後輩の部屋で何度止めても勝手に再生されるCDと下がっていく室温

私の体験した不思議体験3つのうち、どれの詳細を知りたいです?とアンケートを募り、1位になった話を書いてみます。
あの頃の当事者に迷惑が掛からないように、多少のフェイクを入れていますのでご了承ください。
これ一番怖くないやつなので、怖いの苦手な方も割といけると思います。

当時、私は寮生活をしている学生でした。しかもジャンケンで負け倒して副寮長をやらされていました。
寮長(ジャンケン最弱王)がフラフラと人の部屋に遊びに行って自分の部屋におらず、しかも7割は私の部屋に居るため、寮内で何か問題が起きた時には真っ先に私の部屋に揉め事が持ち込まれるという微妙に安らげない部屋でした。

梅雨時のある夜。いつものごとく部屋でだらけきって漫画を読んでいた私と寮長の元に、半泣きの後輩が駆け込んできたので「なんだ、また変質者が出たか?スプレー火炎放射器の出番か?」とヘアスプレーとライターを手にいきり立った(女子寮を狙う変質者への対処に慣れすぎて攻撃に躊躇いがない)のですが、「違う!!お願い先輩すぐ部屋来てぇぇぇ!!!」とついに半泣きからマジ泣きに移行する後輩Aちゃん。付き添いで一緒に来ていた後輩Bちゃんも「あの、Aちゃんの部屋が、あの」とアワアワしているので、「何かわかんないけど部屋行けばいいの?虫か蛇でも出た?」(出没するGやムカデや蛇にも慣れて駆除に躊躇いがない)とAちゃんの部屋に向かう私と寮長。

そしてAちゃんの部屋に入ると、梅雨の蒸し暑さとは無縁の冷え冷え空間でした。
寮長「わ、涼しい」
私「もうクーラー入れてるの?」
Bちゃん「入れてないです」
私「でも涼しいよ」
Bちゃん「クーラーも何も使ってないのに、どんどん寒くなるんです」
説明してくれるBちゃんの後ろで室内には入らず、廊下でずっとしくしく泣いている部屋の主Aちゃん。

Bちゃん「あとそのCDが止まらないんです」

指差す先にはまあまあの音量でCDを再生しているコンポ。
止まらないとは?と首を傾げる私達に、そっとCDのリモコンを渡すBちゃん。
とりあえず停止ボタンを押す寮長。止まる音楽。
寮長「止まるけど?」
と更に首を傾げた瞬間、また流れ始める音楽。
寮長「壊れてる?」
今度は電源ボタンで電源自体を切る寮長。
10秒くらいすると勝手に電源が入り再生されるCD。
電源を切る寮長、勝手にONになるコンポ。
電源を切…
私「何回やるの」
寮長「ごめん、なんか楽しくなってきて」
そしてそうこうしている間にもどんどん冷えて、鳥肌が立つレベルの気温になる部屋。

私「理由の無い気温の変化とはファンタジーな」
寮長「ファンタジーっていうよりかホラーじゃない?」
私「ほーん…霊的なアレ的な?」
と私達が心霊現象を匂わせる会話をしたのがトドメになったらしく、いよいよヒステリックに泣き始めるAちゃん。思春期というのは情緒が不安定なものですからね。刺激して申し訳なかった。
Aちゃん「もうイヤー!こんな部屋入れない!!」
寮長「今日はBちゃんの部屋に泊めてもらうにしても、ずっとそうするわけにも」
私「根本的な解決をしないと」

とりあえず出来る事を試してみようと、コンポの電源コードをコンセントから抜いてみました。するとしばらく待っても電源は入らず。
私「敵は電力を自給自足できないらしいよ」
Bちゃん「えええ…」
寮長「そりゃそうかー。なんで2人はコード抜かなかったの?」
Bちゃん「だって近寄って触るのも怖くて…!」
私「Oh…か弱く繊細な心」
寮長「私達がとうの昔に失ったもの」
汚れっちまった悲しみに…今日も風さえ吹きすぎる…と中原中也の詩を口ずさみながら、残る不思議現象の室温をなんとかしようと、窓とドアを全開にし、ついでに廊下を挟んで向かいの部屋の子にも頼んで窓とドアを開けてもらって外気をガンガンに通しつつ、霊的な障り的なものだと仮定して、効きそうなことを片っ端からやってみることに。

食堂からちょろまかしてきた塩を部屋の四隅に盛る。
私の神社仏閣巡り御札コレクションの中から角大師の降魔札を持ってきて鬼門(北東)の壁に飾る。
中二病を患って各種詠唱に詳しい同級生を呼んできて九字を切り、ついでに不動明王真言も唱えてもらう。
霊は生命力に溢れたものが苦手、というネット情報から、合コンの達人でバッチバチに肉食系の後輩を呼んできて、最近美味しく頂いた男性との一戦について赤裸々に語ってもらう。
実家が教会でクリスチャンな先輩の優しさで「こんな時は何はともあれ十字架じゃない?」と差し入れされた十字架のネックレスをドアに架ける。

するとどれが効いたのかは不明ながらも、一時間ほどで気温の低下は止まり、外気と変わらない温度に。
寮長「良かったね」
Aちゃん「良かったけどやっぱこんな部屋イヤ!!」

嘆くAちゃんの要望を受けて、翌日から寮生各位に部屋の交換を打診して、「別にそういうの気にしないから、玄関に近いほうが楽でいい」と受け入れてくれた子とAちゃんの部屋を入れ替えお引越しして一件落着。
その後その部屋やAちゃんに何かが起きることも無く、平和な寮生活(変質者も虫も変わらず現れるが)を送りました。
Aちゃんと部屋を代わってくれた子にそのまま降魔札あげたけど、今も持ってくれているだろうか。ありとあらゆる魔を降すという事で病魔にも効くらしいので、彼女をコロナからも守ってくれてたらいいのですが。

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