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【ビジネス向け】ツイステの流行に関する考察~コンテンツ編~

こんにちは!
Hamaru StrategyのChief OTAKU Officer つっきーです。

しばらく保健室事業アイデアに関するnoteを集中して書いていましたが、久しぶりにオタク分野でお送りします!

皆さん、ディズニー ツイステッドワンダーランド(略称:ツイステ)をご存知でしょうか?

今、女性オタク界隈で一番のトレンドと言っても過言ではないコンテンツなのですが、様々な事情で、意外と女性オタク界隈以外に話題が及んでいない気がしています。

実にもったいない!!!!!

なぜなら、ビジネス的にも このトレンドを知ることは、実は重要なのでは?と考えているからです。
その理由を、「コンテンツ編」「ゲーム編」の2つに分けてお伝えしようと思います。

2つのnoteは主にエンタメ界隈のビジネスをやっている方に向けた内容にはなりますが、それ以外のビジネスをされている方にとっても参考になる部分は多いかと思います。
一読いただければ幸いです。

ディズニー ツイステッドワンダーランドとは?

ディズニーの悪役(ヴィランズ)たちの真の姿を描くオリジナルストーリー。
2018年に企画が発表されて話題になり、2020年3月18日に満を持してソーシャルゲームの配信が開始されました。

その名の通り、なんとこちら、ウォルト・ディズニー・ジャパンが全面協力
原案・メインシナリオ・キャラクターデザインは、大ヒット漫画「黒執事」の作者である枢やな先生です。
企画・配信はアニプレックス、アニメーションはTROYCA。

まさに最強の布陣と言えるでしょう。

あらすじ

主人公が魔法の鏡に導かれ、迷い込んだ先は異世界「ツイステッドワンダーランド」
元の世界に戻るため、魔法士養成学校「ナイトレイブンカレッジ」に入学することになりますが、学園の生徒たちは問題児だらけ。
8つの寮に所属する生徒たちの抱える様々な問題に巻き込まれながら、物語は進んでいきます。

ディズニー原作との関係

8つの寮は、それぞれディズニーの悪役たち(ヴィランズ)の魂を受け継いで設立・運営されています。

・ハートの女王(ふしぎの国のアリス)
・スカー(ライオン・キング)
・アースラ(リトルマーメイド)
・ジャファー(アラジン)
・女王(白雪姫)
・ハデス(ヘラクレス)
・マレフィセント(眠れる森の美女)
※厳密に言うと他の人物の要素も混ざっています。

寮の名前やデザイン、登場人物の名前、ストーリー展開など、
原作のヴィランズは物語の根幹に様々な面から関わってきます。

様々なトレンド現象たち

そんなツイステについて、トレンドになっている!と言えるだけの要素を挙げてみました。
詳しくはこちらにまとまっていますが、要点をピックアップ。

まず、初週の時点でアクティブユーザーが55.6万人
7月には115万人に達するほどの伸びを見せました。

創作SNS pixivでの「#ツイステッドワンダーランド」タグは4万件を超えています(2020.8.24時点)
例えばFate/Grand Order(FGO)は男女共に大人気で、先日5周年を迎えたところですが、「#FGO」は約24.3万件という検索結果でした。
このことから、2次創作界隈でも大変な広がりを見せていると言えるでしょう。

また、第2回のストーリーイベント「フェアリーガラ」の限定ガチャでは、開始4時間で6億円(予想)を売り上げた…など、既に伝説的な記録も残しています。

盛り上がりに欠ける事情

ただ、昨今のコロナの事情があり、エンタメビジネスの席でも意外とツイステは話題に上ってきません。

「ソシャゲなのにコロナは関係あるの?」と思われるかもしれませんが、個人的にはかなりあると思っています。

例えば、昨年から爆発的ヒットを飛ばし続けているヒプノシスマイク(ヒプマイ)を思い出してみましょう。
ヒプマイは、ライブやアニメイトでの大規模展開、声優さんのTV露出など「目に見えて流行ってる感」が強く、早々に女性オタク以外の界隈、ビジネス界にまで話題が広がりました。

一方で、ツイステがリリースされたのはコロナ禍の3月。
自粛期間がソシャゲの売上自体に貢献した部分も大いにあるとは思いますが、リアルでの盛り上がり施策があまり打てなかったこともあり
流行の様子が他の界隈にまで十分に波及していないのです。

だからこそ、ツイステにとってメインの客層ではない人は
エンタメビジネスに関わっていたとしても、ツイステの盛り上がりに対してイマイチ気づけていないことが多いと考えています。

~~~

前置きが長くなりましたが…
具体的にどういった要素が流行の理由なのか?
考察してみようと思います。

流行の理由①話が面白い

一番の理由はコレだと思います。
実際に私も、複数のオタ友から「話が面白いから読んで!!」と布教されて始めたクチです。

「そりゃ、流行ってるんだから当たり前じゃないの?」

と思われるかもしれませんが、他の女性向けコンテンツを見てきた経験からすると、そうとも言い切れないのです。

女性オタクに人気が出るコンテンツに必須の要素として「ストーリーが良い」というのがあります。
この「ストーリーが良い」という感覚は「話が面白い」とは微妙に違う、と私は考えています。

「ストーリーが良い」というのは、多くの場合、キャラクターの周辺要素に対する評価です。
例えば、
キャラが抱える心の闇についての掘り下げや
キャラ同士の深い関係性を想起させる描き方
キャラ自身の成長など。
キャラを支点としたストーリーが丁寧であればあるほど、深ければ深いほど、オタクはキャラを愛するようになり、深みにハマっていきます。

一方で「話が面白い」とは、その作品全体の展開や流れ自体が面白い、ということです。
「いったい誰が犯人なの!?」
「ここで誰が助けに来るんだろう?」
というように、キャラクターではなく、物語自体に惹きつけられている状態なのでしょう。

ツイステは「話が面白い」というベースがある上に
「ストーリーが良い」という要素もプラスされているからこそ、これだけの人を惹きつけられたと考えています。

流行の理由②ディズニーヴィランズというテーマ

あえて主語を大きくして言うならば、
「オタクはみんな闇が大好き!」なのです。笑

心の闇はキャラクターを輝かせます。
たびたび主人公よりも敵役の方が人気が出てしまうのは、これが理由なのでしょう。
特に女性向けコンテンツでは、たとえキラキラとしたアイドルものですら、挫折や すれ違い、闇落ちが日常茶飯事です。

また、悪役だからこそ、悪に至った理由に思いを馳せるための「考察」がはかどります。
「ただ単純に良い人」なキャラクターに対しては、考察を深めることはあまりできなさそうですよね。
性格的な欠陥や、不遇な環境にこそ、考察の要素は揃っていると言えるでしょう。

ディズニーヴィランズと言えば、全世界に知られる悪の権化。
それにインスパイアされた様々な伏線やセリフに、オタクたちは考察の取っ掛かりを見つけやすいのです。

流行の理由③原作者の趣味≒オタクの趣味

原案・メインシナリオ・キャラクターデザインを全て手掛けているのが、枢やな先生
大ヒット漫画である黒執事を生み出し、多くの女性オタクたちを沼に突き落としてきました。

黒執事がすごいのは、<悪魔の執事>と<伯爵の12歳少年>という組み合わせで、多くのオタクの心にクリティカルヒットを決めたことです。
そしてこの2人には、先生自身の趣味が大いに反映されていると推察されます。
(他のキャラも大変魅力的なのはもちろんですが)メインの2人だけでそれだけのヒット。

その先生が、ツイステでもおそらく趣味全開のキャラクターとシナリオを練り上げているのです。
生徒だけで22キャラ。
しかも、ディズニーのお墨付きを得て。

それはもう多方面にクリティカルヒットを決めまくることが、容易に想像できます。

流行の理由④主人公の性別

女性オタクには「腐女子」と「夢女子」という種類がいます。

話すと長くなるので詳細は割愛しますが、

腐女子:男性キャラ同士の恋愛に魅力を感じる
夢女子:自分(女性)がキャラと恋愛することに魅力を感じる

という風に理解しておいていただければ、今回は大丈夫です。

腐女子の場合は

・主人公(男性)が別の男性キャラと恋愛する
・主人公(女性)とは関係なしに、男性キャラ同士が恋愛する世界観
が好き

ということになるため、同じストーリーで夢女子と腐女子を同時に満足させるのはなかなか難しく、どちらか向けに寄った作品になりがちです。

しかしツイステのすごいところは、「主人公の性別が明言されていない」ところにあります。
姿が見えないどころか、プレイヤー台詞の選択肢にも、生徒の反応にも、主人公の性別を決定づける要素がないのです。

ナイトレイブンカレッジ自体は男子校なのですが、そこも上手く かわしていきます(詳細はネタバレなので省きます)

これにより、より多くの属性の女性オタクを引き込むことに成功していると言えるでしょう。

流行の理由⑤考察がはかどる、ゆっくり展開

前述の通り、ツイステは考察が非常にはかどるストーリーです。
だからこそ2次創作も多く、それがSNSなどでも盛り上がりを醸成する要因になっています。

ただ、物語自体のポテンシャルだけでは、これだけの盛り上がりは作り出せません。
もう一つの要素として大切なのが、展開のテンポだと考えています。

詳細はゲーム編にも関係してきますが、ツイステは近年のソシャゲの中ではストーリー展開が遅めです。
「数打ちゃ当たる」的な思想でどんどんゲーム内イベントを打ってくるソシャゲが増えている中、ツイステはその流れと逆行していると言えます。

これは、コンテンツとしての自信の表れでもあるのでしょう。

一つ一つのストーリーが非常に濃く、オタクとしては「いつまでも味のするガム」を噛んで次の供給を待つ…という状態になります。
そうやって前回の物語の考察が十分に深まったタイミングで
新しい物語に出会えるからこそ、よりおいしく感じられる部分もあると考えています。

流行の理由⑥量より質のグッズ展開

ツイステのグッズ、おしゃれなものが多いんです。
私は普段あまりキャラグッズを買わない方(声優さんのライブグッズに注ぎ込むタイプ)なのですが、さすがに欲しくなるモノもたくさんあります。

オタク向けではあるものの、TDL,TDSに置いてあっても違和感のないクオリティのグッズばかり。
さすがディズニー!と実感します。

元の絵柄がリッチ(ポップなカラーでない)というのも大きいとは思いますが、素材感なども安っぽくならないようにこだわっている様子が見受けられます。

オタク向けコンテンツだと、最初は様子を見ながらアクリルキーホルダーや缶バッジを大量に出してくることが多いのですが
そういったある種の妥協がなく、カード1枚でも「これは欲しい!」と直感的に思える、質の良いグッズをしっかり展開しています。

アパレルブランドとのコラボも早々に決まり、高単価のグッズも早速展開しています。

ディズニー関連作品であるというブランド力を損なうことなく、オタクも同時に満足させるという質重視の展開は、これからも じわじわ効いてくると予想しています。

流行の理由⑦丁寧な施策

⑤の物語の展開、⑥のグッズの展開とも関連するのですが
ツイステは全体的に施策が少なくゆっくり目です。

例えば公式ツイッターで比べてみると、

ヒプマイ:113ツイート/月
ツイステ:28ツイート/月

といったように、差は歴然としています。
もちろん展開の年数や範囲も違うので、単純な比較はできません。

ただ、「平均1日1ツイートもしていない」ということを考えると
今どきのコンテンツにしては、かなり情報を厳選していると言えます。

ただ単純に遅いというわけではなく、スローモーションで剛速球を投げているような感触を受けます。

ビジネスとして注目する必要性

ツイステはかなり特殊な事例ではありますが、
上記の理由から、コンテンツビジネスや、その他のビジネスにとってヒントになる要素もたくさんあると考えています。

今後も随時注目して、まとめていきたいです。
(普通にオタクとしてハマりかけているので、ビジネス視点を失わないように努めます…笑)

次回ゲーム編では、女性オタクの特性に着目しつつ
ツイステ成功の理由、ひいては今後のソシャゲ開発のヒントになる要素について、探っていこうと思います。

お楽しみに!

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