コタツ

コタツ入ってるよ。
そう言われた。
この部屋に10年間住んでいた。
それは、10年も前のことだった。
名前を書いてほしい
私は一枚の紙を差し出した。
彼は受け取った。
初めて書く書類に戸惑いは隠せないようだった。
名前を書くだけのはずなのに、
あれやこれや、彼は3時間も話をした。
10年と10年の締めくくりなのだから、
3時間くらいは喋らせてあげよう。
もしも彼がとてつもなく理不尽な言葉を発しようと、もしも彼がとてつもなくドラマティックな言葉を発しようと、過ぎた時に戻ることもないし、今を変えることもない。
実際のところは、彼の言葉は理不尽でもドラマティックでもなかった。
私はコタツの横の床に座ったまま、次々に語られる言葉の羅列を聴いた。
私への花向けは
心を温めることのないコタツと
心を温めることのないコトバ。

10年と10年の分の喜怒哀楽。
四文字に収まらない分は私からの花向けの言葉に変えよう。

「ありがとう」

   word by Tsukushi🍀

優しい世界に近づけるように これからもコトバをお届けしていきます!