違って、金星は核に固有磁場を発生しません。それにもかかわらず、金星の周囲には、太陽(太陽風)から放出される荷電粒子と金星の上層大気中の荷電粒子との相互作用によって、弱い彗星型の「誘導磁気圏」が形成されています。磁気圏の周りには「磁気シース」と呼ばれる領域があり、太陽風が減速して加熱されます。

2021年8月10日、BepiColomboは金星を通過し、最終目的地である水星に向かって速度を落とし、進路を調整しました。探査機は金星のマグネトスシースの長い尾を急降下し、太陽に最も近い磁気領域のノーズから現れました。90分間の観測で、BepiColomboの機器は、遭遇した荷電粒子の数と質量を測定し、磁気シースの側面で大気を逃がす化学的および物理的プロセスに関する情報を取得しました。

その歴史の初期には、金星は地球と多くの類似点があり、かなりの量の液体の水が含まれていました。太陽風との相互作用により水が剥ぎ取られ、大気は主に二酸化炭素と少量の窒素やその他の微量種で構成されています。NASAのパイオニア・ビーナス・オービターやESAのビーナス・エクスプレスなどのこれまでのミッションでは、宇宙空間に失われる分子や荷電粒子の種類と量について詳細な研究が行われてきました。しかし、このミッションの軌道経路は、金星周辺のいくつかの領域を未踏のままにし、多くの疑問が未解決のままでした。

この研究のデータは、探査機の2回目の金星フライバイ中に、BepiColomboの質量スペクトル分析装置(MSA)と水銀イオン分析装置(MIA)によって取得されました。この2つのセンサーは、JAXAが主導する水星磁気圏探査機「みお」が搭載する水星プラズマ粒子実験(MPPE)装置パッケージの一部です。

「金星の大気がどのように進化し、どのようにすべての水を失ったかを理解するには、重イオンの損失を特徴づけ、金星の脱出メカニズムを理解することが極めて重要です」と、LPPの研究者であり、MSA装置の主任研究者であるドミニク・デルクールは述べています。

ユーロプラネットのSPIDER宇宙天気モデリングツールにより、研究者たちは、粒子が金星の磁気シースをどのように伝播するかを追跡することができました。

「この結果は、惑星のフライバイ中に行われた測定から得られるユニークな結果を示しています。惑星は、軌道を周回する宇宙船では一般的に到達できない領域を移動する可能性があります」と、Institut de Recherche en Astrophysique et Planétologie(IRAP)のNicolas André氏は述べています。

今後10年間で、ESAのEnvisionミッション、NASAのVERITASオービターとDAVINCI探査機、インドのShukrayaan探査機など、さまざまな宇宙船が金星を調査する予定です。これらの探査機は、磁気シースから大気圏、地表、内部に至るまで、金星の環境を包括的に把握することができます。

「最近の研究結果は、金星からの大気からの脱出は、金星の歴史的な水分量の喪失を完全に説明できないことを示唆しています。この研究は、金星大気の歴史的進化に関する真実を明らかにするための重要なステップであり、今後のミッションは多くのギャップを埋めるのに役立つでしょう」と、共著者であるスウェーデン宇宙物理学研究所のモア・ペルソンは付け加えました。

出版物の詳細:ハディッド他金星斜面の酸素イオンと炭素イオンのBepiColombo観測による磁気圏Nature Astronomy、2024年4月12日。https://www.nature.com/articles/s41550-024-02247-2DOI:10.1038/s41550-024-02247-2

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金星の磁気シース側面から逃げる惑星物質の模式図。赤線と矢印は、逃げるイオン(C+、O+、H+)を観測した際のBepiColomboによる観測領域と方向を示しています。写真提供:Thibaut Roger/Europlanet 2024 RI/Hadid et al.

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科学の連絡先

Dr Lina Hadid
Laboratoire de Physique des Plasmas (LPP)
Palaiseau
France
lina.hadid@lpp.polytechnique.fr

Dr Dominique Delcourt
Laboratoire de Physique des Plasmas (LPP)
Palaiseau
France
dominique.delcourt@lpp.polytechnique.fr

Dr Moa Persson
Institutet för Rymdfysik (IRF)
Swedish Institute of Space Physics
Uppsala
Sweden
moa.persson@irf.se

Dr Nicolas André
Institut de Recherche en Astrophysique et Planétologie (IRAP)
Toulouse
France
Nicolas.andre@irap.omp.eu

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ISAS’s new efforts and results in space science are published in Japan and shared with the international community, thus promoting JAXA’s status and enhancing Japan’s intellectual reputation in the world.

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  • 10の地域ハブの活動を通じて、ヨーロッパ全体で多様で包括的な地球コミュニティを拡大し、支援すること。

  • アウトリーチ、教育、政策活動を通じてセクターのプロファイルを構築する

  • ヨーロッパが惑星科学において果たす重要な役割を支え、国内および国際レベルでの連携を発展させること。

ユーロプラネット2024 RIプロジェクトウェブサイト:

www.europlanet-2024-ri.eu

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そもそも、この世界は何からできているのか…2000年以上に及ぶ大論争の末、ついに人類が気づいた「意外すぎる答え」

高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 によるストーリー

138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか?

本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。


宇宙は何でできているのだろう?

「宇宙は何でできているのだろう?」。この根源的な疑問に、大昔からたくさんの人が思いを巡らせました。

古代ギリシャの哲学者たちは、この宇宙、つまり太陽や地球といったものが、何でできているのかを考えました。この宇宙は、火、水、土、空気でできていると考えた人もいましたし、どんどんと細かくしていくと、これ以上分割できないとても細かい粒に行きつくはずだと考えた人たちもいました。

中でも古代ギリシャの哲学者デモクリトスは、この宇宙にあるものはとても細かい粒でできていると考え、これ以上分割できない粒のことを「アトム」と名付けました。このアトムは、私たちが今、「原子」と呼んでいるものとは違い、彼の頭の中だけで考えられたものです。古代ギリシャ人には、ものをこれ以上分割できなくなるまで細かくしていく技術はなかったので、彼の頭の中だけでそう考え、信じたにすぎませんでした。

宇宙は何でできているのかという問題は、長い間、解決しないままでした。考えることはしてきたのですが、これ以上分割できない粒があったとしても小さすぎて実際に見ることができず、答えを決めることができませんでした。

そこに、画期的な仮説が登場…!

19世紀の初めに、イギリスの科学者ジョン・ドルトン博士が登場します。彼は、気体が小さな粒子でできていると考えれば気体の化学反応をうまく説明できることに気付き、「ものは原子でできている」と主張しました。

ただし、ドルトン博士も実際に原子を見たわけではありません。化学反応を考える単位として原子という考え方を取り入れると、化学反応の前後で重さが変わらない理由や反応の前後の量を説明できるので、原子があることにしようという「原子仮説」でした。

当時もまだ、この宇宙にあるものが、原子のような粒でできているのか、どこまで細かくしても最小の単位はなく連続で一様な存在が続くのかは、科学の世界を二分する大問題でした。ドルトン博士の原子仮説は化学反応を説明できましたが、ものはすごく小さな粒でできている、とみんなを納得させる証拠を示すことはできませんでした。

photo by iStock© 現代ビジネス

この世界は粒でできているのか否か。この論争に決着をつけたのは、20世紀を代表する科学者の1人、ドイツ生まれのアルバート・アインシュタイン博士でした。さらさらと連続しているようにしか見えない水が、実は粒の集まりであることを示したのです。1827年にイギリスの植物学者ロバート・ブラウン博士によって発見された「ブラウン運動」の考察がきっかけでした。

ブラウン博士は、水に花粉を浮かべたとき、花粉から出てくる粒が水の中でブルブルと、せわしなく不規則に動くことを発見しました。それがブラウン運動です。ブラウン博士は最初、「何かの生命現象によってブルブルと動くのだろうか」と考えましたが、化石の粉、鉱物の粉、煙の粒などの生きていないものも同じように不規則に動くので、その理由がわからなかったのです。

アインシュタイン博士は1905年に発表した論文の中で、ブラウン運動が起こるのは動き回る粒の側に理由があるのではなく、水がとても小さな粒でできているからだと結論づけました。そう考えれば花粉から出てくる粒の不規則な運動が説明できる、と論文に著しました。

静かに止まっているように見えるコップの中の水も、もし水が小さな粒でできていたら、その粒は動き回っていることでしょう。コップの中の水の粒は、温度が高ければ激しく、低ければゆっくりと、絶えず動いています。水の粒がまるで「おしくらまんじゅう」のようにあちらこちらから押すので、花粉から出てくる粒がブルブルと不規則に動いているように見えるのだ、とアインシュタインは発表しました。

論文には、花粉の動きの観察から水の粒の大きさや数を予測する数式も記されていました。アインシュタイン博士の論文は、「この数式を実験で確かめて欲しい」との呼び掛けで終わっています。

アインシュタイン博士の呼び掛けに応じて、フランスの物理学者ジャン・ペラン博士が花粉から出た粒の運動を細かく記録し、水の粒の大きさや数を計算しました。この実験によって、水の粒が実際に存在していることや、ドルトン博士が示した原子仮説が正しいことが証明されたのです。ペラン博士は、この功績によって1926年にノーベル物理学賞を受賞しました。

ペラン博士の実験によって確認された水の粒の大きさは、1億分の1センチメートルほどでした。18g(大さじ1杯ちょっと)の水の中には6.02×10²³個という、とてつもなくたくさんの粒が存在していることがわかりました。これは、他のどの実験よりも水の粒の数を正確に計算できていました。

こうしてアインシュタイン博士の論文とペラン博士の実験によって、ものをつくっている小さな粒、原子の存在が決定的になってくると、次に興味を引いたのが、その姿です。

原子はどんな形?

原子の姿を考えるに当たり、アインシュタイン博士の論文が発表される少し前の19世紀終わりごろに、物理学史上とても重要な発見がありました。イギリスの物理学者ジョセフ・ジョン・トムソン博士による電子の発見です。ガラス容器に一対の電極を入れ真空にして電圧をかけると光る線がマイナス極から出ることが知られており、陰極線と呼ばれていました。トムソン博士は、電場をかけると陰極線が曲がることを見つけ、陰極線がマイナスの電気をもつ粒子であることを発見し、「電子」と名付けたのです。

私たちの生活に欠かせない電気。この電気の正体は、トムソン博士が発見した電子という粒子です。電化製品のスイッチを入れると電線を電気が流れます。その電線中を流れるのが電子です。電流はプラスからマイナスに流れると、小学校の理科で習いました。これは、まだ電子という電流の正体がわかっていなかったときに決められたことです。実際には、たくさんの電子が電線の中をマイナスからプラスに流れているのですが、私たちはそれを電子の流れと意識しないで使っています。私たちが便利だなと感じている現代の生活は、実は電子という粒子によって支えられていたのです。


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アインシュタイン博士の論文とペラン博士の実験によって原子の存在が明らかになると、次にその形が問題になりました。すでにトムソン博士によって電子が発見されていたので、科学者たちは当然、原子の中には電子が入っていると考えました。ペラン博士の実験から計算された水の粒の大きさと、トムソン博士が実験で発見した電子の大きさを比べると、明らかに電子の方が小さいこと、そして電子はマイナスの電気をもっているということも、原子の形を考えるポイントになりました。

私たちの身の回りにあるものは、電気的には中性のものがほとんどです。本、ノート、机、いすなど、手で触れても電気が流れてはきません。それはプラスの電気とマイナスの電気が同数で、電気的に中性だからです。

マイナスの電気をもっている電子が存在しているということは、電子とは反対にプラスの電気をもっている何かがあって、電子とその何かが同数集まって原子をつくっている。だから、ほとんどのものが電気的に中性なのだ。そう考えられました。

「レーズンパン」か「土星」か…巻き起こった大論争

たくさんの科学者が、原子はいったいどのような形をしているのかと考え、2つの候補に行きつきました。

1つはレーズンパン型モデルです。レーズンパンは、パン生地の中に小さなレーズンがたくさん入っています。原子もそれと同じように、プラスの電気をもったものの中に、マイナスの電気をもった小さな電子がたくさん入っているというものです。

もう1つが土星型モデルです。土星は、本体が中心にあり、その周りを環が回っています。土星の環の正体は、大きさが数mから数センチメートルの氷の粒の集まりであるといわれています。それからの類推で、原子には中心部分にプラスの電気をもった土星本体のような「核」があり、その周りを電子が回っていると考えられました。

どちらが正しいのかで大論争が起きました。そして、その論争に決着をつけたのも実験でした。


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1911年に、イギリスで活躍したニュージーランド出身の物理学者アーネスト・ラザフォード博士が、金箔に放射線の一種であるアルファ線をぶつける実験に基づいて原子模型を提唱しました。アルファ線はプラスの電気をもつ小さな粒子です。放射性物質から秒速約1万キロメートルという速さで飛び出します。

原子がレーズンパンのような姿だったら、アルファ線はほぼすべて金箔を貫通すると予測されていました。

ところが実験すると、撃ち込んだアルファ線の中に大きく角度を変えて跳ね返ってくる粒子があったのです。ラザフォード博士もとても驚きました。アルファ線が大きく角度を変えたということは、金原子の中の何か小さくてかたいものにぶつかったからと考えられます。この実験により、土星型モデルのように、原子の真ん中にはプラスの電気をもつ小さくてかたい核があり、その周りを電子が回っていることがわかりました。そして、このプラスの電気をもつ核は「原子核」と名付けられました。

古代ギリシャのデモクリトスがその存在を主張したアトムは「これ以上分割することのできない粒子」という意味でしたが、20世紀になり、原子は電子と原子核とに分割できることがわかったのです。

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「原子は最小単位じゃない」ってみんな知っているのに…学校で「素粒子」を教わらない「意外な理由」

高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 によるストーリー

138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか?


*本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。

原子と分子の違いをブロックで理解する

経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳の生徒を対象に行っている「生徒の学習到達度調査(PISA)」で、「原子と分子の違いを述べよ」という問題が出たことがあったそうです。日本から参加した多くの生徒は、「分子は原子の組み合わせのことである」と答えました。この答えは正しいのですが、PISAが意図していた答えは、もう1つありました。「原子の種類は限られるが、分子の種類は無限である」というものです。日本から参加した生徒で、そう答えた人は少なかったそうです。

原子はブロック玩具の1個1個のようなもので、組み上げていくと、いろいろなものができます。そして、このブロック玩具に相当する原子は、これまでの研究から118種類あることがわかっています。身の回りにあるものをすべてバラバラにしていくと、118種類の原子のどれかなのです。

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私たちの体や身の回りにあるノートやペン、そして遠く離れている星や銀河まで、すべてのものが118種類の原子でできています。しかし、原子が118種類あるからといって、原子がただくっつくだけでは、人間の体のような複雑なものをつくることはできません。

でも、いくつものブロックが組み合わさった基本パーツがたくさんあったらどうでしょうか。そのいろいろな基本パーツを分解して組み立て直し、車や電車、飛行機などをつくることができます。無限に及ぶ種類の基本パーツを分解し組み立て直すことで、限られた種類のブロック(原子)の組み合わせ以上のいろいろな機能をもった個性あふれるものがつくれます。

私たちの体も、それと同じようにできています。いくつかの原子が集まって基本パーツとなり、いろいろな機能をもつようになります。その基本パーツが分子です。例えば、1個の酸素原子に2個の水素原子がくっつくと水分子になります。水分子になることで、100℃で沸騰し、0℃で凍るという性質が生まれます。

組み合わせる原子の種類や数によって、無限の種類の分子ができます。この分子がいくつも集まってもっともっと複雑な働きをするようになり、私たちの体などをつくっていきます。この仕組みがあるから、地球上には数え切れないほどたくさんの生物や物質が存在しているのです。だから、PISAでは「原子の種類は限られるが、分子の種類は無限である」も重要な答えであると考えたのでしょう。

原子はどうしてくっつく?

ところで、118種類の原子は、どうやってくっつくのでしょうか。それはブロックをピタリとくっつける作業に当たります。これに相当するのが化学反応です。原子や分子は化学反応を起こすことによってお互いにくっついたり、使われている原子を入れ替えたりしながら新しい分子をつくっていきます。


水素分子2個と酸素分子1個から水分子2個ができる© 現代ビジネス

気体の水素は、2個の水素原子がくっついた水素分子(H₂)です。気体の酸素である酸素分子(O₂)も同じように2個の酸素原子がくっついてできています。水素分子2個と酸素分子1個が化学反応を起こすと、原子の組み換えが起きて2個の水分子(H₂O)ができます(「図:水素分子2個と酸素分子1個から水分子2個ができる」)。

たった3種類の粒で世界はできている

古代ギリシャの時代に考えられていたアトムは、これ以上分割することのできない究極の粒でした。ところが、1900年代に実際に発見された原子は、原子核と電子に分けることができました。ラザフォード博士の実験で、原子は真ん中にプラスの電気をもった原子核があり、その周りをマイナスの電気をもった電子が回っていることがわかりました(「図:原子や原子核の内部構造とその大きさ」の左部)。


原子や原子核の内部構造とその大きさ© 現代ビジネス

しかも、原子核は原子の10万分の1くらいの大きさしかなく、そして原子の重さは、ほぼ原子核の重さであることもわかってきました。原子の大きさを東京ドームくらいにすると、原子核はマウンドに置かれたビーズ程度。その周りにある電子は、原子核よりもさらに小さいものです。

原子の中はものすごくスカスカな状態だったのです。私たちは誰も、自分の体がスカスカだとは思っていません。でも、ミクロの世界に入っていくことができたとすれば、私たちの体をつくる原子がとてもスカスカなことに気が付くことでしょう。

原子核もとても小さなものだったので、それ以上分割することはできないと思われていました。しかし、1919年に陽子が、1932年に中性子が発見されて、原子核がそれらの粒でつくられていることがわかりました(「図:原子や原子核の内部構造とその大きさ」の中央部)。

しかも、それで終わりではなかったのです。陽子も中性子も、その中をよく調べてみると、クォークというもっと小さい3つの粒がくっついてできていたのです(「図:原子や原子核の内部構造とその大きさ」の右部)。陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個、中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個という組み合わせの違いはありますが、3個のクォークでできているということは同じです。つまり、原子核はアップクォークとダウンクォークの2種類のクォークだけでできていることがわかったのです。これに原子核の周りを回っている電子が加われば、原子ができます。

つまり、原子はアップクォーク、ダウンクォーク、電子の3種類の粒だけでつくられているのです。この3種類の粒が組み合わさることで、118種類の原子になります。結局のところ、この世界はたった3種類の粒からできていることになります。

学校で素粒子を教わらない理由は…

原子をどんどん細かくしていくと、最後にはアップクォーク、ダウンクォーク、電子になります。この3つは今のところこれ以上細かくならないので、このような粒のことを「素粒子」と呼びます。原子は素粒子でできているので、私たちの体や身の回りにあるものは全部、素粒子でできていることになります。中学校の理科では、「すべてのものは原子でできている」ということは習いますが、「素粒子でできている」ということまでは習いません。そのため、素粒子と聞いても、ピンと来る人があまりいないのでしょう。原子と素粒子はまったく違うものだと思っている人もいるくらいです。

人類は、この宇宙のすべてのものはアトムからつくられていると想像して、実際に20世紀の初めに原子を探し当てたわけですが、世界にはそれよりも小さくて根本的な粒があったのです。原子という名前はすでに使っているので、「素粒子(elementary particle)」と別の名前にして混乱を回避しました。図「原子や原子核の内部構造とその大きさ」右にあるように素粒子クォークの大きさは10-18mより小さいとしかわかっていません。同じように原子核の周りを回っている電子の大きさも10-18mより小さいとしかわかっていません。

もう一度整理しておくと、原子は3種類の素粒子からできていて、その原子が集まっていろいろなものがつくられています。素粒子は身の回りのものをつくる一番基本となる粒です。ちなみに、素粒子の「素」というのは、「これ以上分割することができない」という意味の漢字です。デモクリトスのアトムの意味とよく似ていますね。

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「すべてのものが素粒子でできているのだったら、学校でもそう教えればいいのに」と思う人もいるかもしれません。でも、素粒子については、まだまだわかっていないことがたくさんあります。素粒子の種類については、1960~1970年代に理論的には予測されていましたが、本当にあると確認できたのは、つい最近のことです。

例えば、2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠博士と益川敏英博士は、1973年にクォークが6種類あると予測したのですが、実際に6種類が見つかったのは1995年でした。また、2012年7月に発見が伝えられたヒッグス粒子の存在は、1964年にイギリスのピーター・ヒッグス博士やベルギーのフランソワ・アングレール博士らによって予想されていました。発展中の内容なので、学校ではまだ教えられないということなのでしょう。

参考文献・参考資料

金星から「大量のガス」が宇宙へ漏洩、なぜ?–日欧の探査機が観測 (msn.com)

金星磁気圏の未踏領域で酸素と炭素を逃がすBepiColomboスパイ – Europlanet Society (europlanet-society.org)

放射光の原理 — SPring-8 Web Site (spring8.or.jp)

光 - Wikipedia

そもそも、この世界は何からできているのか…2000年以上に及ぶ大論争の末、ついに人類が気づいた「意外すぎる答え」 (msn.com)

「原子は最小単位じゃない」ってみんな知っているのに…学校で「素粒子」を教わらない「意外な理由」 (msn.com)

ビッグバン - Wikipedia

宇宙のインフレーション - Wikipedia

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