月亭希遊

吉本興業・上方落語協会の落語家。 ショートショート、映画、アニメ、絵本。 三題噺から生…

月亭希遊

吉本興業・上方落語協会の落語家。 ショートショート、映画、アニメ、絵本。 三題噺から生まれた噺をショートショート風に書いて発表してます。 よろしくお願い致します! 三題噺↓ https://youtube.com/channel/UC4Xy86RpyPbfBsJAZmb3zLQ

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お気軽にお問合せくださいませ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【4月】 27(土)10:00『上方厳選落語会~極~』繁昌亭 29(月)14:00『此花千鳥亭 月曜お昼寄席※希遊トリ出番』此花千鳥亭 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 〈詳細〉 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【5月】 5(日)14:00『ゴールデンウィーク落語会』古々粋亭 11(土)14:00『遊真・希遊兄弟会』古々粋亭 12(日)14:00『上方落語会』横浜にぎわい座 14

    • ショートショート。のようなもの#52『心と言葉と嘘と恋』

       私は中学のときに、産まれてから嘘しか話したことがないという不器用な男に告白をされました。 「あなたのことを心から愛してます。だから僕と付き合ってください」  もう一度言うけど、彼は、産まれてから嘘しか話したことのない人なのです。  でも、発した言葉は嘘かもしれないけれど、心の中は実際どうなのだろう…?  ひょっとして言葉とは裏腹に、心の中では私のことを…?いや、そんなはずない、やっぱり嘘…なのかな…?…何よ!バカにして…!  そう思わせてくれた彼は、今の私の旦那です。  

      • ショートショート。のようなもの#51『きょうと、あした。』

         ついに、東の空から朝日が顔を覗かせた。  この部屋にも、カーテンの隙間から日の光が差し込んで来た。  その二人は、夜通し口論をしていた。  午前0時を過ぎた辺りから始まり、3時頃になると最早水掛け論となっていた。 「ぼくは、まだまだできます!きょうもぼくにやらせてください!」 「ダメだ。帰りなさい。君の勤めは、もう終わってるんだよ」 「だって、きょうのために4年間ものあいだ準備してきたんですよ!きょうという1日をいい日にするために!」 「これは決まりなんだ。君がどう足掻い

        • ショートショート。のようなもの#50『尿管宝石』

          「え?先生、今なんとおっしゃいました?尿管結石ではなく?…尿管宝石?…宝石!?」 「そうです。先程の精密検査ではっきりしました。あなたの尿道から排出された石の塊は尿管宝石、つまりダイヤモンドです」 「…ダ、ダイヤモンド?いや、そんなことが?」 「もちろんあり得ます。同じ石なんですから様々な種類があって当然です」 「いや、しかし…」 「初めてですから疑うのも無理はありませんが、事実として今、目の前に存在するのですから間違いありません」  私は、夢でも見てるのかと思い呆然としてい

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          ショートショート。のようなもの#49『子ンタクトレンズ』

           ぼくが、体を屈めて道端で〝子ンタクトレンズ〟を探してると頭の上からおじさんに声をかけられた。 「どうしたんだい?ぼく?何か探しているのかい?」 「…そう、〝子ンタクトレンズ〟を探しているんだ。お散歩をしていたら逃げ出しちゃったから」 「え?逃げ出した?コンタクトレンズが?…落としたってこと?」 「落としたんじゃなくて逃げ出したんだよ。カラダを縦にしてタイヤみたいにコロコロと逃げていったんだよ」 「おもしろいねぇ。まるで生きてるみたいな言い草だ」 「生きてるよ、ぼくの〝子ンタ

          ショートショート。のようなもの#49『子ンタクトレンズ』

          ショートショート。のようなもの#48『横殴りの雨』

           その〝雨坊や〟は、横殴りの雨になりたかったけれど上手く横殴りの雨にはなれなかった。  やっぱり雨として産まれたからには、人間をびちょびちょにして大勝を治められるくらいの横殴りの雨になりたかった。  人間が思春期に、ヤンキーに憧れてほんの少しの悪さをするように、〝雨坊や〟も悪ぶってみたかった。  でも、それは物理的になかなか難しい話なのだ。なぜなら、地球には重力があるからだ。  どうしても空から降ってきた雨は、重力に逆らうことはできずに上から下へ、つまり縦に降るのがごく自然な

          ショートショート。のようなもの#48『横殴りの雨』

          ショートショート。のようなもの#47『銭湯の親子』

           私は、一週間で溜まりに溜まった仕事の疲れを癒そうと思い、帰り道にある小さな銭湯へ立ち寄った。  ほぼ毎週、私はこの銭湯を訪れる。  これは、金曜日の夜の些細な自分へのご褒美なのである。  がしかし、きょうは運が悪かった。  今、まさに私が浸かっている湯船の中で二人の親子が追いかけあってる。  他にも、沢山のお客がいると言うのに荒波を立てて水しぶきを飛ばしながら、泳いだり跳び跳ねたり縦横無尽に父親が息子を追いかけてやがる。  子供だけがはしゃいで泳いでいる光景なら度々目にする

          ショートショート。のようなもの#47『銭湯の親子』

          ショートショート。のようなもの#46『リビングにいる…』

           俺は、我が家へ帰るなりリビングの真ん中でぐったりと倒れている奴を見て、ポツリとつぶやいた。 『え?なんで?なんでこんなところにこんなやつがいるんだよ』  なんでこんなやつが我が家のリビングで寝てるんだ?  俺は妻と二人で結婚生活を送っているんだぞ、俺たち以外のやつがそんな簡単に入れるわけがないんだ。  もっとも、ゴキブリやネズミといった害虫害獣が出るならまだしも、なんでこんなでっけぇ熊がこんなところにいるんだよ。  それもめちゃめちゃ鼾をかいて寝てやがる。  恐らくだが、

          ショートショート。のようなもの#46『リビングにいる…』

          ショートショート。のようなもの#45『空曜日(からようび)』

           きょうは、何をしてもいい。  だって、空曜日(からようび)だから。  月曜日のように週初めの仕事の憂鬱さに襲われることもなければ、土曜日や日曜日のように貴重な休みを有意義に過ごすために必死でスケジュールを埋める必要もないのだ。  むろん、1日中何もしてはいけないという訳でもない。  何をしてもいい、〝自由〟なのだ。  空曜日(からようび)というのは、曜日が空(から)なのだ。  つまり曜日の概念がない1日、空(から)ということだ。  いつも人間は、どこか日常を過ごす中で曜

          ショートショート。のようなもの#45『空曜日(からようび)』

          ショートショート。のようなもの#44『運命の赤いちゃんちゃんこ』

           その赤いちゃんちゃんこは、運命の赤い糸で作られていた。  運命の赤い糸とは、もちろん特定の男女の小指から小指の間を繋いでいるとされている、あの赤い糸だ。  その赤い糸が、織物職人の老婆の手により反物として織り上げられ、それを仕立てて出来上がるのが、〝運命の赤いちゃんちゃんこ〟なのだ。  運命の赤い糸の調達は、老婆自らが行う。  お店には、他の従業員もいるが、赤い糸を目視できるのが老婆しかいないのだ。  老婆は、街中で仲睦まじいカップルを見つけると背後からそーっと近づき、男

          ショートショート。のようなもの#44『運命の赤いちゃんちゃんこ』

          ショートショート。のようなもの#43『将来の夢』

          「港のテトラポッドの上に1人の男の人が立っていました──」 *********** 「ねぇ、おじさん、そこで何してるの?」 「ん?見てわからないかい?踊ってんだよ。坊やは、危ないからお家へ帰ってな!そこの家の子だろ?さぁ早く!」  あまりの剣幕に気圧されてぼくは、おじさんの言う通りに目の前にある我が家へと入った。  そして、椅子を窓辺まで持って行って、その上に乗って窓からおじさんを眺めてた。  おじさんは、長い白髪で顔中を真っ白なヒゲが覆っている。上半身が裸で腰には沢山

          ショートショート。のようなもの#43『将来の夢』

          ショートショート。のようなもの#42『ゑ』

          医師「どうされましたか?」 ゑ「ちょっと先生に、相談がありまして…」 医師「ご相談?整形外科医の私ができることであれば、何なりと」 ゑ「単刀直入に言いますが、私の〝下のやつ〟切ってほしいなぁと思いまして…」 医師「はい?〝下のやつ〟?」 ゑ「はい!私の下に〝m〟みたいなやつが引っ付いてるじゃないですかー?」 医師「〝m〟みたいなやつ?…あー!これですか!?確かに引っ付いてますね~〝る〟の下に〝m〟みたいなやつ。それで、何故これを切りたいと思われてるのですか?」

          ショートショート。のようなもの#42『ゑ』

          ショートショート。のようなもの#41『ベロチュー発電』

           なぜか僕の部屋の一角には、見知らぬおじさんが立っていた。  今日、このマンションへ越して来たところなのに、なぜか僕の部屋のクローゼットの前には、ブリーフ一丁の見知らぬおじさんが仁王立ちをしていた…。  僕は、この春から都内の大学に通うために田舎から上京して、都心から少し離れたところの不動産屋さんを何軒か廻った末にここに決めたんだ。  決め手は、何と言ってもその安さだった。というよりも、正確にはタダなのだ。 「悪いけどね…家賃や光熱費は取らないから、ここに住んでくれないかい

          ショートショート。のようなもの#41『ベロチュー発電』

          ショートショート。のようなもの#40『日常のような非日常』

           私は、気がつくとファミリーレストランらしき建物内のドリンクバーっぽいシステムで数時間も粘っていたようだ。  慣れない環境下での生活に疲れていたと見えて、浅い眠りについていたのか?目を覚ました私は、テーブルみたいな台に伏せていた。  目の前には、食べ終わった食器っぽい陶器が並んでいた。  冷めたコーヒーさながらの飲み物もカップであろう器の中に少量残されている。  店内を見渡すと、サラリーマンらしきヒトや、女子高生らしきヒトなどが各々のテーブルっぽい台を挟んで談笑ごときことした

          ショートショート。のようなもの#40『日常のような非日常』

          ショートショート。のようなもの#39『走馬灯製作会社』

          「ん?こんな風景見たことないぞ…それに、こんな体験もしたことがない」  私は今、敬老会の旅行の集合場所へ向かう道中で不慮の事故に合い、今まさに生死の境を彷徨っている。  その証拠に、今、私は耐えられぬ程の全身の痛みに苦しみながらも、脳内スクリーンに映し出された走馬灯らしきものを観ている。  しかし、私が引っ掛かっているのは、その走馬灯の映像はどれも見たことがないものばかりだということだ。 「これは一体…?」  そんなことを考えていると、瀕死状態でも、まだ微かに聴力が残る耳に遠

          ショートショート。のようなもの#39『走馬灯製作会社』

          ショートショート。のようなもの#38『客観視』

          「もっと自分のことを〝客観視〟しろよ!」 「〝客観視〟だよ、客観!わかるか!?もう一人の自分が自分のことを俯瞰で見てる感じのこと!わかるか?〝主観〟だけで考えてるから、お前はダメなんだよ!」  毎日、耳にタコができるまで上司に言われ続けてきたセリフだ。  これだけ、口を酸っぱくして言われたら、いくら鈍感な私でも〝客観視〟ということを意識せざるを得ない。  潜在意識の中で、いつもどこかで〝客観視〟を意識していたのだろう。  ついに、私は、今日、スーッと自分から抜け出してしまっ

          ショートショート。のようなもの#38『客観視』