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雪国初心者が初めて体験した本気の冬

(こちらの記事は当初2021/03/14に公開されたものです)

雪国暮らし、大丈夫?

小谷村に移住してから、必ずみんなに聞かれます笑。

雪が降るのは年に数回、スタッドレスタイヤなんてほぼ不要な関東平野で生まれ育った私。初めての山暮らし、初めての雪国暮らしです。

思えば中学生の頃にすでにスキーは挫折したし、大学時代は部活のウィンドサーフィンに明け暮れていたし、旅行に行くのも海のある場所ばかりで、完全に山より海派の人生でした。

しかも極度の寒がり&冷え性。それを神様が知ってか知らずか、この20年くらいの間に生活することになった国々はどこも海沿いの温暖な地域ばかり。暑さには強いけれど、寒さには極端に弱い体質がすっかりできあがっていました。

秋冬も過ごしやすいシドニー。シドニーの夏が終わる4月に日本に帰ったので、夏が終わってまた夏が始まるという丸1年夏を過ごしてからの雪国の冬でした。

そんな中での小谷村への移住。移住した当時は気候のいい春で、その後は全国の作り手さんに会うために村を離れていることも多かったですし、小谷にいても夏はエアコン要らずで快適生活。なんだ山暮らしいいじゃん、いいじゃん。エアコンで凍えることもないし。なんてことを考えながら、全国行脚がようやくひと段落して腰を落ち着けて生活を始めた頃、ちょうど雪が降り始めました。

あぁ、本当にここは豪雪地帯だったんだ!

一晩で景色が変わるほど雪が降り積もるのを目の当たりにして、「一晩で車が埋もれたりするんだよ」と何年も言い続けていた夫に対し、若干疑いの目を向けていた自分が間違いだったと気づくことになったのでした。

そんなこんなで私の初めての雪国暮らしがスタートしました。雪国超初心者の私がこの冬に学んだ雪国あるあるをご紹介します。雪国をよく知っている方には当たり前と笑われそうですけどね笑。

1. シャワーから氷柱!

最高気温が氷点下なんてザラな小谷村。ある日、お風呂場のドアを開けてびっくりしました。な、なんと、シャワーから氷柱が伸びてる!お風呂場とはいえ、家の中で氷柱ができるなんて・・・想像を超えてます。思い返せば、昼間にお風呂掃除をして、換気のために少し窓を開けていたのを夜まで忘れていました。シャワーのホース部分の水までしっかり凍りついていて、蛇口をひねってもお湯が出ないという事態になりました。みなさん、お風呂場の窓の開けっ放しには要注意ですよ!

ちなみに、普段から寒い日には窓枠は凍っています。窓が凍って開かないことも日常茶飯事です。

衝撃でした・・・。

2. 車はすぐには乗れません

一晩あれば普通にこれくらいは積もります。

そうか〜!まずは雪を降ろさないと、車に乗れないのか!その時間を考えていなかった・・・。夕方に雪を降ろしても、一晩経てばまた車が雪で埋もれてしまうほど、あっという間に雪が積もります。出かけるには、家から道に出るまでの間を除雪して(注:除雪機は一家に一台必須です)、車に積もった雪を降ろさなくてはいけなかったんですねぇ。出かける時はその時間も見込んで、余裕を持った時間配分を。

ちなみに、除雪作業の際、黄色い手袋は必須アイテムです。雪国の人はみんな愛用しているので、雪本番になる前に購入しないと、ホームセンターでは品切れになります。気になる方は、「黄色い手袋 雪国」で検索してみてくださいね。

3. 滑ればいいんだよ!

雪が積もってから、晴れて雪が少し溶け、そのまま夜に冷え込むと、翌日は雪面がつるっつるに凍ります。うっかりスニーカーなんかを履いていると、つるつる滑って制御不能になります。家から出るスロープがスケートリンクのように凍って、危うく手すりにしがみつきながら、「これ、どうやって歩いたらいいのー?!」と思わず叫んだら、前を歩いていた夫、義弟、義妹の3人(いずれも雪国育ち)が声を揃えて返した言葉。

「いや、普通に靴で滑って降りればいいんだよ」

見れば、まだ3歳に満たない甥っ子ですら、難なく滑っているではありませんか。雪国の人は雪の上で歩くコツを知っているのかと思っていましたが、もはや歩くという感覚なんてなく、滑ってるんですね・・・。こうやって雪国では日常生活から滑る感覚を覚えていくんだと実感した出来事でした。

2歳からこの環境ですから、それは勝てませんね。

4. UGG?いえいえ、長靴です

小谷村に移住する前は、シドニーに住んでいたので、帰国したらあったかいブーツは必須だろうと、日本よりもかなり安く手に入るUGGを、さらにセールでお得にゲットして、準備万端とばかりに帰ってきました。でもね、雪が積もり始めたら、UGGでは到底太刀打ちできないと悟りました。普通に膝下くらいまでズボズボと雪に埋もれながら歩くことになるので、UGGでは雪が付いてブーツがびしょびしょに。雪が降り始めたら、とにかくスノーブーツか長靴が安心です。雪の侵入を防ぐ、絞れる紐のついているタイプがおすすめです。

5. カメムシにはガムテープ!

何を隠そう、私は小谷村で初めてカメムシを知りました。夜中に部屋の中を飛び回るカメムシのお陰で一睡もできなかったことさえあります。

攻撃されると強烈な匂いを発するカメムシ。どうやって駆除するか、みなさんご存知ですか?

使う道具はガムテープのみ。カメムシの背中にそっとガムテープを貼り付け、そのままガムテープを折り畳んで、ふんわり閉じるだけ。重要なポイントは、ガムテープを閉じる際にカメムシには決して圧を掛けないことです

この方法を知って以来、カメムシが出たらガムテープを持って夫を呼びに行っています。そろそろ自分でなんとかせねばと思いつつ、大の虫嫌いの私にとって、なかなか越えられない高い高いハードルなのです・・・。ただ、何と言っても雪国の救いはゴキブリがいないことです!

そして何よりのご褒美はこの美しい景色です。

まだまだご紹介したいエピソードはたくさんありましたが、雪国初年度もそろそろ無事に終わりを迎えそうです。紡ぎ舎の周りには、まだ雪は残っているものの、蕗の薹(小谷村では「ちゃんめろ」と言います)が芽吹き始め、鳥の楽しげなさえずりに春の訪れを感じるようになりました。

冬は本当に深い雪に閉ざされる雪国。山葡萄の蔓などを使った籠細工や津軽地方のこぎん刺しなど、外に出られないからこそ家の中でできる手仕事のものづくりが雪国で発展した理由が身をもって分かった気がします。何もできなくなる冬を、身を寄せ合いながら乗り越えてきた先人の貴重な伝統だったのですね。ここ小谷村にも藁細工の伝統が僅かながら残っています。そんな地域の伝統も紹介してけたらいいなと思っています。

もうすぐ本格的な春がやってきたら、山を淡い桃色に彩る満開の山桜、一気に葉を広げ若草色に山を染める木々や採りたての香り豊かな山菜。小谷村の自然は、また新しい顔を見せてくれるはず。

この地で迎える2回目の春、今度はどんな楽しみや驚きがやってくるのでしょうか。


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