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いつか終点で

私たちは電車で旅をしているみたい。
あなたと同じ電車に乗っていたのは
かなり前のこと。
同じ学校という電車。肩書は学生。
卒業して私とあなたは違う電車に乗り換えた。
それぞれの見たい景色が現れると期待して次の電車に乗り込んだ。
しかし、望む景色はなかなか見えてこなかった。
次々と乗る電車を変えてみた。
電車が陽の光の届かない暗いトンネルに入ってしまい、すぐには降りることもできず嘆くこともあった。
自分たちの見たい景色が見えない電車にただ揺られるということも覚えて、時だけが過ぎていた。
見たい景色ではないことは知っている。 けども、そもそも自分がどんな景色が見たいのか、わからなかったのかもしれない。
私もあなたも。

あるとき、あなたの旅はもう終点に近いらしいということがわかった。
それは早すぎる到着だった。
それでも、私の知る限り、あなたは涙を見せることなく旅の終わりを受け入れた。
そして最期に、のんびりした畑と小川の見える電車に乗り換えた。
印象派の絵画のように美しい車窓だった。

私はあれからも見たい景色を探して、時には乗った電車を慌てて飛び降りたり、駆け込んだりしていた。
七転八倒したおかげて、最近ようやく、私の見たい景色を思い描けるようになった気がしてる。
ご存知のとおり、鈍臭くて要領も悪いから随分時間がかかってしまったけど、海岸線を走る電車に乗り込んだよ。
果てしなく続く海に飛魚の大群のような
キラキラが跳ねているところが見えるはず。

これまで電車は引き返してくれなかった。どんなにもどりたいと思ったとしても。ただの一度も。
一度だけでいいから、同じ電車の景色を観て笑い合いと思っているんだ。
隣同士に座って。映画を観るように。
だから、
いつか終点で逢いましょう。

   word by Tsukushi🍀

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