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お小夜と幸せ探しの伊豆旅行 #3

前回のお話はこちら→お小夜と幸せ探しの伊豆旅行 #2

3日目

この日巡ったのは、水の都 三島。
富士山の雪解け水がこの辺りで表出し、市内のいたるところに流れています。
そんなきれいな水と箱根西麓の豊かな土壌で育った野菜は当たり前のように美味しくて、朝食に供されたサラダを食べて思わず感動しました。


この日は所用のため18時には品川に戻らなければならないので、カツカツのスケジュールです。
のんびりする間もなく宿を飛び出し、バスに揺られて最初の目的地へと向かいます。
着いたのは柿田川公園。柿田川を保護・保全する目的で作られた公園です。
この柿田川、全長約1.2kmと日本一短く、流水のほぼ全量が湧水から成るという面白い川です。
川自体やそれを取り巻く自然の豊かさにより、天然記念物に指定されているほか「日本の三大清流」や「日本名水百選」などにも選ばれているのだとか。

中でも最大の見所が、SNSでも話題になった神秘のブルーホール。
展望台から覗き込むと、ぽっかりと空いた丸い穴から神秘的な青が覗き返します。
かつての古井戸からは今なおこんこんと水が湧き出ており、太陽の光の加減で季節や時間帯によって変わる色合いや、水面の反射と水底の砂の動きによって描かれる複雑な模様は、見飽きることがありません。

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広い園内には展望台のほか縁結びの神社などがあるため、ぐるりと歩いてまわりました。
美味いから食ってみろ、と笑いながら呼び止めるのは、公園管理人らしき作業着のナイスミドル。
昨晩のおでん屋のお父さんといい、静岡ダンディにはどうにも気さくな方が多いらしい。
この川で育ったであろうクレソンを手渡されたのでありがたく頂戴し、園内の散策を続けます。

冬の朝特有の低い日差しがあたりを柔らかくぼかし、風がせせらぎや葉擦れの音を耳に届けます。
すがすがしい空気を深く吸い込むと、ふわり漂うおいしそうな匂いを鼻が捉えました。
どうやら園内の食事処で、柿田川の水を使った豆腐料理を提供しているらしく、その匂いのようです。
さきほど満たした腹がぐうと鳴りましたが、バスの時間が迫っていたため泣く泣く諦めました。


バスで三島に戻り、佐野美術館へ。展示「はじまりのはなし」を鑑賞してきました。
見事な庭園の脇に佇む小さな美術館は、刀剣ファンでいっぱいです。
お目当てはもちろん松井江と蜻蛉切。
松井江は細身できめ細やかな感じがまさしくキャラクター造形のようです。
蜻蛉切はその大笹穂姿の曲線美はもちろん、刀身彫刻の見事さに圧倒されました。
こうしてじっくりと刀を眺めていると、月並みな表現ですが、刀が語りかけてくるようです。
刀身の造形や彫られているもの、ついた傷から、時代の趨勢や辿った来歴、作り手や使い手の想いが浮かび上がってきます。
研ぎ澄まされた機能美や所有者を彩る装飾美、時には権威の象徴や信仰の対象になったその姿を見て、刀は単なる人を殺めるための道具ではないのだと実感させられました。


ランチは三島広小路にあるブラッスリームギさんで。こぢんまりとした家庭的で温かなお店です。
フォロワーさんからのアドバイス通り、事前予約をして伺いました。
今回頂いたのは伊豆鹿肉の赤ワイン煮込みのコース。
赤身の肉は絶妙な火加減で身は柔らかく、臭みはなく芳醇なワインの香りが鼻を抜けます。
付け合わせも申し分なく、サクサクと食感が楽しい駿河湾のしらすのキッシュに至るまで、つくりの丁寧さを感じました。


そして満を持して、今回の旅の最終目的地、三嶋大社へ。
散策がてら、少し遠回りして源兵衛川の遊歩道をたどることにしました。
川の中にデッキや飛び石が設置されているこちらの遊歩道は、せせらぎをより近くに感じられます。
澄んだ水が色とりどりの落ち葉を押し流し、水草をなびかせる様は涼しげで、夏の暑い日には流れに足を浸してみたくなることでしょう。

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伊豆随一のパワースポットとも称される三嶋大社は、伊豆国一の宮として源頼朝が源氏再興を祈願したことでも有名です。
それにあやかり、ご利益を頂けるよう参拝しました。
本殿は気圧されるほどに大きく、風格ある佇まいです。
境内の神鹿園には、なぜか春日大社からやってきた鹿たちが元気に跳ね回っています。
ちなみにこちらの神社の神使は鰻なのだとか。市内に鰻専門店がいくつかあるのですが、信仰的には大丈夫なのでしょうか……

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帰路に就く前に駅前のカフェでひと休み、カフェラテと日替わりのシフォンケーキを頂きました。
三島には個人経営のおしゃれなカフェが多くあるので、どこでお茶をしようか迷ってしまいます。
源兵衛川沿いのテラスが素敵なカフェなど、今回行けなかったお店たちはいつか行けるといいな。


というわけで、今回の開運旅行はこれにておしまいです。
ちなみに、予定の30分前には品川に帰着できる電車に乗ったのですが遅延したため、次の用事は盛大に遅刻をしました。あれ、開運……?

今回の小旅行では、スピリチュアルなことはわかりませんでしたが、温泉の温かさ、ジビエなど山の恵み、野菜など大地の恵み、魚介など海の恵み、山の空気、潮の香り、清らかな湧水……いろんなものから自然の力を感じ、取り入れることができたように思います。
日々の雑事を頭から押しやりのんびり過ごした伊豆でのひとときは、心身ともによい作用をもたらし、ひいては開運につながるのではないでしょうか。
今回訪れられなかった場所や、時期を変え、人を誘って行ってみたい場所がたくさんあるので、また遊びに行きたいです。