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法然院にて谷崎潤一郎の墓に手を合わせ、新年がはじまる


今年こそ一年の目標を掲げようと思っていた矢先、つぎつぎと大変なことが起こって、しばらく言葉を失っていた。

被災地と、遠い場所で新年を迎えた。揺れさえ感じなかったことに罪悪感を感じた。ずいぶん前だが、イカ焼きやおやきを片手に歩いた輪島の朝市のあったかい風景を思いかえしては、胸が押しつぶされるように苦しくなった。

思いがまったくまとまらなかった。
言葉が見つからず、自然の強烈なエネルギ―と無慈悲さとを、嘆きくりかえすことしかできなかった。

***

年明け早々、京都に行く機会があった。

昨年、紅葉の時期におとずれた京都とはうってかわって、街はひっそりと静かである。それもそのはず。まだ三が日だから、開いているお店のほうが少ない。

烏丸丸太町で地下鉄を降り、荒神口から出町まで鴨川べりを歩いていく。どんな時節でも状況でも、鴨川は変わらず流れていて、鳥は鳴き、なじみの山々が目のはしに映る。なんだか少し、ほっとする。

思い出深い、荒神口のベンチ。
鴨川デルタ。亀石には、それなりのひと。

いろいろが変わっていくのは世の常だけれど、変わらないものは、やはり愛おしい。

モダン焼フジ、健在。
RINGOも、健在。

さらに歩いて、哲学の道まで。

ひとより、お地蔵さまのほうが多かった。

今回の目的地、法然院へ。

椿と苔と白い砂。


残念ながら、読めなかった。


法然院には紅葉の時期に一度だけ訪れたことがあった。
だが、今回の目的はここの墓地。数々の著名人が眠っているという。

谷崎潤一郎夫妻、九鬼周造、福井謙一、喜多源逸、福田平八郎、永田和宏の妻、歌人の河野裕子さん。

興奮のままに手を合わせていく。ひっそりと森に包まれた静謐な空間。肌にふれる空気の凛然さに、自然と背筋が伸びる。

新年からざわついていた心が、少しずつ治まっていくようだった。
静寂のありがたさを、ひしひしと感じた。

「寂」谷崎潤一郎、松子夫妻が眠る。


「空」松子夫人の妹、重子夫妻が眠る。


***

ようやく、今年の目標を考えるに至った。
変わらず、やり続ける。書くこと、走ること。

大してかわり映えのない目標だが、元来飽き性で続けることが苦手な、隙あらばすぐに怠ける人間であるから、こうして公言したことも前進だと思いたい(自分に甘い)。

とはいえ昨年はじめたランニングを一年続けることができたのは、自分のなかでも小さな自信につながった。最初の一、二カ月は体がだるく膝も痛くなったが、そこを乗り越えると、中毒のような、数日走っていないと気持ちが悪いような妙な感覚に陥って、そのおかげか今では10~12キロは走れるようになり、年間1000キロも達成できた。

書くことにも中毒性はある気がするけど、書けば書くほどわからなくなる。さてどうしたものだろう。

今年の目標に『なりふりかまわず』という気持ちを添えたい。なりふりかまわず、やり続ける。なりふりかまわず、書く。走る。かっこ悪くても笑われてもええやないかみたいな心意気を、心のどこかに持っていたい(とはいえ根が臆病なので公言するだけでドキドキしている)。
こんな私めですが、本年もどうぞよろしくお願いいたします。



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