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創作の御守りになるプレイリスト(エッセイ)

私のYouTube Musicにはいくつかのプレイリストがあり、その中で、仕事でも趣味でも何かを生み出したい、でもキツいーーそんな時に聴くためのものがある。
今日は私の「creative work 讃歌」と題した(ハズい)短いプレイリストを紹介する。


創造 / 星野源

その名の通り新しい物を作り出そうと歌う、某ゲーム会社の周年のCM。
花札や水平思考の歌詞や、特有の電子音など、この会社ならではの要素をこっそり入れ込む星野源のタイアップ手腕は期待通り。こんなお洒落な曲をテーマソングにできる社員さんたち羨ましいよう…。

何か創り出そうぜ 非常識の提案 誰もいない場所から

目下捻り出そうぜ 閃きの妙案

そして全体を通して表現される、孤独から生まれるクリエイションを讃えるのが、なんともパワーになるものだ。星野源も創作者であることがさらにそのパワーを強くする。
軽やかに楽しそうにもがいてやったろうじゃないの、そう思える作業ブーストBGMだ。

さんさーら!/ARuFa

中学生の頃から人気ブロガーで、今もオモコロライターとして日々夥しいインプレッションを集めるほか、近年では多数のCMにも出演し、唯一無二のネットクリエイターとして絶大な存在感を誇るARuFaさん。
会社員にも関わらずこれが3曲目のキャラクターソングという夢の叶えぶりが素晴らしい。創作欲求に真摯で忠実なARuFaが音楽分野の方と全力でコラボしその声質と歌唱力を存分に発揮しているのが嬉しいし、歌詞に散りばめられた本人由来の小ネタやインターネットから発想されたユニークな表現にニヤリとしてしまう。

白い目なら黒く染めて
目線を奪ってみたり

↑本人いじりでいうとこうした目線の話とか。でも慣用句として成り立っている。
天才!日本語好きってなる。

街中みんなスルーしてた
ゴミを突っついてみたり

↑ARuFaさんの、言われるまで面白さに気がつけなかったものを丁寧に拾って磨き上げる力、すごいのよね。くだらないを全力でやるの鑑。

数年後もアイデアが
地獄のそこで花咲いたら

↑どんな思い付きもしっかり愛でて取っておこうとなる、この歌詞に救われることが多々あります!

1番ではサビ終わりが「日常を照らす+何か」と言っているところが少し引っかかるのが、ラスサビの本当に最後で

日常を照らす +α

となり、ひ、ひぇ〜〜!アルファって言った〜〜!てなるまでがセット。
燦々と輝くおもしろの星の姿として理想すぎる茶目っ気と格好良さ。大好き。

くだらないと捨てないで自分の思考を愛でようと思える素敵な曲だ。

INTERNET WRITING MAN!! / 雨穴

「変な家」だけじゃなくて変な動画も面白いし楽曲も良いのだ、雨穴さんは。
踏んじゃいけないリンクみたいに見えるけど楽器を弾いて歌って踊る雨穴さんすごく可愛いので怖がらずに見て欲しい。

ウェブライターという職業をテーマにした曲。
初めは賃金や読者層のことを割とビビッドかつコミカルに語っていて、

書いて儲ける 何でも受ける
だって1文字何円の世界

とか結構シビアな歌詞がポップな音楽にのっている。
それでも2番からだんだん血が通ってくる。

愛憎は相性と割り切るしかない

とかネットで何か感想を読む人によっては鉄則、歌詞に紛れた金言である。
そして同僚の才能をほめそやし、キレキレのノリノリになっていく。

Let’s keep on!!
You’re picking up BUZZ vibration!

とバズってサビに突入していくところ、ネット特有の高揚感を追体験しながら、鉄面皮の雨穴さんのテンションの上がり方を感じて笑顔になる。
そしてサザン(好きなのかな)のパロディとパソコンくんな語彙をたくさん披露しつつ曲は終盤に差し掛かり、

Oh! Internet writing man!
Just like a fighting man!
Internet wiring man!

と、その悲喜交々な生態を丸ごと包んで賛辞する。
これを初めて聴いた時ここのあたりで私はもう「これビリージョエルか?」というくらいの詩情を感じた。
得体の知れないウェブライター(プライベートを切り売りしないそのスタンスもなんか良いなと思っている)がその界隈に対して持っている愛と誇り、そしてひょうきんかつクールな形でそれを表す才能ーーめちゃくちゃ格好良い。

仲間を思いながら小粋にやっていこうよという気持ちにさせてくれる愉快なナンバーだ。

人生は夢だらけ / 椎名林檎

言わずと知れた林檎さま。
この曲はまさに私が初めて「ものづくりの支えにしたいな」と思った曲だ。
ピアノ伴奏だけでゆっくり唄う序盤から一気にビッグバンドで厚みが出る、ブロードウェイの幕が上がったような演出は林檎さまお得意だが、人生を舞台のように考えている本作にはぴったり。

この世にあって欲しい物を作るよ

え!あそっか!自分の見たいものを作るんだ!と目から鱗が落ちた。大学生くらいだったかなあ。てっきり人が見たい物を作るのかと思っていた。根源にはそれがあるんだというのが原始的で揺るがない欲求で魅力的だなと思った。
そして。

きっと違いの分かる人は居ます
そう信じて丁寧に拵えて居ましょう

とにかくここに尽きると思っている。
仕事の制作物を見ていて、時間もなくて、「こんな細かいとこもう良くないかァ〜?」と心の悪魔が囁くとき、この曲を思い出す。
無難なのはこっちだけど、面倒でもあとちょっと頑張れば、はじめに「絶対こうした方が良い!」と思ったものに近づくなあと気づいたとき、この曲を思い出す。

見てる人は、見ている。きっと違いの分かる人は、居ます。
この歌詞が「います」じゃなくて「居ます」なこと、私は気がついている。
そういうことでしょ。

そしてその先に「この人生は夢だけ」と大らかに大胆に歌い上げる林檎さま。
胸がスカッとして顔を上げたくなる。
自分を信じてこだわりを大事にできる曲だ。

COLORFUL BOX / 石田耀子

制作会社・武蔵野アニメーションに務める新人宮森あおいを中心にアニメ制作に関わる色々な人々のリアルな創作ドラマを描くお仕事群像劇アニメ「SHIROBAKO!」のOP。
急な早口失礼しました。好きなんです……。
もう4周くらい見ているアニメです。なんたって人ごとじゃない。私の仕事はアニメの制作進行ではないのだけど似通ったところがあるし、創作物の中でこれは私の仕事の話だ!と一番親近感を覚えてみることができるのはこの作品だと断言できる。
開始数分まではたくさんの可愛いJKとドーナツが青春している「けいおん!」状態なのに、場面が変わると驚くほど現実的な生活の手触りがある現在に時が進んでいる。KVだけで侮るなかれ、です。

もうね、沁みるのです。みゃーもりの奮闘。
各分野のプロフェッショナルたちをまとめて叩いてリスクを鎮火して気を使って右往左往して全部を前に転がしていく制作進行、これは凡人のフリしたスーパーマンに見えてくるのですよ。
社会人になってからみゃーもりは1年目にしたら優秀すぎる社員だと分かったし、時が立ってからは冷静で頼りになる矢野先輩にも急に感情移入してしまった。きっとこの先、Pとか監督とか社長とかお母さんとか色々なところにまた自分を発見していくんだろうなあ。
そしてかつての部活の同志たちのそれぞれの葛藤と決断と生活と成長…あの“目の合うシーン“(伝わる人には伝われ)、思い出しただけで今も私の目には涙です。
孤独な創作とそれを繋げるチームワーク、やっぱり自分はこういう仕事が好きだ!と、まるで小学校の卒業文集を読み返したら書いてあったのではという勢いで、確信できる。
嗚呼名作。いつか全力レビューしたいです。

そんな作品のOPなので、曲自体は良い意味で最大公約数的な全方位の爽やかソングながら、とても濃くて熱い気持ちにさせてくれる、きっかけの曲。


以上、私のクリエイティブ讃歌たちをご紹介。ぜひ他にもあったら知りたいです。

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