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映画『ちひろさん』いま目の前にいるあなたを見る

NETFLIXで配信されている『ちひろさん』は決してきらびやかな作品では無いけれど心を掴まれる場面がある。今泉力哉監督の作品を観るたびに私も少しだけ優しくなれそうな気がする。

原作:安田弘之「ちひろさん」
フードスタイリスト:飯島奈美
劇伴音楽:くるり岸田繁
主題歌:くるり「愛の太陽」

ちひろ(有村架純)は、風俗嬢の仕事を辞めて、今は海辺の小さな街にあるお弁当屋さんで働いている。軽やかに心のままに生きるちひろと、彼女と出会う人々の孤独と癒しの小さな物語。

公式サイト参照

原作を未読のまま鑑賞した。どこかつかみどころの無いちひろ。映画はちひろをめぐる群像劇と言っていいのかもしれない。小学生のマコトとその母親のエピソードが好きだった。

☆ 以下ネタバレします

マコトの母親に花束を投げつけられて、ちひろが彼女に返した言葉は切ないけど正しい。

「どんだけ自分に自信ないんだよ」

マコトの母親は一人で子供を育てている。忙しく働いていると子供と過ごす時間も短くなって。せっかく一緒に過ごせる時間もクタクタに疲れていて怒ってばかり。子供に愛されている自信もなくなる。マコトがこずかいを貯めて買ってくれた誕生日の花束も「誰かの入れ知恵に違いない」と思っちゃう。子供が小学生の時「こんなじゃ好かれてないだろう」と私自身もどこかで思っていた。怖くて「お母さんのこと好き?」って聞けなかった。

マコトは母親の作る焼きそばが大好き。母親のことが大好きだから。大丈夫、ちゃんと愛されてる。焼きそばを食べるシーンを思い出すと涙が出る。


履歴書や生まれ育った環境ではなく、相手そのものを良く知り良く愛す

今目の前にいる
今のあなたがとても好き

これほど人を肯定して尊重することはないだろう。人は人の背景を知って納得したがるものだから。それは知らず知らずのうちに人を色分けしてゆく。

素敵な作品だった。

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