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築地市場跡地の再開発にみる、ウォーターフロントの在り方について

「魅力的な都市は、ウォーターフロント(特に、港湾や海岸部分)の使い方が上手い」というのが、過去32年間に様々な場所を訪れた実体験から得られた、一つの仮説だ。具体例として、シドニー・ニューヨーク・バルセロナ・シンガポール・香港・上海・リオなどが挙げられる。いずれも、観光都市として成功を収めている都市たちである。

これら「ウォーターフロントの使い方が上手い」都市の共通点は、「水辺側を『表』としているかどうか」にあると考える。わかりやすく言い換えると、「水辺側から街を見たときに、顔がみえるか」ということだ。水辺側を中心として、人々が集えるお店や公園などが、街のメイン動線のひとつとして考えられているか。その都市の水辺がポストカードになっているか、と考えるとより分かりやすいかもしれない。

その意味で東京は、水辺を「裏」として、背を向けてビルが建っているケースが多いように思われる。鉄道網の発達と共に、内陸部から駅を起点として都市が広がったというのも一つの理由であるかもしれない。あるいは、海運が栄えたことにより物資の上げ下げを行う「作業場」としての位置付けが、水辺を「裏方」としてしまったのかもしれない。特に東京湾沿いにおいては、度重なる埋立てにより、内陸部から発達した都市が同心円状に段階的に広がっていった結果というのも大きいだろう。

いずれにせよ、これまで水辺を魅力的に使えてこなかった「東京」という都市において、また訪日観光客数を更に延ばしていきたいという戦略も鑑みた場合、この築地市場跡地の再開発については、該当エリアにビルをぶっ建ててなんとなく公園も整備しました、ではなく、東京全体の魅力を引き上げるためのそれこそ東京の顔として、水辺にあることをうまく活用しながら、築地の跡地としての性格も引き継いだ「粋」な再開発を期待したい。

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