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「最近登ってます?」と、挨拶代わりに聞くのはできれば止めてほしい

登山を始めて間もない10数年前、友人知人、会社の同僚などに「休日は山に登っている」と言うと驚かれることが多かった。
平日の私は登山などしそうにない風体なので。まあ、女性で「いかにも登山をしそうな風体」で会社勤めしている人ってそんなに多くはないとは思うのだけど……。
登山を始めた当初は今より髪も長く、いつもワンピースにヒール靴で通勤していた。ワンピースはコーディネートを考えなくてよくて楽だったからたくさん持っていただけなのだけど、登山をしそうな人にはまあ、見えなかっただろう。

そういえば当時、職場の人から
「ももさんてハガレンのラストに似ているよね」
と言われたことがあった。
鋼の錬金術師という漫画を私は読んだことがなかったが、ググってみて「言わんとしていることはわかるわ」と思ったものだ。
ハガレンのラストはたぶん、登山をしない。
太陽の下よりも地下室が似合うタイプ。海とか絶対行かないでしょ?などと学生時代から言われていたし、そんな人が登山を始めたと聞いたらまあ、似合わないし意外に思うよね。

しかし10数年の時が経ち、今ではリアルな友人知人の多くが私の登山趣味を知るところとなった。
そのため、ちょっと久々に会話を交わす相手からは、まず挨拶代わりに
「最近どう?山行ってる?登ってる?」
と聞かれることが多い。

思えばはるか昔は「最近どう?」の後に「彼氏できた?」とか「例の彼とはどう?うまくいってる?」とか、恋愛絡みの話題になることが多かった気がする。登山を始める前だから20代の頃か。
今となってはこちらも立派な中年だし、開口一番恋バナを始めるというのもなんというか気持ち悪いよね。この十数年で世の中もうるさくなって、関係性によっては「ハラスメント」扱いされる可能性もあるし。
もしかしたら、結婚して子供がいれば「お子さん何歳になった?」とかから会話が広がっていくのかもしれないが、そういうのがない私と世間話を始めるときの会話のとっかかりとして、登山は都合がいいのだろう。

まあ、趣味の話なら登山でなくても何でもいいのかもしれないが「アイドルのコンサートに行く」とか「ワイン教室」とか「陶芸」と言ったほかの趣味に比べると登山は、相手からしても会話を広げやすい趣味なのではないか。だから挨拶代わりにみな登山の話を振ってくるのだろう。

「1番好きな山はどこ?」
「最近はどこの山に登った?」
「冬はさすがに登らないよね……?え?登ってるの?どこに?」
というような定番の質問パターンがいくつかあり「最近登ってます?」と聞かれて「ええ、もちろん!」と答えた後に続いていくことが多い。

この定番質問の中に
「富士山にはもう登った?」
というものがある。
「日本一標高の高い山」として抜群の知名度を誇る富士山だが「登る山」としてそこまで魅力的かと言われると実はそうでもなかったりする。
もちろん富士山に登るのが大好きな人もいるだろうけど「あれは登る山じゃなく、別の山に登って見るのがいい山」という登山者は多い。

金峰山山頂から見た富士山

富士山はまず無茶苦茶混んでいるので、それだけで正直ちょっとダルい。標高が高く体力は必要だが、技術的に難しい山ではないので登ろうと思えば始めて2年目ぐらいでも無理なく登れたと思う。だけどいつも混んでいるので計画を立てる気になれず他の山ばかり登っていた。

しかし、この「最近登ってます?」に続く世間話の一環で
「富士山にはもう登った?」
と聞かれる頻度が異様に高く、しかも
「まだ登ってないんですよね」
と答えると
「なんだあ、たくさん登ってると思ったけどまだまだなんですね・笑」
みたいな返しをされることがたまにあり、それが嫌で登山5年目にしてようやく富士登山を実行した。

タイミングやルートをかなり入念に計画したので、ルート上でも山頂でも山小屋でも混雑とは無縁。山頂にはしばらく私しかいなくて記念写真を撮ってもらう相手もいない……という理想的なシチュエーションで楽しむことができた。
あれほど空いている富士山ならまた登ってもいいかなと思えるけど、今は当時よりさらに外国人観光客が増えているだろうし、狙ったタイミングで晴れるとも限らないから難しいだろうな……。

さて、前置きが長くなったがこの文章の本題は
「最近登ってる?」
と挨拶代わりに聞かれた後に続く会話で、これを言われるとすごくもやもやしてしまうからできれば止めてほしいと思っているんだよ!言えないけどね!という愚痴である。
「富士山にはもう登った?」については登ったことによって「YES!!!」と答えられるようになったが、最近は新たにもやもやする事案が発生してしまっているのだ。
富士山のときもそうだったが、相手は何の気なしに言っていることなのだろうし、過剰反応するのも大人げない。だから適当に返して笑っているけれど正直言われる度にちょっと傷ついたような気分になっているんだよなー、というかシンプルに嫌。
という愚痴をここからは書いていく。

登山をある程度の年数続けている人には多少は共感してもらえるのではないかと思うが、そうでない人には
「心が狭いのではないか」
と思われてしまうかもしれない。
お目こぼしいただければありがたいが、メンバーシップ限定記事にはあまり表だって言えない本音を書こうと思っているので、ふさわしいネタだろう。

さて「最近登ってます?」「ええもちろん」と答えた後、もやもやしてしまうのはどんな会話が続いたときか。

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