棚にあった美しい色ガラスの器からキャンディをだし、手のひらにのせてくれながら華子は訊いた。私は首をふり、ここにいたいと言って、飴の包み紙をむいた。むらさき色。口にいれると強いぶどうの味がする。
「ここにひそんでたわけね」
私はことさらあかるい声で言った。「東京の喧騒を逃れて」

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